冠婚葬祭

ニワトリのタマちゃん

♦ニワトリのタマちゃん♦

私が小学生の2年生の頃、近所の小さな神社で開かれていた夏祭りに両親と姉と出かけた時のことである。

夏祭りといっても、そんなたいそうなものではなく、狭い公園に無理やりヤグラを立てて、近所の爺さんと婆さんがテープの音楽にあわせて盆踊りを踊ったり、普段は近くの工場で仕事をしている近所のおっちゃんが、汗だくになって焼きそばを焼いていたり、どっから来たのかガラの悪そうな角刈りのおっちゃんがくじ引きをしたりと、町内会の夜店みたいなものである。

私と姉は、汗だくのおっちゃんから焼きそばを買ったあと、人だかりの多いテントがあったので、人の股座を掻き分けて覗き込んでみると、どうやらヒヨコ釣りの店であった。

ちなみにヒヨコ釣りと言うのは、釣り糸の先にペーパークリップが付いていて、それにウドンが差し込んであるだけのいたってシンプルなものである。

ヒヨコ釣りは、魚釣りのように、うどんに飛びついたヒヨコのクチバシに針をひっかかけて吊り上げたりするような事はなく、うどんに飛びついたヒヨコをおびき寄せて手に乗せればヒヨコが一匹貰えるといったしくみである。

当時は300円支払えば、ヒヨコにうどんを奪われても、お店のおっちゃんが”じゃ、おみやげね”などと言って、誰でもヒヨコをもらえる仕組みになっていた。

ちなみに私は、後者のほうで、糸を垂らした瞬間、数羽の元気なひよこの中で ”うどん争奪戦” が勃発し、あっという間にうどんが無くなり、あんぐり口を開けている私に、 ”はい、おみやげね” と一番弱ってそうなヒヨコを貰い、帰ることになった。 

私はそのヒヨコをタマちゃんと名づけた。 まるで猫のようにジーッっと大人しく座っているからタマちゃんと名づけたのだが、今から考えればただ弱っていたのだろう。 

そんなタマちゃんに、私は大根の葉っぱを刻んであげたり、鳥のえさをぬるま湯で柔らかくして食べさせてあげたり、公園に連れて行ってあげたりと、夏休み中、毎日世話をするようになった。

夏休みが終わる頃にはタマちゃんは、ハトと同じくらいの大きさになり、黄色い羽が抜けて、頭から小さな恐竜の角みたいなトサカと、羽の部分からは白いニワトリの羽が出てくるようになった。

その頃、幼かった私は、初めてタマちゃんが ”ヒヨコ” という鳥でない事を感じた。 ヒヨコはニワトリの子供である事は知っていたが、こうして実際に成長する過程を経験した事が無かった私は、あまりの変貌に驚きを隠せなかった。

ピーピー泣いていたタマちゃんが、今はクックックーと泣き始め、ピヨピヨ食べていた大根の葉っぱをガツガツ食べるようになった。

私にとってのタマちゃんは、タマさんになったといえよう。

そんなある日、私の母はベランダの鳥かごに窮屈そうにしているタマちゃんをみて、私にこう言った。

”タマちゃんカゴの中で狭くて可愛そうだから、学校の飼育小屋に持っていったら? タマちゃん、お友達もいないし可愛そうでしょ?” と私をなだめた。

私は”やだぁーーーー!ギャァーーーッ!” と大泣きし、立派に成長した真っ白なタマちゃんを抱えて、家を飛び出した。

タマちゃんと私は友情関係で結ばれていて、タマちゃんは犬のようにヒモが無くても、私の後をどこまでも付いてきたし、私が”たまちゃーーん!”呼んで手をたたくと、猛ダッシュで駆け寄ってきては、じっと私の顔を覗き込んだりした。

”そんなタマちゃんを飼育小屋に預けるなんて、出来るもんかーっ!” と当時の私なりに頑張ったが、そんな子供の私の意見は尊重されるわけもなく、立派な雄鶏になった真っ白のタマちゃんは、夏休みが終了すると同時に、私の学校の飼育小屋に預けられることになった。

夏休みが終了して、2学期が始まった後も、私は毎日学校の飼育小屋のタマちゃんに会いに行った。 

夜店では弱っていたタマちゃんも、見違えるほど大きくなって、ニワトリ軍団の中でもリーダー的存在になったのか、誇らしげに ”コケコッコー” と一声を挙げたりしていた。 

時々タマちゃんの雄たけびが、授業中の教室から聞こえたりして、タマちゃんが私を呼んでる気がして嬉しくなった。

そんなタマちゃんに、ある日悲劇が起こった。 

タマちゃん軍団の飼育小屋にイタチが侵入し、タマちゃん軍団を襲ったのだ。

私は幸いその現場を見る事は無かったが、その事件を担任の先生から聞いた瞬間、たまらなくなって飼育小屋に駆け出した。 

いつもの飼育小屋はシーンとしていて、空っぽの小屋には、大根の葉っぱの食べ残しと、タマちゃんの尾っぽらしき、真っ白の長い羽だけが落ちていた。

私はタマちゃんの尾っぽの羽を拾って、大泣きして家に帰った。

タマちゃんの写真が収めたアルバムをずっと眺めて、涙がとまらなかった。 タマちゃんの白い羽をそっとアルバムに挟んで静かにアルバムを閉じ、私はベッドの中で泣きじゃくった。

こうして私とタマちゃんとの友情は思い出へと変わり、タマちゃんは幼い私に命の大切さと、動物への優しさを教えてくれたのだった。

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