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第6回 中尾知司氏 三菱東京UFJ銀行シドニー支店

 

海外のプロジェクトファイナンス業務を希望して銀行を選んだという中尾さんは、米国シカゴでのMBA留学を経て、ニューヨーク、シンガポール、シドニーと海外駐在の仕事を通じて国際業務で働きたいという自分の夢を叶えてきた。今年5月にシドニー駐在3年目を迎える中尾さんに、米国、シンガポールとは一味違うオーストラリアでの駐在生活をお聞きした。

海外志向が強くありました

 

海外赴任はポジティブに捉えています。日本と違うフィールドでの仕事を通じ、自分の視野を広げ、自分の成長に繋げていける点が魅力的です。最近は若い方があまり海外に行きたがらないと聞きますが、異文化体験を通じて見聞を広め、自分を成長させるという意味でもぜひ積極的に海外に出てもらいたいですね。

私が就職する時期はバブル真っ盛りで、ドラマ「半沢直樹」の世代です。当時、日本の銀行はこぞって国際業務を拡大しており、世界の中の邦銀プレゼンスも非常に大きいものがありました。バブル世代(「バブリー君」)ですので(笑)やや浮ついた空気の中で就職活動をしていた面はあったのかも知れませんが、もともと海外と接点のある仕事がしたいと思っていたこともあり、ちょっと自分のキャラとは違うかな?と思いつつも銀行を就職先に選びました。幸いにもドラマ「半沢直樹」のような修羅場や土下座、大和田常務には遭遇せず、銀行に入って都合10年、3カ国で充実した海外勤務をさせて頂いており、感謝しないといけないですね。まあ、僕の平板な銀行員人生ではドラマにならないと思いますが(笑)。

 

再注目されているオーストラリア

 

オーストラリア経済は資源マーケット低迷による環境の変化で、今は右肩上がりの成長が望みにくい状況ですが、近年、資源以外のセクターでの日系企業の関心が高まってきているとの印象を持っています。これまで東南アジアや中国のブームの陰であまり注目されていなかったオーストラリアですが、あらためて国としての安定性や人口の増加、分厚い中間層による高い購買力が再評価され、オーストラリアに進出する日系のお客様の中で小売り・サービス業を始めとした業態の裾野が広がってきていると感じています。

銀行としてもオーストラリア進出を考えている日本のお客様向けにセミナーを開催したり、情報提供やサポートをさせて頂いております。いま、ビジネスでも、観光でも、オーストラリアが再注目されているのではないでしょうか。

 

ローカルスタッフとの相思相愛は難しい?

 

これまで米国、シンガポール、オーストラリアと駐在してきましたが、皆、いわば先進国の英語文化圏なので、赴任先の違いによる仕事のやりづらさというのはあまり感じることはありません。

ただ、ローカルスタッフとはいつも積極的に心を開いて話そうと心掛けていますが、どこまで本当に分かり合えているのか、これはいつも悩みますね。「彼らのためにこんなに一所懸命、体を張って頑張っている(本部とケンカしている)のに〜」と思っても、相手にはそれがうまく伝わっていないことはしょっちゅうです(苦笑)。でも、そこで白けてしまうと彼らとの距離は縮まらないので、「片想いでもいいから自分から好きになろう」という気持ちで接するようにしています。これは10年間海外で駐在してきた私が学んできたことの1つですね。「見返りを求めない無償の愛」ですかね(笑)。

これまで3カ国で駐在してきましたが、あえて各々の国毎のローカルスタッフの特徴を私の印象で申し上げると、シンガポールの人たちは勤勉で、決められたルールにあまり文句を言わずに従順に従う印象がありますね。銀行は内部ルールや手続きが多いのでこの点は助かります(笑)。米国人は自己主張が強いですが、「fairかfairでないか」が物事の判断軸として厳然とあり、シンプルで分かりやすい国民とも言えます。オージーはいつもクオリティ・オブ・ライフが人生のど真ん中にあり、個人的には学ぶところも多いですが、とかく「易きに流れやすい」傾向があるので、いかに、モチベートし、責任を持って仕事をしてもらえるかというのを常に意識しています。明確に権限や責任を与えられると力を発揮する優秀な人たちだと思うので、うまく一緒に高みを目指していきたいですね。

 

家族円満の秘訣はわんこ

 

