2024年日本人会ゴルフ部7月度例会を開催しました
2024年日本人会ゴルフ部7月度例会リポート 開催日:2024年7月21日(日) 開催場所:Muirfield Golf Club 参加人数:12名…
2016年にオリンピック暫定競技に認定され、ここオーストラリアでも競技人口が年々伸び続けている「チアリーディング」。オーストラリア全土で1400チームを超え、競技人口は12000人といわれる。
オーストラリアの大会に出場すれば優勝、アメリカで開催される世界大会でもメダルを取り続けている「サザンクロス・チアリーディング(Southern Cross Cheerleading)」。そこに、一人の日本人女性がアスリート兼コーチとして所属している。
笠原園花さん。高校生の時にチアを始め、高校、大学と全国大会へ出場。社会人チームでは世界大会で12位の成績を収めた。満を持して飛び込んだオーストラリアでは、世界トップレベルのチームメイトたちを目の前にして初めて挫折を味わったという。
オーストラリアでの挑戦から数カ月後、彼女のもとに届いたのはヘッドコーチからの「世界大会選抜メンバー」への誘いだった。
笠原園花、26歳です。高校生の時にチアを始めて、日本とドバイで活動したのち、現在はメルボルンに拠点をおく「サザンクロス・チアリーディング」に所属しています。
メルボルン初の日本語でチアが学べるクラスを設立し、コーチとしても活動しています。
チアというとダンスのイメージが強いですが、実はチアリーディングでダンスをしているのは、2分半の演技のうち10秒程度。さまざまなアクロバティックな技を繰り広げ、その点数を競うスポーツです。女子と男子、男女混合とあって、私は女子と男女混合のチームに所属しています。
3歳から中学3年生まで日本舞踊やフォークダンス、バトンなどをしてきたので、高校でもダンス部に入部するつもりでいたのですが、新入生歓迎会でチア部の先輩たちが演技中に投げられ、空を飛んでいるのを間近で見て「私もやりたい!」と思い、チア部に入部しました。
高校では全国大会へ出場し4位にもなれたのですが、勉強もしながら週6~7で部活をこなすのはなかなか大変で、練習の厳しさから疲れたな、辞めたいなと思うこともあって。
大学でもチアを続けてもっとレベルの高い技に挑戦したいけど、厳しい練習はしたくない気持ちもあったので、チアのレベルが高い大学の中から練習がそこまでつらくなさそうな大学を選んで受験しました(笑)。一般受験で青山学院大学に進学が決まり、全国大会では6位に。
もともと資格を取得するために勉強するのが好きだったので、チアでも一つ資格を取っていた方がかたちに残せると思って、大学生の時に指導者の資格も取得しました。
大学卒業後は、社会人チームに所属してチアを続けると決めていたので、大学進学の時同様チアが続けられる環境の職場を選びました。
面接の時点で「世界大会があるので長期休暇をもらいたい」と伝えて、貿易関係の会社へ就職。営業マーケティングを担当しながら、社会人チーム「フェニックス(PHOENIX)」で日本代表として世界大会に出場しました。
実は世界大会前に会社からドバイへ赴任を依頼されていたのですが、世界大会が控えていたので少し待っていただいて、世界大会後すぐにドバイへと渡りました。ドバイでも仕事をしながらチアを続けたのですが、それが本当に大変で……。
もともとドバイにあった社会人チーム「Cheer dubai」に入ったのですが、弱かったし人数も少なかったので、新たに「UAE allstar Cheerleading 」を設立。まずは強いチームにするために、社会人チームのOGやエミレーツ航空のチア経験者に募集をかけるなど、あらゆる手を使って40人集めました。
それから仕事と練習の合間をぬってイベント運営会社に出演の交渉をしたり、宣伝したりしていたのですが、自分で一からすべて運営していたのでそれがまた大変で。
せっかくイベントへの出演権を取ってきても、出演予定のメンバーが途中で出られなくなって20人の予定が10人まで減ってしまったり……。人数が減るとイベント会社が想定していた演技とは変わってしまうので、それでも出演させてもらえるか再度かけあったり謝りに行ったり。
社会人チームはみんな仕事や家庭と両立しているので、全員が100%チアに時間が使えるわけではないので難しいんですよね。思うようにいかず、毎日泣いてましたね。
仕事をしてチアをして子どもたちに教えて、ドバイでの生活は充実していたけど、ビギナーレベルのチームだったので、世界レベルで戦いたいという葛藤もありました。その気持ちがオーストラリアに進んだきっかけでもあります。
海外の強いチームで挑戦したいと思うようになったのですが、その時はまだ1年間チームに所属して続ける自信がなかったので、まずは3カ月だけでも一回選手として入れてもらえるチームを探しました。3カ月やってみて、もしも好きでないならドバイに帰ればいいし、好きなら残ろうと。
「どうせ海外でやるなら強いチームで」という気持ちがあったので、最初はアメリカに行きたかったんですが、アメリカの強いチームが外国人を3カ月だけ練習させてくれることはそうそうないし、わざわざ外国人を呼ぶ必要もないので全部断られてしまって。
