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お寿司と笑顔を届けます!シドニーを駆るフードベンダー/伊藤麗


か細い腕で大型配送車を巧みに操り、シドニー中を駆け巡りながらお寿司の販売訪問をする伊藤麗さん。女性にとってはタフな仕事であるにも関わらず、そんなことは微塵も感じさせない笑顔で、楽しみながら仕事をしている姿が印象的。

フードベンダーとしての仕事のほか、「日豪の山岳を踏破する山ガール」「4,000人を超えるフォロワーを持つインスタグラマー」「元放射線技師」といった、さまざまな側面を持つ彼女の充実したシドニーライフの秘密を訊いてみた。

自己紹介をお願いします。


三重県出身の伊藤麗です。友達からは「レイチェル」という愛称で呼ばれています。日本では6年半ほど放射線技師として働き、病院でのレントゲン写真の撮影や、X線検診車で企業に健康診断をしていました。

趣味は登山やキャンプです。写真も好きで、撮影してインスタグラムにアップするのがライフワークになっています。平日はレントゲン写真、週末は山の写真……どれだけ写真好きやねん!って感じですよね(笑)。

シドニーには昨年(2017年)の8月末にやってきました。最初はバックパッカー用のホステルに2週間滞在し、そこで部屋探しと仕事探しをスタートしました。すぐにジャパレスのウェイターの仕事が見つかって働き始めたのですが、ディナータイムではなく昼間の仕事に切り替えたいなと思っていた時に、今の「Sushi Ninja Sydney」での仕事を見つけました。

ワーホリでシドニーに渡豪したきっかけは?

もともと海外への漠然とした憧れがあったり、職場の近くの居酒屋でたまたまオーストラリア人と知り合ったりと、偶然なのか必然なのかわからないですが、自然な成り行きで今はここにいます(笑)。

でも、一番のきっかけはジャンダルムの登山ですね。西穂高と奥穂高の間にある尖峰なんですが、日本国内最難関ルートと言われているほど危険な山で、私が登山した前日も滑落して亡くなった人がいたそうです。両側が100メートルくらいの崖になっているところを歩いている時はかなり怖かったのですが、そこを渡りきった時ににすごい達成感があって。その体験からいろいろと吹っ切れたみたいで、何かに挑戦したいという意欲が急に湧いてきました。

仕事を辞めてワーホリでオーストラリアに来るのに、とまどいはありませんでしたか?

他の医療関係の方も似た境遇だと思うのですが、放射線技師として働くには資格が必要で、逆に資格と職務経験があれば転職の融通が利くんですね。それに、元職場では立ち上げから関わらせていただいていたこともあり、「帰国したら戻っておいでよ」と上司から声をかけてもらえたので、思い切った決断ができたのかなと思います。

帰れる場所があるというのは精神的に大きな支えになりますし、そういったサポートがある分、しっかりと今できることに挑戦して、シドニーでの生活を充実させていきたいです。ただ、英語は頑張らないといけないですね。元職場には海外からのお客様も多くて、「英語で対応できる方がいいじゃないですか〜」と、強引に退職の理由づけをして来たので(笑)。

シドニーでのワーホリ生活はどうですか?

海外では日本の放射線技師の資格を使えないので、こちらに来てからの職探しは結構苦労しましたね。放射線技師以外の職務経験がないので、できる仕事の範囲も狭くって…。

一時期はジャパレスのウェイターと訪問販売の仕事を掛け持ちしていたのですが、夜遅くまで働いた翌日に、朝早くから郊外まで車を運転するのが体力的にきつくて。睡眠不足での運転は事故に繋がる可能性もあるので、今は訪問販売の一本で頑張っています。

「Sushi Ninja Sydney」の仕事について教えてください。

シドニー郊外にある企業や車の整備場、郵便局などにお寿司を訪問販売する仕事です。月曜から金曜で、日によって違うエリアに出向きますが、大体40社は毎日回っています。近くにコンビニやスーパー、レストランがなく気軽にランチの買い出しに行けない場所柄なので、ありがたいことにお客さんからは好評をいただいています。

車に積載されたスピーカーからジングル音を流すと、馴染みのお客さんがぞろぞろ集まってきて、お寿司を購入してくれます。販売許可はもらっていますが、決まった契約や予約を受けているわけではないので、売れ行きは毎回変わります。例えば、お寿司の種類や数の発注も私の仕事ですが、先週の売り上げがよかったらからといって、今週も多めに発注すると全然売れなかったり(笑)。逆に売れすぎてしまうと、後半に行く予定だったお得意さんのところで商品が切れてしまうので、訪問する順番を調整してなんとか対応しています。その人たちの職場に着いた時に充分な数のお寿司がないと、すごく悲しそうな顔をされるので。

訪問販売の仕事の面白みは?

