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オーストラリアの不動産について/欠陥住宅は誰が修理する?

2018年のクリスマスイブのこと、シドニー郊外のマンション(当地の用語では「ストラータビルディング」)に大きな亀裂が起こり、倒壊の恐れのため全住民が避難退去することになったというニュースは衝撃的なものでした。

さらにその後、シドニーの別のストラータビルディングでも大きな亀裂が見つかり、住民が避難勧告を受けた出来事も皆さんの記憶に新しいことと思います。

事後の調査では、いずれの場合も修理は可能ではあるものの、建築上の欠陥が原因であることが判明しました。

統計から分かる欠陥住宅

2019年8月18日のABCニュースによると、ABS(Australian Bureau of Statistics)の調べでは、2000年後期から2019年3月の間に建設されたストラータビルディングの戸数はオーストラリア全土で667,394戸。同ニュースの内容を要約すると、内訳は以下の通りとなります。

【ストラータビルディングの戸数】
NSW州: 259,580戸
VIC州: 174,896戸
QLD州: 143,704戸
WA州: 39,680戸
SA州: 14,418戸
TAS州: 1,849戸
ACT: 26,116戸
NT: 7,150戸
オーストラリア全土:667,394戸

これらに加えて、現在140,000戸が建設途中であるそうです。

同18年間に、政府は空前の不動産ブーム・建設ラッシュに対応すべく、それまでの煩雑であった建設許可規定やプロセスを簡易化し、民間業者でも許認可が出せるようにしました。

同ABCニュースには、2003年以降に東海岸側に建設されたストラータビルディングの内7割には何らかの欠陥がある可能性が高いとの専門的分析が含まれており、特にNSW州については、2003年から2018年の間に建設されたものの内97%に少なくとも一つの欠陥があると指摘しています。

こうした欠陥で最も多いものが水漏れで、次に多いものが耐火システムの問題であるそうです。VIC州については、2008年から2017年の間の建築を対象とした調べによると74%のものに欠陥が見つかり、QLD州の同様調査では71%であったそうです。

同ニュースでは、こうした問題は東海岸側に限ったことではないと警鐘を鳴らしてもおり、NTでの最近の調べでは、9棟のストラータビルディングが建築基準に合致していないことが判明したと報告しています。

欠陥住宅とは何か

そもそもどういう問題が『欠陥』なのでしょうか。

法律上、『欠陥』とはデザイン、施工技術、材料上の欠陥、あるいはNational Construction Code(オーストラリア建築基準)に定められた構造基準を満たしていないことに起因する瑕疵(かし)であると定義づけられています。

瑕疵は、その程度によって2種類に大別され、1つは、ペンキやタイルなどの剥がれや壁の表面的なひび割れなど比較的軽度のもの、もう1つは、火災の恐れや屋根、土台、壁など物件の構造部分の強度を著しく損なう性質の欠陥を指し、もはや居住に値しないものとなる重度の欠陥です。

誰が責任を負うのか

ストラータビルディングの欠陥の修理修繕に大変な時間と労力、そしてコストがかかるであろうことは容易に想像がつくことです。しかし、そもそもそうした修理修繕義務は一体誰が、またいつまで負うものなのでしょうか。

全ての物件瑕疵については、竣工検査に通った日から2年間建築業者が修繕義務を負うことと定められており、重度の瑕疵については竣工してから6年間と定められています。いずれの場合も建築業者のコスト負担で行われることとなっています。

しかし、請負業者が責任回避をしたり、行方が分からなくなってしまっていたり、さらには、問題が発生する前に破産してしまったりする場合があるのが現実です。そうした場合の被害者は、開発業者(ディベロッパー)に責任を追及することになります。

そのような場合のために開発業者は開発コストの2%を預託金として取り置きすることが義務付けられています。

もし自分の物件に欠陥を発見した場合

自分の住んでいる物件に欠陥が見つかった際、その問題が共有部分(自分の所有部分以外の場所すべて)の瑕疵である場合は、ストラータマネージャーにすぐに連絡をし、欠陥に見合った適切な処置が速やかに取られるよう促します。こうした処置は、建設業者あるいは開発業者への連絡、そして他の住民に対する通知が含まれます。

自分の所有部分での欠陥である場合には、自分で直接建設業者に連絡をし折衝することになります。もし自分の物件を第三者に賃貸している間に起こった場合には、管理業者が物件所有者と連携を取りながらこうした手続きを行うことになります。

設置されている器具や機材が原因である場合にはそれらの製造元にも連絡をとることになります。言うまでもなく、こうした対応には専門的知識と迅速性が求められることとなりますので、自分の所有部分で問題が発生した際には速やかに弁護士に相談し、代理人として任命することが賢明です。

相手が責任を認めない場合

建設業者や開発業者が修繕責任を認めない場合、あるいは満足のいく修繕が行われない場合は相手に対する法的措置が講じられることになります。これは、各州の管轄機関(通常Fair Trading Department)に申し立てを行うことから始まります。

共有部分における欠陥の場合はストラータマネージャーが行いますが、自分の所有部分の欠陥である場合には各所有者あるいはその代理人が自ら行います。

もし相手がこうした機関が下した裁定を順守しない場合は、次のステップとして、各州の管轄裁判所への申し立てがあります。

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