そこで連絡をくれたのが、今所属しているサザンクロス・チアリーディングのヘッドコーチで、「行こう!」と即決でした。
「チアを本気でやりたいから」と、最初は会社に退職を申し出たのですが、会社の方たちは私がどれだけチアが好きかということを分かってくれていたので、退職ではなく休職にして3カ月メルボルンで頑張ったら戻ってきてと言ってくれました。
そこで仕事を休職しメルボルンへ渡り、サザンクロス・チアリーディングに3カ月間選手として所属させていただいたのですが、そこで感じたのは初めての挫折でした。
日本でチアをしていた時は、チームの中で常に上の方にいたのですが、メルボルンでは、自分ができる技はみんなができて……。チアを始めてからそんな状況になるのが初めてだったので、自分自身には秀でるものはないと感じて自信を失くしました。自分、全然だめじゃんって。
もしかしたら自分にはチアは向いてないのかもしれないとまで思うようになって、その時はそれ以上そこでチアを続ける気持ちにはなれなかったし、仕事で何かひとつ成果をあげたいという気持ちもあったので、ドバイへ戻り仕事に復帰しました。
ドバイでの仕事に復帰し、今まで以上に仕事に力入れていこうと思っていた矢先。サザンクロス・チアリーディングのヘッドコーチからメールがきたんです。
ちょうど年が明けた頃だったので、Happy New Yearのメッセージとともに「世界大会のメンバーが1人足りないけど、戻ってこない?」と誘われて。戻ってこられるなら練習のために3週間後には来てほしいし、戻りたいかどうかの返事は明日にでもほしいと言われました(笑)。
仕事で成果をだそうと考えていた時の突然の誘いだったので、仕事も頑張りたい、でも世界の強豪から誘われることなんてないし……、メールをもらってから48時間悩み続けました。
家族や知り合いに相談すると好きなことをした方がいいと言われるし、会社には続けてほしいと言われるし、たくさん悩んだんですが「もし今何の縛りもなければ何をしたいか」と考えた時に、チアリーディングがしたいと確信できたのでチームへ戻る覚悟を決めました。
上司に退職の意を伝えて、次の日から仕事の引き継ぎを始めて、3週間後に再びオーストラリアへ渡りました。一度は自信を失ったけど、チームは私を必要としてくれていたことがすごく嬉しかったですね。
日本にも強いチームはあるのですが、世界の強豪と何が一番違うかというと「コーチのレベル」だと思います。
日本は教育システムがあまり確立していないので、技はできても教え方が分からず手さぐりの部分が多いし、高校・大学で習ってきたことを教え合いながら練習することも多く、どちらかと言うとサークル要素が強いです。
メルボルンでは、最新の情報に基づいてステップを踏みながら論理的に教えてくれるコーチが多い。きちんと教育されているコーチから教わり、世界大会で審査員が認めてくれるような正しい技術を身につけられているという実感もあって、それがやりがいや自信につながっています。
オーストラリアは英語なので、チアの研究が一番進んでいるアメリカからの最新情報が日本に比べてたくさん入ってくるのもあると思います。最近では、韓国の代表がより高い技術を学ぶために来ているし、インターナショナルの選手たちも増えてるんですよ。
チームに戻ってからは、レベルの高いメンバーたちの中で自分にできることは何か、どうすればチームに貢献できるかを自分なりにすごく考えました。
そこで、私がチームの中で唯一みんなよりうまくできるのはジャンプだと気付いて。ジャンプする時に小柄な方が飛びやすいので、小柄な体形は大きなアドバンテージ。その体形を活かしてたくさん練習をしていたら、ジャンプする演技の時にセンターに選ばれたんです。
コーチに認めてもらえた瞬間。本当に嬉しかったです。昨年は、オーストラリアの地区大会と全国大会で優勝し、世界大会では6位を獲得。チーム内で1年で1番成長した選手に贈られるRising star賞もいただくことができました。
前職での経験がかわれて、メルボルンの日系企業に特例で正社員雇用してもらうことができました。ビザの制約いっぱい半年間働かせていただいて円満退社しました。
チアの練習と仕事の両立を半年間していたんですが、フルタイムで働きながら週5日の練習をこなすのは、精神的にも体力的にも追いつかない時があって。チアのためにオーストラリアへ来たはずが、満足に練習に臨めない時期もあったので、ワークバランスを考えないといけないと思うようになったんです。
チアは、競技人口が増えていると言ってもまだまだマイナースポーツなので、世界大会に出ていても実はお給料はでません(笑)。世界大会出場にかかる費用も実費なんです……。
チアの練習をしながら働かないといけない。でもチアを最優先にしたい。どうしようかと考えた時に、新たに仕事先を見つけるのではなく、自分でコーチの仕事を作ることにしたんです。
チーム内にはすでにたくさんのコーチがいて空きはないと分かっていたので、これを機に自分でクラスを作ってしまおうと、日本語でレッスンが受けられる「日本語で教える体操・チア教室」を設立しました!
