歴史

メルボルンにあるロイヤル・エキシビション・ビルとカールトン庭園は、世界で最古い展示場の1つに数えられ、1880年と1888年に開催された万博博覧会のために、ジョーゼフ・リードの設計によってカールトン庭園の中に建築された建物です。2004年7月1日に世界遺産に登録されたオーストラリアで最初の建造物となりました。

展示館の規模と壮麗さは、当時の産業化やその国際性が生み出した価値観や大志を象徴しています。ロイヤル・エキシビション・ビルには、丸天井、大広間、巨大な玄関門、多目的な展示スペース、軸構成、付属の庭園と眺望スペースなど、万国博覧会をドラマティックかつ効果的に演出するための多くの重要な工夫が凝らされています。

他の多くの万国博覧会場とは異なり、メルボルンの展示場は、当時成長を続けるメルボルン市の文化的諸活動において引き続き大きな役割を担う永久建造物としての期待を負っていました。世界規模の万国博覧会ブームが大きな影響を及ぼし、多くの素晴らしい建造物が展示場として設計・建設されたにもかかわらず、今なお残っているものはごく僅かです。さらに、当初の場所や状態のまま残されているものはほとんどありません。それ故に、カールトン庭園の元来の場所にそのまま残されているロイヤル・エキシビション・ビルは、世界でも稀な例と言えます。大規模な万国博覧会を象徴するグレート・ホールをそのままの形で残している世界で唯一のサンプルという意味でも、さらなる希少価値があります。

建築

ジョセフ・リードは形式を重視した「幾何学式」と、自然をのびのびと表現した「風景式」を混ぜ込んで、このような混合庭園によって、新大陸オーストラリアを開拓した人類の叡智と、オーストラリアの大自然の雄大さを表現しました。

翼を広げた白鳥のような全体像はロマネスクの聖堂のようだし、正面の半円のバラ窓を見上げるとゴシックの大聖堂のような迫力を感じる。彼は、ビザンチン、ロマネスク、ロンバルディック、ルネッサンスをはじめ、様々な建築様式を取り入れて、重厚ながら軽快でかわいらしい建物に仕上げて見せました。

壁も白やパステルカラーの淡い色調で、柱はすっきり見せたり彫刻が彫られているように見せるため、トロンプ・ルイユ(だまし絵)によって装飾されています。そのため、シンプルながらとても明るく軽快な内装になっています。
中央ドームを支える四方の柱に描かれているのは、春夏秋冬を告げる天使たち。ロイヤル・エキシビジョン・ビルは直接宗教施設だったわけではないが、ビクトリア女王や天使たちを描き、神々と大英帝国を称えているのです。

窓は、まだ電気がなかったため、太陽光を効率的に取り込む構造になっており、中央のドームや玄関門ファサードのバラ窓の透明なガラスによって、内部は電気がなくてもかなり明るくなっています。

庭園

市内450前後もあるという庭園から、メルボルンは「ガーデン・シティ」の異名を持っています。トラムに乗って街を巡っていると、人口400万人弱を誇る近代都市とは思えないほどの緑の多さに驚くことでしょう。この庭園都市の象徴といえるのが、カールトン庭園なのです。

全体はおおまかにシンメトリーをなしており、ロイヤル・エキシビジョン・ビルを中心にほぼ東西対称で、南北にはサウスガーデンとノースガーデンが配されています。

サウス・ガーデンは今も公園、展示施設として使われており、1880年と1888年の万国博覧会では、サウス・ガーデンが「プレジャー・ガーデン」として使用され、様々な展示が行われました。ノース・ガーデンには2度の万国博覧会の際に、臨時の展示館が建てられました。その後公園として再設計され、現在ではメルボルン美術館が建っています。一般に、当時の万国博覧会のパビリオンは、このような造園されたエリアの中に設けられることが多かったのです。

近代都市メルボルンのふところで、カールトン庭園は春には新緑、夏には花々、秋には紅葉、冬には枯木と四季折々に姿を変え、少しずつ進む自然の営みを人々にのんびりと伝えています。カールトン庭園にあるふたつの池はまるで自然のもののようで、たくさんの鳥たちが羽を休めています。
24時間無料で人々に解放されているこのさりげない庭園。さすがオーストラリアというようなオークやユーカリの巨木があっちこっちに植えられているように見えるのですが、自然のすばらしさを伝えるためにかなりの工夫が凝らされています。庭園の出入り口にゲートなどがいっさいなく、メルボルン市街と直接つながっていて、人々は朝に、昼に、夜に自由にここを訪れくつろいでいます。

カールトン庭園は人々とともに「生きている」世界遺産なのです。

アクセス

ロイヤル・エキシビション・ビルはメルボルン市内にあり、車、バス、トラムのいずれでもアクセスは簡単です。また、鉄道の国会議事堂駅からも徒歩ですぐの場所にあります。

世界遺産「ロイヤル・エキシビジョン・ビルとカールトン庭園」は、19世紀後半の産業(万博)を象徴する建物であると同時に、カールトン庭園はオーストラリアに渡った人々の心の豊かさの、ロイヤル・エキシビジョン・ビルは人々の挑戦と誇りの象徴なのです。