すべて1人でやらないといけない分、頑張れば結果に直結するので、やりがいはありますね。普段は絶対に行かないような場所に入っていけたり、シドニーのシティにいると会わないような人と出会えるのも面白みの一つかもしれません。最初はお寿司を売る・買うだけの関係性だったのが、毎週のように顔をあわせることでどんどん打ち解けていき、コミュニケーションが取れるようになっていくんです。Facebookで友達になったり、バレンタインの時には特製のスイーツをプレゼントしてもらったりしたこともあります。

それから、私がお客さんに「ありがとう」という言葉を教えて、そしたら、その人も向こうの国の言葉を教えてくれて。些細なことかもしれませんが、そういったことがモチベーションになり、もっと頑張ろうって思えますね。

今の仕事をする上で大変なことはありますか?

屋外で販売していることが多いので、天候の影響を受けやすいんですよね。雨の日には売り上げも落ちるし、屋根のあるところまで傘を差してお客さんを迎えに行ったり、商品を選んでもらっている時にも、私はトランクの屋根の外で待っているので、ズブ濡れになりますし。

それに、車が大きいので運転席への乗り降りやトランクの開け閉めだけでも大変です。40社は回るので、最低でも40回はその作業をしないといけないので…。この仕事を始めてから少しガタイがよくなった気がします(笑)。

運転の面では、販売ルートを覚えたり、日本と違うオーストラリアの道路交通法に慣れたりするのが大変でした。特にスクールゾーンでは、学生の通学時間帯だけ制限スピードが変るので見落としがちになります。同じ職場の方によると、スクールゾーンでの違反は通常からさらに上乗せした罰金を支払わないといけないそうで、それを聞いてからは気を引きしめて標識を確認しています。

海外で大型車を運転するのはハードルが高いみたいで、「Sushi Ninja Sydney」では私が女性初のドライバーだそうです。私の場合は日本で放射線技師として働いていた頃に、企業への訪問健康診断で大型のX線検診車を運転しないといけなかったので、運転技術に関しては問題なかったのかなと思います。というか、今思い返すと、そこでも大きな車を運転して企業に訪問していたので、なんとなく今の仕事とリンクしますね(笑)。

もし「Sushi Ninja Sydney」の仕事に興味を持った人がいれば、ぜひ応募してほしいなと思います。普段の生活では見ることができないディープなオーストラリアを体験できますし、きっと楽しいですよ!

「Sushi Ninja Sydney」の応募はこちらから
https://www.jams.tv/classifieds/jobs/10383

プライベートの時間はどのように過ごされていますか?

平日だと友達とパブに飲みに行ったり、夏の間は日が長いので仕事終わりにビーチへ行くこともあります。シドニーにワーホリで来る前はあまりビールを飲まなかったんですが、こっちのビールは種類も多いし、すっごくおいしいのでハマっちゃって。

週末はやっぱり自然を満喫するために、登山やキャンプに出かけることが多いです。ウルルやブルー・マウンテンズ、コジオスコといった名所にも行きました。日本にいてもオーストラリアにいても、私はやっぱり自然が好きなんだなって実感しました。

後は、自分のブログを立ち上げて登山などの情報を広めていきたかったので、ウェブ関係の知識を深めるために、MORROW WORLDという留学エージェントでインターンとして記事を投稿させていただいています。ワーホリや留学生の方にとって役立つ生活情報からマニアックな山の話まで、幅広く情報発信しているので、ぜひ読んでみてください。

MORROW WORLDの記事はこちらから
http://tabiken.com/au/author/reiito/

オーストラリアでおすすめの山は?

私のおすすめはドンキー・マウンテン(Wolgan Valley, NSW)です。日本の山と違って、山小屋や街灯もなくて、自然がありのままに残っているんですよ。頂上からの景色はオーストラリア全土を見渡せるんじゃないかってくらい、目の前の景色を遮るものがなくて、悠々たるオーストラリアの壮大な自然を感じました。一生忘れないと思います。

私が登山を好きな理由って、山にパワーをもらえるからだと思うんです。例えどんな悩みや不安があっても、山に登ると不思議と気持ちがリセットされて、すべてプラスの方向に考えられるようになるんですよ。それは自然の持つ力だったり、どんな厳しい山道も自力で進み続けなきゃいけないっていう覚悟のおかげだと思います。海外での生活や仕事も登山と一緒なのかもしれません。だから私は、これからも自分自身の力で進み続けたいなって思いますね。

Instagram: @raychell_29

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