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小泉八雲『怪談』をもとにした喜劇「Ghost Jam!」を演じるショーン・マーフィーさんとソフィー・ウンセンさんにインタビュー


画像出典元:Mama Dojo & Sean Murphy Comedy

日本人にもなじみ深い小泉八雲の『怪談』を、お笑いと音楽で味付けした異色コメディショー『Ghost Jam!』が、現在開催中のインディペンデントアートの祭典「Sydney Fringe Festival 2017」のプログラムとして今月29日まで、レッドファーンのGiant Dwarfにて公演されている。

『Ghost Jam!』は5歳から12歳の子どもと大人に向けた60分間の内容で、日本の怪談の世界観で冒険するというもの。国内の学校行事や家族向けイベントなどでコメディショーを公演する「Mama Dojo」のショーンさんが、国際的に活躍する和太鼓アンサンブルグループ「TaikOz」所属のミュージシャンのソフィーさんとタッグを組み、劇中にさまざまな仕掛けを用意。かの有名な小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)に扮したショーンさんのコメディを、ソフィーさんの音楽が盛り上げる。

親日家としても知られるショーンさんは、2015年にも、本人の1年間の日本滞在経験をもとに日常的なカルチャーショックを題材にしたコメディショー『Turning Japanese』を公演し、海外ツアーを催行するなど国内外で活躍している。年齢や国籍を問わず、誰でも楽しめるように言葉とジェスチャーの両方を入り交えた笑いは、特に子どもたちに大人気。

ショーンさんとソフィーさんの出発点はどこなのだろうか? 公演前のお二人にお話を伺った。


(写真左/ソフィー・ウンセンさん、写真右/ショーン・マーフィーさん)

今回Sydney Fringe Festivalで公演される『Ghost Jam!』について

ショーン:日本のクラシックな怪談を盛り込んだ喜劇です。5歳から12歳の子どもが対象ですが、もちろん大人でも楽しめますよ。物語を紡ぐのは、気難し屋のラフカディオ(ショーンさん)と、やんちゃで音楽好きなキツネ(ソフィーさん)。それぞれ実在の人物と日本の民話を元にしたキャラクターです。

和楽器の音色が響きわたる中、観客をも巻き込んでいく物語の展開は、誰にも、というか僕にも先が予測できず、最初から最後まで退屈させません。大人なら伝統的な日本の音楽や物語に耳を傾けてほしいし、子どもならことあるごとに折り合わないラフカディオとキツネの漫才に夢中になっちゃうこと請け合いです。

なぜ「日本の怪談」そして「小泉八雲」に注目したのか

ショーン:高校時代、東京の東池袋に1年間滞在したのですが、じつは住んでいた場所がちょうど、ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)が眠る雑司が谷霊園の隣だったんです。その事実を知った時、僕はラフカディオという人物に親しみを感じましたね、同じ「日本に魅せられた変なガイジン」として。

さらに僕は彼の作品が大好き。そこには、僕自身が日本という国に対して抱くあまりに多くの感情が、とても美しく描写されていますから。彼の最も有名な小説作品『怪談』をいつか自分のコメディショーで演りたいと思っていましたが、和太鼓奏者のソフィーと出会い、ようやく機が熟したというわけです!

前回のコメディショー『Turning Japanese』との違い

ショーン:『Turning Japanese』は、僕のカルチャーショックを元に日本滞在のおもしろいアイデアを詰め込もうとした初期のコメディショーです。違いというよりも、当時すでにラフカディオ・ハーンの要素を試しに少し取り入れていたので、2015年の初興行を終えて次回のショーを決める段階になった時、『怪談』を続けていきたいと思ったんですよね。

音楽で話す「キツネ」のキャラクターについて

ショーン:僕とソフィーで『Ghost Jam!』の中身を創っていく時、それぞれの強み――「ソフィーはすごいミュージシャン」で「ショーンはすごいバカ」という点を生したいと思いました。そこで、劇中でソフィーの演奏をできる限り聴いてもらえるように、キツネは声の代わりに音楽で会話することにしたんです!

日本独特の「妖怪」や「お笑い」について

ショーン:日本文化の豊かさや歴史の奥深さを感じますね。僕はいまだに表層を学んでいる段階です。とはいえ、「河童」は世界有数のすごいモンスターだと言うことができますよ。だって水を張った皿を頭に乗せている化け物が、通行人の尻を噛むんですから。そんなやつ、倒せます?

