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日系コミュニティ

第8回 大森 登氏 三井住友海上火災保険

オーストラリア在住の日系企業駐在員にフォーカスし、海外生活ならではの楽しさ、苦労したこと、戸惑ったことなどそれぞれの駐在生活を語ってもらい、オーストラリアでの暮らしを明らかにします。また、仕事や帰国のことも話していただき、企業駐在員としてのやりがいや悩みを聞きます。

大森さんの海外駐在はシンガポールに続いてシドニーと、誰もが羨む生活環境の良い人気の街への駐在。配偶者が外国人の駐在員はまだまだ少ないようですが、妻はシンガポーリアンという大森さんに、家族をシンガポールに残しての単身赴任生活や、赴任地のシンガポールとシドニーの違いなどをお聞きしました。

 

スリーSの街に続けて赴任

2001年から2006年までの5年間、シンガポールに赴任していました。海外赴任はシドニーが2回目です。シドニーに来る前は監査部にいました。海外組織の監査ですので、海外関係に携わっていた期間は長いですね。駐在以外でも出張ベースで何度も海外に出ていました。

シンガポール赴任時は独身でしたが、駐在中にシンガポーリアンと結婚しました。その後日本に戻りましたが、途中から妻と子どもがシンガポールに戻ったので、日本では単身生活になりました。今でも家族はシンガポールですので、シドニーは単身赴任です。

シンガポールには5年暮らしましたが、東京よりも住みやすいと感じています。その当時、 一時帰国した日本から戻る際は「シンガポールに帰る」という気持ちの方が強かったですね。

シンガポールやシドニーは、サンフランシスコと並んで、駐在員にとって住みやすい街、いわゆる「スリーS(エス)」と呼ばれる街で、生活環境が良い人気の高い都市です。そのため、シンガポールに続いてシドニー赴任が決まった時は、できるだけ周りに言わないで目立たないようにしていました(笑)

 

 

 

来てみてイメージが変わったオーストラリア

出張で欧米には行きましたが、オーストラリアは初めてです。国の成り立ちからしてヨーロッパ的かなと思っていたのですが、実際に来てみると全然違うと感じています。オーストラリア人の明るくて非常にフレンドリーな感じは、イメージしていたヨーロッパ的なものとはだいぶ違うというのが第一印象です。

研修で英国に 2カ月余り滞在していましたが、その時の印象でオーストラリア人も英国人のようにプライドが高く、日本人は少し下に見られていると思っていました。それに白豪主義というイメージもありましたし…。実際にはそんなことはなく、非常に好印象を持ちました。日本人も含めアジアの人にとってオーストラリアに永住したいと思う気持ちはよく理解できます。生活環境や国民性を考えると非常に暮らしやすいと思います。

 

規制が厳しく、均質化が進む保険業界

シンガポールでもシドニーでも、基本的に仕事内容は同じですが、グローバル化の影響を受けて保険の種類の均質化が進んでいます。保険商品も内容はほぼ同じで、強いて言うなら販売方法の違いくらいでしょうか。保険は最近ではグローバルベースでコモディティ化しているので、ビジネスとしては収益を上げにくくなっています。

保険会社は政府の監督当局から免許を得る規制業種ですが、世界的に規制が厳しくなっています。オーストラリアの場合は保険料や販売商品に関する規制はないのですが、財務健全性を確保して事業展開ができているか、企業のガバナンスやリスクマネジメント、コンプライアンス対応が整備できているか、要は経営管理態勢自体を監督されています。

 

AIGとIAG、聞き分けには苦労

英語はどちらかというと苦手です。若手社員の頃は、日本では英語でのファクスのやりとりが多くある部署でしたから、読み書きはそれほど困りませんでした。でも海外からの電話には困りました。ちゃんと聞き取れているか不安でしたから、いま話した内容を簡潔にファクスで送って下さいと頼んでいました。大森に電話すると必ず後からファクスを送らなくてはいけないと変に思われたでしょうね(笑)

オーストラリア英語はシンガポールの英語に比べると、非常に英語らしい英語ですね。ただし、よく言われるように「A」をアイと発音しますので、米国の保険会社AIGと、オーストラリアの保険会社IAGを聞き分けるのは非常に難しいです(笑)

 

 

単身赴任の理由は教育水準?

