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第9回 安田哲郎氏 丸紅オーストラリア会社


  • 16年11月30日

安田さんは理工学部出身でありながら商社に就職された変わり種。もともと営業職や海外志向が強かったという。海外駐在はフィリピン、アルゼンチンに続いてオーストラリアが3度目。妻と娘を日本に残しての単身赴任生活や、オーストラリアワインのことなどをお聞きしました。

 

理科系から商社に就職するのはブームでした

 

慶応の理工学部で応用化学を専攻しました。就職活動はメーカーも回りましたが、営業をやりたかったのと、海外に行きたかったのが理由です。メーカーですと、工場勤務もあり得るということでしたので、商社を選びました。大学の理科系から商社に就職という第一次ブームの時でした。まぁ、英語と化学は好きでしたが、日本史や世界史が嫌いだったということです(笑)

入社3年目に海外出張でメキシコに行きました。なぜ新米の私が選ばれたかというと、ちょうどゴールデンウィークの時期で、上司がみな家族旅行などの予定が入っていて、何も予定のない私が行くことになったのです。ラッキーでした。海外出張は、若い時は東南アジアが中心でした。タイ、フィリピン、インドネシアの3カ国は数えきれないくらい行きましたね。

最近、驚いているのですが、私が入社の頃は新入社員の半分ほどは海外に行きたいという意識がありました。最近は本当に少ないですね。勉強はできますし、子どもの頃に親の仕事の関係で海外に住んでいたとか、大学時代に留学していたとか、英語力も高い方が多いのですが、どういうわけか海外に行くのに興味がないと言われると、(なんなんだ!何を考えて商社に来たんだ?)などと思ってしまいますね。

 

 

これまでフィリピン、アルゼンチンに駐在してきました

 

入社してからはお酒の原料である発酵・醸造原料の輸入を担当していましたが、最初の海外駐在は入社して10年目の1996年から2000年までの4年半、フィリピンのマニラに赴任しました。

その後、アルゼンチンのワイナリーに2006年から3年間、出向しました。アルゼンチンといっても首都のブエノスアイレスなどの都会ではなく、チリとの国境に近いメンドーサという町で、標高700メートルから1100メートルのアンデス山脈の麓の町です。アルゼンチンは世界で5、6位のワイン生産国ですが、アルゼンチンワインの9割はこのメンドーサで作られています。

 

 

2015年に3回目の海外駐在としてシドニーに赴任しました。それまでオーストラリアには出張で3、4回しか来たことがありませんでした。いまは日本にオーストラリアの農産品、主にオージービーフを輸出しています。当社はニューサウスウェールズ州北部にレンジャーズバレーという穀物肥育牛の牧場を所有しており、ここで生産される牛肉を日本をはじめ世界20カ国に輸出しています。

 

単身赴任の苦労はさほどでもありません

 

フィリピンに赴任する直前に結婚しました。最初は単身赴任で、その後妻を呼び寄せましたが、出産で一時帰国したりしたこともあり、4年半の駐在期間のうち家族と一緒に住んだのは半分ほどです。

アルゼンチンの場合は、赴任地が山岳地帯で、英語が全く通じないところでした。日本人学校はもちろん、英語の学校も無いところでしたので、単身赴任しました。途中何度か、家族が遊びに来ましたが、日本からは片道35時間もかかるんです。時差も12時間ありますし、往復で3日つぶれます。こんな環境ではそう頻繁には来られませんね。

 

 

シドニーは良いところなので、家族で赴任と思いましたが、ちょうど娘の大学受験の時期なんです。妻はシドニーに住みたいと希望していたようですが、決して私と一緒に住みたいということではなく(笑)、シドニーは時差もなく直ぐ行けるということで、結局、また単身赴任です。

フィリピンなど東南アジアの国ですと、単身赴任でも家族帯同でも、だいたい皆さんメイドを雇います。アルゼンチンの時も、掃除と洗濯はメイドに頼んで週2回ほどきてもらいました。ただ、シドニーは人件費も高いですし、初めて自分で毎週末、掃除、洗濯をしています。それほど苦労ではありませんが。