海外赴任はシドニーが4都市目ですが、いずれも家族同伴です。子どもは上の娘が大学生で、こちらの大学に通っています。息子も地元の高校生です。ドメドメな環境で学生時代を過ごした私から見れば羨ましいところもありますが、子どもは子どもで帰国子女としての悩みや慣れない環境での不安を抱えての生活で苦労をかけたと思っています。奥さん含め、家族が後から振り返って良い海外経験だったと感じてくれるととても嬉しいですね。

でも、私は「ダメダメお父さん」で、シンガポール駐在の時もそうでしたが、週末はもっぱらゴルフばっかりやっており、子どもの友達からは「お前のお父さん、見たことない」とよく言われていたようです(苦笑)。頼りにされていないのか、いい距離感が保たれているということなのか、よく分かりませんが、せめてもの罪滅ぼしでいろんなところに家族旅行に出かけました。インドは特に楽しく、妻も娘も喜んでいましたが、息子は「罰ゲーム」と言っていました。息子にとっての「ご褒美」旅行はモルディブらしいです。

 

それでも家族円満の秘訣は、わんこがいることですかね。日本から連れて来たのですが、家族みんなの「癒し」に大きく貢献してくれています。

出社前に10キロ走っています

日本で子どもと一緒に始めた空手を計10年間続けています(子どもはとっくに辞めてしまいましたが)。日本では土日の午前中をすべて空手に捧げ、シドニー赴任直前までやっていました。一応三段ですが、三段になると支部開設の資格がもらえるんですね。実際、シドニー転勤を流派の宗家にお伝えした際、宗家より「シドニー支部を開設してはどうか」と打診されましたが、結局、ゴルフを選んでしまいました(笑)。同じ流派の道場がないのでシドニーでは空手はしていませんが、昨年一度だけ、銀行のクリスマスパーティーで久しぶりに空手の演舞をしました。クリパ会場の控室ではマイケルジャクソン(そっくりさん)と相部屋になりましたが、私の空手の練習を不思議そうな顔で眺めていたのが印象的でした(笑)。

でも、代わりに走ることについては日本にいた時以上に精力的に取り組んでいます。毎朝、6時半頃から会社の近くを10キロ走ることをルーティーンにしています。1時間ほどオペラハウスからボタニカルガーデン、ミセス・マックォーリーズ・チェアを回り、サーキュラーキーに戻ってウォルシュベイ、バランガルーを回って会社に戻ります。オペラハウスなど素晴らしい景色を眺めながら走れるなんて、シドニーならではの貴重な経験です。たまに気合を入れて朝15〜20キロ走ってから出社することもありますが、20キロ走るとビジネスマンとして機能低下してしまいます(笑)。尚、昨年はシドニーマラソンに出て初めてフルマラソンに挑戦しましたが、後半大失速してしまいました。今年は雪辱を期して7月のゴールドコーストマラソンに参加します。スポーツが好きな人にとってはすごく良い街ですね。

日系コミュニティーの交流が楽しみ

 

仕事柄日系企業とのお付き合いや、同窓会、ゴルフ会などを通じて、多くの方々といろいろな接点があり、非常に楽しいです。これまで駐在したシンガポールやニューヨークは日系コミュニティーがちょっと大きすぎましたが、その点、シドニーの日系コミュニティーは「顔が見える」丁度よい大きさだと思います。

東大の同窓会「シドニー淡青会」の一応会長をしているのですが、「会長の一番重要な仕事はメンバー集めと、いかに会を盛り上げるかだ」と前任会長から教えられ、「それなら僕にもできる!」とアクティブに活動しています。シドニー日系社会の名物スポーツ行事である「東西大学ゴルフ対抗戦」でも、東大は参加者の数だけは「大関」級の存在感を発揮できているのではないでしょうか。数だけですが…。

改めて感じる日本の良さ

 

海外に合計で10年暮らしていますから、妻はそろそろ日本で落ち着いて暮らしたいようです。私はこの先どうなるか分かりませんが、どこの国で働こうとも今後は単身赴任になるのでしょうね。

たまに日本に戻ると、日本人の接客への心配り、人のやさしさに感動を覚えることがあります。あらためて感じる、大切にしたい日本の良さですね。

日本に帰国したら何をするか…? 昔の仲間と旧交を温めたいですね。空手の仲間との飲み会もとても楽しみです。稽古よりも(笑)。

連載『オーストラリア駐在員物語』の過去記事一覧はこちら
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