エンタメ/スポーツ

日から豪へ!フィールドを変え走り続けるサッカー選手/和田倫季

NSW州のウーロンゴンに拠点をおく「コリマル・レンジャーズ(Corrimal Rangers FC)」に所属する、和田倫季(わだともき)選手。

元Jリーガーの父のもとに生まれ、サッカー・スクールに通う兄を見て育った彼にとって、サッカーの道へと進むのはごく自然なことだった。Jリーグ「ヴィッセル神戸」を経て、韓国、オーストラリアのチームへと移籍し、20年以上の間サッカーを続けてきた。

サッカー選手の平均引退年齢は20代半ば。生存競争も激しい世界だ。友人たちが第二のキャリアへと移る中、フィールドを変え走り続けてこられたのは「ただ純粋にサッカーが楽しいから」。

屈託のない笑顔でそう話す彼に、各国のチームの特徴やサッカーの面白さ、今後の目標について伺った。

自己紹介をお願いします

和田倫季、24歳、兵庫県出身です。Jリーグ「ヴィッセル神戸」から韓国のチームへ移籍し、現在はオーストラリアの「コリマル・レンジャーズ」に所属しています。ポジションはトップ下、ミッド・フィルダーです。

実はサッカーを始めたきっかけは覚えていないんですよね。気付いた時にはサッカーをしていたって言った方が近いかもしれないです。父が元Jリーガーで引退後も指導者をしていたのと、兄2人がサッカー・スクールに通っていたので、自分もサッカーをするのが自然な流れで。

1、2歳のころから兄たちがサッカーするのを見ていて、気付いたら電車で兄と一緒にサッカー・スクールに通うようになっていました。父にもサッカーをやるように言われたことはないんですよ。「ともきがやりたいならやればええやん」って言うだけで(笑)。

他のスポーツをしたいと思ったことはなかったですね。とにかく兄2人が好きなので自分も一緒にサッカーをやりたかったんです(笑)。2人に対してライバル心もなかったし、1番近くで見ている分、2人がどんなプレーをするのか分かるので、同じチームでやりたいと思っていました。

Jリーグへ進むまでの経緯を教えてください

小学生の時は「神戸FC」に通っていて、中学生になる時に試験を受けて「ヴィッセル神戸ジュニアユース」へ。その後高校3年間は「ヴィッセル神戸ユース」でプレイしていました。

ユースに入るための試験は、ヴィッセル神戸だけでなく別のチームからも集まってくるので、何百人って試験を受けるんですよ。そこで入れない人も多いですね。

高校3年生になり、2つ上の次男が通っていた大学を僕も受験したんですが、「ヴィッセル神戸」から契約のオファーがもらえたので、大学には行かず、サッカー一本に決めました。

母親には、大学進学してもサッカーをするチャンスはあるから、大学4年間でいろいろ経験を積んだ方がいいと言われたんですが、とにかく大好きなサッカーを続けたかったので。

日本から韓国のチームへ移籍したきっかけは?

ヴィッセル神戸で2年半プレーしたあと、他のチームを探していたら、知り合いが韓国チームの監督に僕のことを紹介してくれて。監督が日本までプレーを見に来てくれた時に、チームに誘ってもらいました。

韓国では、練習に参加させてもらったチームに誘われたり、トライアウトを受けて契約してもらえたりで、3チームに所属して合計2年半プレーしました。最後に所属したチームには兄が所属していたので、兄に紹介してもらって。

韓国のサッカーリーグはK1、K2とあるのですが、リーグ全体で見ても日本人選手は3、4人しかいないんですよ。日本のチームに来る韓国人選手は多いですが、逆に韓国のチームに行く日本人選手は珍しいです。

韓国と日本、感じた違いは?

日本人の選手は、テクニックと賢さがあります。頭を使ってサッカーをしている。

僕が所属していた韓国のチームは上のリーグにいたので、技術も高かったしプレーも賢かったですけど、日本と韓国で比べると韓国はどちらかというとパワーやスピードが優れています。瞬発力だったり、20~30mのダッシュが早い。

どちらかが劣っているというわけではなく、どっちにも良さがありますね。韓国のチームはとにかく負けず嫌いなので、他の国には負けたくないという気持ちが強いです。これもいいことですよね。

あとは、サッカーには賢いだけでなく、ずる賢さも必要だと思います。日本はずる賢さを覚えた方がいいとも言われているし。それはどちらの国にとっても難しいところなのかなと思います。

現在所属するオーストラリアのコリマル・レンジャーズへ移籍したきっかけは?