周りの単身赴任の駐在員ともおつきあいがありますが、皆さん苦労だという話しはされていませんね。慣れないうちは大変かもしれませんが、食事にしてもお店が充実していますので、それほどではないと思いますよ。

 

 

それぞれの国の環境と慣習の違いに驚かされます

 

オーストラリア人は日本人に比べて、時間を守るとか、メールの返信をすぐ出すとか、そういう点ではすこしルーズなところがあると思います。でも、これまでの駐在がフィリピンとアルゼンチンですから、そこに比べたらまったく問題はないです。英語も通じますし、よほど勤勉です。仕事上も生活上もやり易い国ですね。
気になるのは移動の時間です。それまで出張でシドニーとアデレード、ゴールドコーストしか来たことがなかったので、とにかく広い国だということがよく分かっていませんでした。実際に移動してみると、本当に広いですね。
仕事柄、各地の農産地に行くのですが、もちろん町から離れた郊外にあるので、空港から車で2時間、3時間運転して行くのにはもう慣れました。

 

 

仕事上気をつけているのは、イエスとノーの意味をしっかりと確認することです。オージーの英語のイエス、ノーは日本語のはい、いいえと同じ場合がありますので。
商慣習と呼んでいいかどうか分かりませんが、少なくても私が若い頃は、仕事が終わるまで帰りませんでした。でも、アルゼンチンやオーストラリアでは定時に帰るのが基本ですね。特にアルゼンチンでは出向していた会社のゼネラルマネージャーが平気でそうするので苦労しました。オーストラリアではスタッフは残務がある場合は30分や1時間は残って仕事を片付けてくれるので、非常に考え方の優秀なスタッフに恵まれています。

 

 

アルゼンチンでは赤ワイン三昧、シドニーでは…

 

アルゼンチンでは食事と言えば、牛肉と赤ワインしかありませんでした。山奥ですから魚がありませんし、気候が良すぎて、辛口の白ワインの生産に最低限必要なぶどう中の酸もほぼ全て糖分に変化するので、甘口の白ワインばかりであまり得意ではありませんでした。いつも赤ばかり飲んでいました。
オーストラリア赴任が決まったとき、正直、ワインが赤も白も楽しめる、たくさん飲めるなと思いました。

アルゼンチンというあまりにも独特のワイン生産国にいたせいか、オーストラリアのワインは非常に癖のない、飲みやすいワインですね。アルゼンチンワインの赤はとにかく重くて泥臭くて、1本飲むのに疲れるくらいのワインなんです。その点オーストラリアワインは飲みやすくて、1本飲んでも2本目いこうかなとなりますね(笑)

最近はニューワールドと呼ばれる、ワイン生産国としては新興国のワインが出回っています。オーストラリアワインをはじめ、カリフォルニアワインやチリワイン、アルゼンチンワイン、ニュージーランドワインなどです。フランスやスペイン、イタリアのワインに比べて、まず価格が安い。それにワインの種類が分かりやすい。
ワイン新興国ではフランスのように産地に関するワインの法律が厳しくないんです。オーストラリアワインで皆さんご存知のように、ワインのラベルに赤ならカベルネ・ソーヴィニヨンとかシラーズ、白ならシャルドネとかリースリングなど、いわゆるブドウの品種が記載されていて非常に分かりやすいですよね。

 

 

最近良いワインがかなり出てきています。「GSM」と呼ばれるブランドがあるのですが、これはグルナッシュ、シラーズ、ムールヴェードルの三品種をブレンドしたワインです。もともとはフランスの南ローヌ地方辺りで用いられていたブレンドらしいのですが、オーストラリアで初めて知りました。これは非常に良いワインです。ぜひ試してみてください。

オーストラリアは雨があまり降らず、乾燥しているのでブドウの栽培には適しています。一日や、一年のなかで寒暖差が激しいというのは果物にとっては良いことなんです。そのほうが糖度が高まりますから。
ここは人件費が高いので、ブドウの木の剪定作業を機械で行っています。アルゼンチンでは大量に移民労働者を雇い入れて、剪定や収穫作業をすべて人出で行うんです。オーストラリアは収穫も機械でしていると思います。そのあたりを実際にブドウ畑を回って確認したいですね。

