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冠婚葬祭

リビングページ ~法律・冠婚葬祭~ 

 

オーストラリアは契約社会

オーストラリアで生活するにあたって、自分が暮らすのは契約社会だということを知っておこう。そして契約は単なる約束とは異なり法的拘束力を持つ。つまり、当事者間による不履行があった場合、弁護士や地域法律援助センター(Communit y LegalCentres)などを利用して法的救済を求めることができる。

 

地域法律援助センターは市民のための無料法律相談所。法律相談や、権利・義務などの法律情報を提供。弁護士資格保持者や研修中の法学生、ボランティアの弁護士が対応する。夜間の相談や通訳の手配が可能なところも多い。案件の性質や相談者の経済状況により一般開業の弁護士を勧められることもある。

 

オーストラリアで結婚する

婚姻通知書(Notice of Intended Marriage)を教会や登記所(Registry of Births, Deaths and Marriages)、結婚執行人(Marriage Celebrant)から入手し、面接を受けて作成する。

 

書類は式の1カ月と1日前までに提出しなければならず、年齢証明となるパスポートなどが必要になる。再婚の場合は、配偶者の死亡証明や離婚証明が必要になる。婚姻通知は提出後6カ月間有効なので、その間に結婚式を挙げればよい。

 

また、結婚に際しては18歳以上の立会人2名が必要となる。婚姻証明書(Marriage Certificate)は登記所(www.bdm.nsw.gov.au)で入手できる。日本人は結婚後3カ月以内に、在外公館に婚姻届を提出すること。3カ月を超えた場合は、署名・捺印した遅延理由書の提出が必要となる。(本誌「在外公館の届出・申請手続き」参照)

 

なお、オーストラリアでは結婚せずに同棲するカップルの関係は「デファクト(de fact)」と呼ばれ、かなり一般的。デファクトのままふたりで子どもを育てるというケースもそれほど珍しくなく、結婚に替わる証明書「Relationship Registration Certificate」を発行してもらうことも可能だ。また、この証明書は、同性同士のカップルの証明書としても有効で、この証明書で二人の関係を公にする同性カップルは多い。

 

離婚することになったら

オーストラリアの離婚率は初婚者の場合約50%と極めて高い。これは離婚が、結婚生活がもはや「修復不可能」であることを証明するだけでよく、母子家庭に対する社会保障が比較的充実していることも原因と考えられる。

離婚の原因を考慮しないケースが多く、この「責任不問」の原則により、慰謝料請求や支払いの概念は存在しない。なお、正式に結婚していない「de facto spouse」でも、「5年以上継続または、過去6年間のうち5年間、婚姻と同様の居住の場合」は、配偶者として認められ、法定相続と呼ばれる「遺言なし相続」の配分権利が得られる。

 

●離婚の手続き

家庭裁判所(Family Court)内に設置されたFedera lMagistrates Courtでは、家庭裁判所に比べ費用も安く短期間で済む。家庭裁判所で申請書類(Divorce Kit)を入手し、婚姻証明書などの書類と共に提出。すべての条件が満たされた場合、裁判所は通常1カ月間有効の離婚仮命令を出し、その間、異議申し立てがない限り本命令が出され、再婚が可能になる。

 

 

●親権はどちらに?

オーストラリアでは離婚と親権は別で、「子どもには実の両親に面倒を見てもらう権利があり、両親は子どもの面倒を見る義務を有する」ため、夫婦が離婚して別々に暮らすことになっても、協力して子育てをするのが一般的。「子どもがどちらと一緒に住むのか」「養育費の分担をどうするか」など、ふたりが同意できる養育計画を立てることになる。法的効力を持たせたい場合は、家庭裁判所に登記する必要がある。

 

亡くなった場合

病院で死亡した場合は、病院に火葬(Cremation)にするか埋葬(Burial)にするかを伝え、葬儀社(Funeral Director)に連絡する。死亡診断書発行の事務手続きは、通常、病院の総務で行われる。事故などで急死した場合は、検視官か警察の指示がないかぎ

り、遺体を動かさない。まず検死が行われ、遺体の処理についての最終決定は検視官が行う。死亡診断書は発行されない。葬儀は検

視官や警察からの許可を経て行う。遺体を海外に移送したり、地下納骨所や霊廟に納める際には、遺体防腐処理(Embalming)が必

要になる。

 

 

ハーグ条約とは?