韓国のチームをやめてからは日本のチームでもう一度プレーしたあと、今所属しているオーストラリアのコリマル・レンジャーズに移りました。

スポーツはサッカーに限らず実力勝負じゃないですか。試合へ出るにも、契約してもらうにも、自分の実力を見せて認めてもらう必要がある。移籍するためには、チームの練習に参加してプレーを見てもらったり、紹介してもらったりするので結構時間がかかって大変な時もあります。

コリマル・レンジャーズの場合は、小学校からの親友が監督に僕のことを紹介してくれて、サッカーしている動画を監督に送ったらチームに来ないかと誘ってもらえたので、ワーホリビザを取って1月に来ました。運が良かったです。

今いるリーグの中だけでも日本人選手は10人以上いるし、オーストラリアに来ている日本人選手は多いと思います。僕を監督に紹介してくれた親友は、実は今一つ上のリーグで頑張っていて、いい目標にもなっているんですよ。

コリマル・レンジャーズについて教えてください

すごく団結していて、メンバーもみんないい人です。ご飯もみんなでよく行きますし、家族みたいな感じですね。日本と韓国では、試合や練習に行く時に車を自分で運転したり、他の選手の車に乗せてもらったりしていましたが、今のチームは監督が送り迎えしてくれるんですよ。

今までそんなことなかったのでびっくりしました。選手との距離がすごく近いし、本当に優しくてめちゃくちゃいい人です。オーストラリアでは、ずっと試合に出ているので一番充実していますね。

今はリーグ優勝を目指しています。リーグ戦のあと、上位のチームで争うグランドファイナルでの優勝が1番の目標ですね。リーグ戦も大事なんですけど、グランドファイナルがメインだし注目度も高いので。

言語の異なるチームでは、どのようにコミュニケーションをとっていますか?

韓国語は全く分からないので、日本語が話せる韓国人選手に通訳してもらっていました。でも、身振り手振りすればなんとかなるし、サッカーに言語はあまり関係ないかもしれないです。

サッカーしていれば、ある程度サッカー用語は分かるようになるし、言語が違ってもなんとかなるんですよね。英語は……、日常会話はそんなに聞いてないかもしれないですね(笑)。輪の中にいるのが大事なんで。

それに、自分のスキルの高さを見せることができれば自然と自分にボールも集まってくるし、プレーさえ見せられればなんとかなるだろうと思ってます(笑)。

海外のチームでやりづらさはありますか?

僕のポジションは、ゴールにつながるように、他のメンバーの動きに合わせてボールをパスする役目なので、自分で行くというよりは周りを見てプレーします。

ポジション的に自分が周りに合わせる方だから、海外でプレーしていても周りと合わないと感じたことはないです。日本のチームの方が慣れているので、やっぱりその分やりやすさはありますが、僕の場合は外国人選手が相手でもそんなに変わらないですね。

試合中たまに相手の選手にイラッとしたとしても、抑えるようにしています。本当はそういうのも前面にだした方がいいんですけどね。僕がイラッとしている姿を見た仲間が奮起してくれるし。

観客も選手同士がぶつかり合っている姿を見た方が面白いじゃないですか。盛り上がってる感じがするし。逆にださないとやる気ないとも思われてしまうんですよね。その加減は難しいです。

思い出に残っている試合や楽しい瞬間は?

チームに所属して初めて出た試合は、やっぱり特別なものがありますね。試合でのプレー内容の前に、試合に出られたことが嬉しいですし。一番楽しい瞬間と言われると、やっぱり試合でゴールを決めた時ですね。

日本でも海外のチームでも緊張することは全くないです。早くサッカーをやりたいという気持ちが大きいので、緊張というよりは、テンションが上がってアドレナリンが出てる感じですね。韓国に行ってからは特に、海外に対して戸惑いがなくなりました。

僕、サッカーすることがとにかく楽しくて。悔しいことはあっても、いやになったことが一度もないんですよ。サッカーの何が楽しいのかと聞かれると説明が難しいんですけど……とにかく楽しい(笑)。大好きなんですよね。

サッカー選手として、今後の目標は?

韓国のチームに移った時もそうなんですけど、国に対して全然こだわりがなくて。とにかくサッカーができる環境さえあれば、韓国やオーストラリアに限らず国はどこでもいいと思ってます。ただ、その国の一番上のリーグでプレーしていたい。

もういいわって思ったらやめると思うんですけど、ずっと楽しいからやめようってならなくて(笑)!  ずっとサッカーをしてきたし、それ以外のことをしている姿が想像できないというか。父親がサッカーを50年以上続ける姿を見てきたから、サッカーを続けることは自分の中でも当たり前なんです。

サッカー選手の平均引退年齢って、25、26歳なんですよ。日本で一緒にプレーしていた友達の中には、引退している人が何人もいます。若い人たちがどんどん入ってくるし、やっぱり年齢が上がると体力的にも難しいから。でも僕は可能な限りサッカーを続けていきたいですね。

もっと上手くなりたいし、もっと上にいきたい。「あいつがボールを持つと観ていてワクワクする」そんな選手でいたいですね。

 

取材・文:岩瀬まさみ

和田 倫季(わだ ともき)/サッカー選手

コリマル・レンジャーズ(Corrimal Rangers FC)所属。

Instagram:@tomoki3033
Facebook:https://www.facebook.com/profile.php?id=100006129753378
Corrimal Rangers FC公式Facebook:https://www.facebook.com/corrimal.rangers

この記事をシェアする

この投稿者の記事一覧

その他の記事はこちら