 

 

ぜひワインの楽しさを味わってもらいたい

 

日本はワインの消費が非常に少ないです。日本にはビールや日本酒、チューハイと、たくさん飲むものがあるので、あまりワインを飲むということがないのでしょう。
せっかくオーストラリアにいるのですから、是非、皆さん気軽に飲んでいただけたら嬉しいです。肉には赤、魚には白と言いますけど、誰が決めたわけでもないですし、一般的にそれが合うと言われているだけなんです。飲んでみて自分の舌がこっちが好きだと感じればそれがベストな組み合わせですから、何も「肉だから赤ワイン」などと従う必要はありません。難しく考えないで、ご自分の嗜好のワインを見つけて楽しんでください。

それに200ドルのワインと15ドルのワインを並べて、200ドルのワインを美味しく感じないとワイン音痴だ、などということはまったくありません。15ドルのワインを美味しく感じたら、それはその人に合ったワインなんです。高いワインだから絶対に美味しいということは無いんです。
ワインの年代もそんなに気にする必要はないと思います。ビンテージものは確かに10年、20年と寝かすので、ワインの当たり年というのがポイントになりますが、普段、飲むものにはそんなに気にしなくて大丈夫です。確かに収穫前に大雨が降った年のワインは影響がありますが、最近、手頃に手に入る2013年から2015年もののワインは、いずれもそれほど差の無い、品質の良いワインばかりです。

私も日本に持って帰って10年後、15年後に飲もうというワインを少しづつ買っています。これも楽しみですね。ただ、あまり買い込んで寝かしても、自分が生きてる間に飲まなければいけませんよ(笑)

日本は高温多湿ですので、ワインセラーがなくても家の中のできるだけ寒暖差のないところ、日陰の物置だとか、床下とか、マンションの場合はできるだけ日の当たらないところ、温度差のない場所に置いてください。

アルゼンチンからもかなりな数、ワインを持ち帰って置いてありますが、シドニー赴任が決まったので、いまは一時帰国する度に飲んでいます。妻にはひとりで飲むんじゃないぞ!と言っています(笑)

 

ワインを語りましたが、本当はビール党です

 

いろいろとワインについて話しましたが、実は私はビールが大好きなんです。一晩で9.5リットルというのが記録です。オーストラリアでは日本で人気のラガータイプのビールではなく、エール系のビールが人気です。日本ではエール系のビールはまだ根付いていないので、せっかくオーストラリアに来たのだからエールのビールを楽しもうと思って、よく飲んでいます。

自宅から歩いて5分のところに有名なパブ「ロードネルソン」があります。会社の帰りに寄って一杯引っ掛けて自宅に戻るということをしょっちゅうしており、いまでは周りの人から「ロードネルソンは安田の家の冷蔵庫だ」などと言われるほどです(笑)

 

 

ビアパブでも、有名銘柄のビールを出すところと、オリジナルビールを出してくれるところがあるのですが、やはりオリジナルにこだわるお店は嬉しいですね。客層はアジア系の方はそれほど多くないのですが、ひとりで飲んでいると隣のテーブルのオージーが声をかけてくれて、一緒に飲んだりすることもあります。嬉しいですね。

 

日本に帰国したら、真っ先に…

 

帰国したら?それはもう、まず日本のビールを飲みますね。ビールは新しいほうが美味しいですし、鮮度管理がしっかりされている日本のビールは格別です。成田に着いたらまず最初にプシュッと缶ビールを空けます(その前にJALの機内でプシュッとやりますか笑)
それと、この記事を読まれている駐在員の方の半分は、おそらく日本に着いたら吉野家に行くと答えると思いますよ。吉野家の牛肉はワインを入れて煮込んでいるので美味しいという話しがあるんですが、やっぱり吉野家の牛丼ですよね! 

 




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