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第12回 鈴木孝平氏 パナソニック・オーストラリア社

独学で事業戦略・海外マーケティングの勉強をし、海外駐在の機会がある事業部門に異動後、日本国内の海外営業部門を経て、初めての赴任先としてインドネシアのジャカルタで勤務。家族とともにジャカルタに赴任したが、組織全体の方針変更により、1年ほどで、次の赴任地シドニーへ転任となった。鈴木さんに、家族一緒の赴任生活や、前任地のジャカルタとシドニーの違いなどをお聞きしました。

海外で自分を試してみたかった

新卒で松下電工に入社しました。最初の配属先が神戸で、そこに4年間勤務しました。海外への興味はあったのですが、入社時には特にそれほど海外志向ではなかったですね。入社4年目くらいから次第に海外で自分を試してみたいという思いが湧き上がり、海外赴任に対しての興味が出てきました。

当時の営業範囲は神戸市を中心とした兵庫県内でしたが、その間に、独学で海外マーケティングの勉強をして、社内の異動制度に応募し、業務用のディスプレイ部門に移りました。そこではヨーロッパやアジアの海外営業を担当してきました。その後、パソコン事業部門に異動となりました。

ジャカルタからシドニーに赴任

初めての海外赴任がインドネシアのジャカルタで、2015年から1年1カ月駐在したのですが、事業部門の方針変更に伴い、2016年3月に、日本に帰らずにそのままシドニーに赴任しました。インドネシアでは、所属部門の新たな取り組みとして堅牢モバイルPC事業の強化を行おうとしてきました。関係省庁へのロビー活動や規制に対する対応策など、新興国特有のさまざまな問題があって、非常に苦労した一面もありましたが、本当に勉強になった駐在期間でした。

シドニーでも引き続き、堅牢モバイルPCの販売・マーケティングを担当しています。これは一般的にオフィスなどで使われるものとは異なり、「タフブック」と呼ばれる、かなり頑丈なタイプのモバイルPCです。防水加工や耐久性の高いもので、政府からも多くの御注文を頂いている製品であり、警察や救急隊員、その他、採掘場や建設現場など、環境が厳しい場所での酷使に耐える製品になっています。

 

オーストラリア駐在はやりがいがあります

パナソニックの営業戦略は日・米・欧が中心になっていて、オーストラリアは、アジア・パシフィックとひとくくりにされがちです。しかし、アジア・パシフィック地域では唯一、欧米の環境の国であり、製品そのものの価値を認めて頂ける市場である為、まだまだ販売を伸ばせる可能性がある市場ですし、かつネイティブイングリッシュに磨きをかけることができるということで、来る時は不安もありながらワクワクもしました。

仕事は忙しいですが、チームメンバーにも恵まれていて非常にやりがいがあり、厳しくも楽しい日々を過ごしています。直属の上司はオーストラリア人なのですが、非常に優秀かつ理解のある方なので、仕事をする上でも学ぶ事が多いですね。。喧嘩というよりは建設的な口論はしますが、みな雰囲気は良いですし、一緒にいて楽しく、そして頼もしいチームです。

 

インドネシアでは英語が話せるスタッフと一緒に行動したり、顧客が英語を話せたりしましたが、みなが流暢に話せるわけでもないので、どうしても核心部分がきちんと伝わっているだろうかと不安はありました。オーストラリアではそんなことはないですね。苦労はあっても仕事は楽しいですし。強いて言えば日本への報告に苦労しています。(笑)

「楽しい」イメージがあるオーストラリア

海外赴任の場合、インドなどは「頑張って」と言われたり、欧米は駐在員も多いので、「そうか行くのか」という反応ですが、オーストラリアの場合は「何しに行くの?」と言われがちです。フランスやイタリアと同じで、観光の国という雰囲気があるのではないでしょうか。しかし、オーストラリアの場合は、営業・マーケティング・工場との生産管理調整・技術・アフターサービス・経営管理と、すべての役割において、私自身で個々の現地メンバーと連携して対応していく必要があり、逆に欧米では経験できない事をさせて頂いており、非常にやりがいを感じています。

駐在員の赴任期間は通常、3〜4年が平均なのですが、私の場合はインドネシアに1年ほどいましたので、その期間が加算されるのか、それともリセットされるのかで大きな違いがあります。私としてはできるだけ長くいたいですね。でも、会社はそうはしてくれないんです。「みんな行きたいところだからね」と言われてしまいます。

 

楽しく過ごしたジャカルタ赴任

ジャカルタには家族で赴任していましたが、シドニーに来ることになって確かに、治安や衛生面など社会環境が大きく変わりました。ただ、交友関係でいうと、特に家族の交友関係の面ではジャカルタにいた時の方が充実していたかもしれません。というのも、日本人の駐在員のご家族が多く住むコンドミニアムに住んでいたことで、偶然、妻と同年代で子ども達も同じ年齢という友達が4、5人おりましたので、妻と息子からしますと非常に楽しいプライベートライフだったようです。その点ではジャカルタ駐在も良かったかなと思います。

 

シドニーでの新たな生活

シドニーでは、プレイグループと呼ばれるグループ活動がいろんなところで行われており、妻と息子はそこで友達を作っています。永住の方、駐在の方とおられますが、皆さん非常に良い方ばかりだと聞いています。また、息子が日本で言うところの幼稚園に通いはじめたのですが、ローカルの幼稚園なので、当然子供たちもその親御さんもオージーです。その中で、妻も息子もまだまだ英語が拙い中、頑張ってくれており、それでなくても大変な子育てを、海外に来ても頑張ってくれている妻には、なかなか面と向かっては言えませんが、本当に感謝しています。

オーストラリア生活は家族で楽しんでいます。なにより緑や公園の多さに驚きました。周りにたくさんの公園がある環境ですので、そういう面での子育ては非常にしやすいですね。これまで家族でケアンズとメルボルンに行きました。残念ながらケアンズは大雨で散々でしたが。メルボルンへの旅行では、グレートオーシャンロードやフィリップ島にも行ってきました。

 

苦手はワインとベジマイト

オーストラリアではお酒といえばワインが当たり前ですよね。でも、困ったことに私はもともとワインが苦手なんです。大学時代に安いワインを何度も一気飲みして気分が悪くなったことがトラウマになっていて…。このトラウマを克服する良いチャンスだと思い、徐々にですが、ワインを口にしています。そのうち次第にワインにはまるかもしれませんね。(笑)

それから、会社では「ミスター・ベジマイト」と呼ばれています。ベジマイトが食べられない私をみんながそう呼ぶんです。頑張ってオージー並みに食べられるようになりたいですね。

 

日本が恋しい…?

妻は、日本に行くとオーストラリアに帰りたくないと言います。このままのほうが楽だし、なんでも手に入って便利だと。でも、シドニーに戻ると、こちらの生活もまんざらではないと言うんです。

私は日本に出張するときは、ホテルの近くにあるお店で、たまごかけご飯をしっかり食べてきます。海外ではなかなか生卵が食べられないので。

日本に帰って真っ先に…? やっぱり、日本ならではの絶妙な味づかいの食事をしたいですね。なかなか海外では口にできない絶妙な味ってあるじゃないですか? 例えば同じお米でも水が違うと味に影響が出ますよね。

それに、海外に駐在していると学生時代の友だちになかなか会えないので、時間を忘れて飲みに行きたいですね。

連載『オーストラリア駐在員物語』の過去記事一覧はこちら
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