小学生の子どもが二人いますが、実はシドニー駐在が決まった時、子どもがシドニーに行きたくないと言い出しました。インターネットで調べた世界の教育水準という比較を持ってきて「ほら、シンガポールが3番目で、オーストラリアが10番より下だ」と言うのです(笑)本当は友達と別れたくないというのが理由でしょうけれど。私は「サイトで調べるのもいいけれど、その水準に自分がいるかどうかよく考えて、もう少し成績を上げなさい」と言っておきました。

最近はインターネットのおかげでテレビ電話のように顔を見ながら話ができるので、単身赴任の駐在員には便利ですね。幸い、オセアニア地区の統括本部がシンガポールにあるので、出張でシンガポールに行く機会に家族とは会うことができます。それにホテルに泊まる必要がないので、会社としても経費の節約で良いのではないですかね(笑)

 

 

サーフィンをしたいけれど、サメが怖いです

あまり趣味がないのですが、ゴルフは仕事の関係ですることが多いですね。シンガポールではほぼ毎週、年間60回ほどしていました。オーストラリア赴任が決まった時に、できればサーフィンをやりたいと思いました。まだ実行していませんが、こちらに来てサメのことを聞いたりすると、ちょっと不安になりますね(笑)

学生時代はバスケットボールに明け暮れる毎日でしたので、大学卒業時にスキューバダイビングのライセンスを取得して、ダイバーデビューをしました。会社のスタッフはシドニーでもすぐ近くでできるというのですが、せっかくオーストラリアに来ているので、グレートバリアリーフに一度は行ってダイビングをしたいですね。 いずれにしてもシドニー駐在中に、仕事以外にやりたいことをいろいろ作りたいと思っています。

 

改めて日本の素晴らしさを知りました

以前、ある研修会で、海外に行った時に何を大事にするかというテーマで、日本の心とか自分のアイデンティティをしっかり意識しないといけない、特にマネジメントする立場の人は自分の立つ場所をしっかりしないと…という話を聞いて、改めて日本の美しさを知ろうと思いました。

海外にいて日本を恋しく思うのも、例えば窓を開けるとそこに山があり、 豊かな緑があり、冬になると雪がかぶり…という自然の美しさです。そこで、日本を知るために季節の自然に触れることをしてみました。月ごとの花を求めて各地を歩くのです。あぁ日本だな…、日本には素晴らしいものがあり、その中で育っていると感じました。

では、オーストラリアとはなんだろう?オーストラリア人のアイデンティティとはなんなのか?そういうことに興味がありますね。

 

 

単身赴任は本当に楽なのか?

シンガポールでは手に入った食材がこちらにはないということがあります。それほど困らないのですが、生活環境を比べると少し違いを感じますね。シンガポールにも3万人ほど日本人がいますが、駐在員が多いので日本的な生活を続けている人がほとんどだと思います。その点、シドニーの場合はそういう人が少ないのかもしれません。それにシンガポールに比べてお店が早く閉店しますね。その点は少し不便かもしれません。

単身赴任だと周りから「楽でいいね」と言われますが、家に帰った時の張り合いのなさを感じます。また、自分を律しないと、知らないうちに週末が終わってしまいます。家族と一緒だと、週末は出かけようか、それとも子どもの勉強をみようかとなりますが、単身だと自分だけの時間ですからなんとでもなります。その分何もしないであっという間に時間が過ぎるというのはよくありがちです。気の緩みには気をつけようと思っています。

 

 

駐在員としての成功の秘訣は?

妻が外国人なので、子どもたちのアイデンティティが気になります。これだけグローバルな時代になると、学校を卒業してすぐ海外に行って就職しようという方も多くいます。そういう方がアイデンティティをどう考えているのか興味がありますね。

親の仕事の関係で小さい頃に海外滞在をしているお子さんは多いですし、日本語はもちろん、英語も流暢に話すのですが、日本生まれの国際人としてアイデンティティを持つことが大事だと思います。私自身、日本のアイデンティティを持ちつつコスモポリタンとして活躍したいと思い仕事や生活をしていますが、妻や家族は理解してくれていると思います。

外国人の配偶者を持つ駐在員はまだまだ少ないですが、こういうことを常に意識して海外で仕事をしていくのは駐在員としての成功の秘訣だと思います。外資系を渡り歩く方とは違い、駐在員として海外で仕事をするうえで大事なことだと思います。

 

 

日本に帰ることになったら…

日本に帰って真っ先に…日本酒の置いてあるお店に行きます!シドニーに来る前はかなり日本酒に凝っていて、美味しい日本酒をいろいろ探してお店を巡っていました。全国のお酒を何十種類も置いてあるお店に行ってどれが美味しいか、どんな味か聞き出して、お勧めのお酒を買って楽しむということをしていました。

オーストラリアではワインになるのでしょうが、私は日本酒ですね。シンガポールにもシドニーにも日本酒を置いてあるお店はありますが、ほとんど有名銘柄です。そうではない日本酒となると、やはり日本です。日本酒は日々進化していますし、幅の広さや深みが違いますね。

退職後ですか?まだ具体的には考えていませんが、子どもが大きくなったら妻と二人で日本に暮らしたいです。妻は日本が大好きなんです。

連載『オーストラリア駐在員物語』の過去記事一覧はこちら
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