国際結婚をして海外に暮らす場合、子どもを連れて母国やその他の国に行く場合に注意しなければならないことがある。

国際的な取り決めで、不法に子どもを連れ去ったり、留置することを禁止しているが、この条約が、通称「ハーグ条約」と呼ばれるもので、正式名称は「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」。

つまり、国境を越えて子どもを移動させる場合に「ハーグ条約」の対象になる可能性がある。現在、世界の93カ国がこの条約を批准していて、日本も受諾して2014年4月に発効している。これにより同じ加盟国であるオーストラリアとの間で子の連れ去りが起きた場合には、両国の政府機関を通じて子どもの返還などの措置がとられることになった。

 

 

ハーグ条約は、結婚が破綻した夫婦の一方が外国に子を連れ去った場合の子の扱いについて、

①原則として子を元の国に返還する、

②残された親が子との面会を求める「面会交流援助」の支援、

を定めている。この場合の子どもとは16歳未満の子どもで、また、国際結婚に限らず日本人夫婦の場合も対象になる。

一方の親が子どもを「不法に連れ去ったり、留置する」ということは、もう一方の親の許可を得ずに、または無断で子どもを海外に連れて行ったり、または約束した期限を過ぎても帰国せずに子どもを帰さないこと。

よくあるのが、夫婦関係が悪くなり、父親を残したまま母親が子どもと一緒に日本に里帰りする場合で、その際に無断で行ったり、休みが明けても帰ってこなかったりということがある。

父親は子どもが連れ去られたと訴えることになり、条約加盟国同士の場合は両国の間で子の返還に関して協議し、場合によっては裁判になることがある。

 

 

日本は離婚した場合、一方の親が親権を持つ単独親権制だが、オーストラリアをはじめ欧米では離婚後も両親が養育にかかわる共同親権制を採用している国が多い。

そのため、これまでも日本人女性による母国日本への子の連れ帰りが多く発生して、外交問題にまで発展してきた経緯がある。

条約発効後、日本の管轄部署である外務省ハーグ条約室が扱った申請件数は、子どもの返還が69件、子どもとの面会交流が89件の合計158件(2015年11月現在)となっている。

ハーグ条約の適用は、連れ去られた子が16歳未満で、連れ去りが条約発効後に発生し、残された親の子を養育する権利(監護権)を侵害している場合に、残された親が加盟国の管轄部署(外務省ハーグ条約室)に申請して、

①当事者による協議、

②裁判外紛争解決手続機関による協議の斡旋、

③裁判所(日本では東京・大阪の家裁)への申し立てにより、子どもの返還命令を受けることになる。

 

 

一方、子どもを返還しなくてもよい場合は、

①連れ去りから1年以上たち、子が新しい環境に適応している、

②残された親が同意や承諾をしている、または、監護権を不行使、

③返還が子の心身に重大な危険を及ぼす、

④子ども自身が返還を拒否している、などを連れ去った親が証明した場合。

 

 

特に家庭内暴力(DV)が原因での連れ去りの場合は、子が暴力を受けたり、連れ去った親が暴力を受けて、子の心理的外傷となる恐れがあるので、③の「子の心身に重大な危険を及ぼす」ことになり、明白な返還拒否の理由になる。ハーグ条約に関しては、日本の外務省ハーグ条約室のサイトで条約の概要や、返還と面会援助の申請方法を詳しく紹介している。(www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/hague/ 203-5501-8466)

 

 

また、日本の在外公館でも、DV等の被害を受けている方、子ととも日本に帰国することを考えている方、もう一方の親に子を連れ去られた方への相談を含めた家族問題への支援を行っているので最寄りの在外公館に相談しよう。

 

 

在シドニー日本国総領事館(www.sydney.au.emb-japan.go.jp/japanese/life_and_safety/hague_convention.htm

 

 

*弁護士紹介

*通訳・翻訳者の紹介

(Multicultural NSW)

*家族問題等に関する窓口・相談機関

Relationships Australia:家族問題相

談,面会交流支援

Catholic Care:家族問題相談

Family Relationships Online:面会

交流支援機関

Legal Aid NSW

*DV支援団体

 

 


 

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