日本語で教えるスポーツクラスはあまりないので、チアも選択肢の一つになればいいなと前々から思っていて、オーナーに話したら「自分でどんどん進めなさい」と言ってくれたんです。かたちとしてはチームの下ですが、宣伝も運営も全部自分でしています。
クラスを設立してから1カ月で25人の生徒さんが集まってくれて、お母さまの間で口コミで広がっていき、今では毎日参加の問い合わせがくるようになりました。
Northcoteで1〜2歳児と3〜5歳児の体操クラス、 CaufieldとPointcookでチアリーディングクラスのレッスンをしています。最近はオーストラリアン・カソリック大学のチームでも教えるようになりました。
「自分がコントロールできないことにフォーカスしない/自分がコントロールできることにフォーカスする」という言葉が常に頭の中にあります。
例えば、ミスのない演技で終わりたいと思っていても、他の人がミスをしたらそれはミスのある演技になるし、わたしはそれをコントロールできない。でも、自分自身が目の前のことにフォーカスして演技を続ければ、最終的に結果としてきっと良い演技ができると思うのです。
私から誰かにアドバイスはできても人の気持ちを変えることはできないし、考えすぎるとストレスになってしまうから、自分ができることにのみフォーカスする。練習でも指導でも、自分ができる最大限のことをするようにしています。
サザンクロス・チアリーディングでチアを続けるために、今後はテンポラリーアクティビティビザをナショナルレベルのアスリートとして取得する予定です。
2016、2017年と世界大会でメダルを取ってきたのですが、昨年は6位に下がってしまったので、今年の世界大会はあえて出場せず、2年後に向けチーム全員で練習に集中しています。
2020年の世界大会では、今のチームで世界一を取りたい。メダルばかり考えるのはよくないのですが、その先に世界一があったらいいなと思っています!
目の前の目標は、世界大会で1位になることですが、将来的には日本に戻る予定でいます。実は、日本でチアリーディング日本代表の育成チームを作りたいのです。
世界で戦ったあとは、今度は世界大会に選手を送り込む側になりたい。これが、わたし自身の1番の目標です。世界の強豪レベルで競技している日本人の選手はあまりいないので、日本に戻った時にこの経験を次の世代のために活かしたいですね。
実はすでに日本のチームからオファーもいただいているのですが、まずはメルボルンで選手としても指導者としても上達して、日本へ帰った時にはたくさんの人が集まってくれるくらいの評価を得たいと思っています!
オーストラリアに来てから感じたのが、ワーホリをすることを目的にオーストラリアへ来て、何もできないまま帰国する人が多いような気がします。
ワーホリに来れば英語が喋れるようになる、何となく上手くいくだろう、という気持ちで来てしまうと挫折して帰ってしまうのかな。それだともったいないし「オーストラリアでやりたいことがあるから、ビザを取る」という方がいいのではないかと思います。
やりたいことがカナダにあるならカナダ、イギリスならイギリスに行けばいいと思うし、まずは「目的」を見つけることが大切。やりたいことがオーストラリアにあるから、そのやりたいことを達成するためにワーホリビザを利用する。
ワーホリビザはあくまでビザなので、目的をはっきりとさせてから、その目的を達成するための一つの手段としてワーホリを考えるのがいいと思います!
文・取材:岩瀬まさみ
サザンクロス・チアリーディング(Southern Cross Cheerleading)所属
Instagram:@cheersonoka
サザンクロス・チアリーディング:https://www.southerncrosscheer.com.au
日本語で教えるチア・体操クラス:https://www.southerncrosscheer.com.au/japanese
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