日本で暮らした経験について

ショーン:先述したように、僕は交換留学生として東京で1年間を過ごしました。池袋から狛江市にある学校まで電車通学でしたが、「ひょろ長で髭もじゃのガイジン」が高校生の制服を着ている、かなり奇妙な絵面になっちゃいました。

でも、僕としてはカルチャーショックというやつを心から楽しんでいましたよ。学校では多くのバンドに所属しましたし、文化祭では下駄タップダンスまで披露しました。東京郊外にもよく旅行していたら、林や畑がとても好きになりましたね。それから、どこに行っても必ず食べていたものがあります。僕のソウルフード、ウナギ丼!

ソフィー:初めて日本を訪問したのは、私が12歳の頃でした。ヨーロッパ旅行の帰りに家族と4日間だけ滞在しましたが、一生忘れることのできない思い出です。

最近も、幸運なことに夏祭りの季節に日本に滞在して、多種多様な地元のイベントを楽しんだり、和太鼓のパフォーマンスにも参加できました。著名なミュージシャンであり指導者でもある方々から、伝統的な和太鼓奏法の指導も受けられたので、とても貴重な体験でしたね。

コメディアン(ショーン)/ミュージシャン(ソフィー)になったきっかけは

ショーン:残念なことに、選択の余地がなかったんです。というのも、学校でも職場でも僕はいつだってお調子者のバカで。口を開けばくだらない冗談ばかり飛ばして。「このまま同僚たちに厄介をかけるよりも、僕の気質を最大限に有効活用できるところに行こう」と気づいたわけです。そんなわけで、3年前からコメディアン専業です。

ソフィー:私の人生において、音楽というのは常にそこにあるものです。両親は演奏こそしないものの、幅広いジャンルの音楽を聴くすばらしい鑑賞者で、彼らが愛する音楽を姉妹そろって聴きながら育ちました。母の場合は、私がエルトン・ジョンの『クロコダイル・ロック』好きの流行りをよく知る娘として理解がありましたが、そんな中でも、父ときたら構わずバッハやベートーヴェン、ブラームスといったクラシックばかり、私に聴かせてくれて。

音楽なしの人生は考えられません。大学入学当初は別のことを学んでいましたが、1年も経たない内に「私は音楽を趣味のままにしておきたくない!」と気づいたんです。音楽には世界中の人々に届く力があり、人間の感覚を成長させ、まわりと共有すれば新鮮な驚きに満ちています。

コメディ/音楽を通して現在までに学んだこととは

ショーン:一生懸命やること! 良いコメディアンはやすやすと即興をやってのけるし、まるで彼らの才能だけで笑いが起こるように思えるほど、苦労の跡を見せませんよね。本当のところ、偉大なコメディというのは何度も練習を重ねた上に完成します。チャレンジを恐れずに、失敗から学んでこそ良いものができるんです。キラリと光るジョークや抱腹絶倒の瞬間というのは、100回ヘマして生まれる成果なんですよ!

ソフィー:常に自分を信じることだと思います。他人にどう思われようと気にしない、夢は大きく、せいいっぱい努力して、絶対にあきらめないこと! 努力を続けているあいだ、楽しむことも忘れちゃいけません。私は音楽を通して世界中のこと、自分自身のこと、他にも多くのことを学ぶことができていると思います。それこそ、私がミュージシャンとして生きる中で大好きなことの一つです。

今後の展望

ショーン:ソフィーと僕は、今後も『Ghost Jam!』ツアーを国内外で続けていきます。その中には沖縄で開催される「りっか・りっか・フェスタ」のような家族や子ども向け国際舞台芸術フェスティバルなども予定されています。僕たち、今からヤル気満々です!

僕個人のプロジェクトとしては、2018年4月にゴールドコーストを拠点にオーストラリア国内で開催予定の国際スポーツ大会「第21回 Commonwealth Games」(4年ごとに開催されるオリンピックのコモンウェルス諸国・諸地域版)に向けたプランを練っているところです。関連イベントへの参加はもちろん、「Queen’s Baton Relay」のように、オーストラリアを訪れる国々に突撃するショーをやってみたいですね。50カ国以上が来るそうですよ。僕の幸運を祈ってね!


画像出典元:Mama Dojo & Sean Murphy Comedy

★Mama Dojoのツアー日程はこちら
http://www.mamadojo.co/shows/
★「Sydney Fringe Festival 2017」の詳細はこちら
https://www.jams.tv/event/80271
★ショーン・マーフィーさんの詳細はこちら
http://www.mamadojo.co
★ソフィー・ウンセンさんの詳細はこちら
http://taikozeducation.com/performer/sophie-unsen/

 

取材・文/武田彩愛(編集部)

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