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【子育て】 シドニー共育日記(第3回)「Expect the unexpected」(出産は予想通りにいかない)〜その3〜 その時彼は?

妊娠が分かったとき、初めてその事実を告げる最初の他人は殆どの場合「共同制作者」であるあなたのパートナーだと思う。

一個の生命を育んでいく責任の半分は、彼の義務であり権利なのだから、彼には誰よりも最初に知らせるのは当然だ。

だけど、その事実を彼にどう告げるか、また彼がどんな反応を示すか、についていろいろと想像を巡らすのは

初めて妊娠した女性の一つの醍醐味かもしれない。

びっくり仰天した挙句、感激のあまりあなたを抱きしめて涙を流したりするタイプは古臭い日本制ドラマの中にしか存在しない。

(もしあなたの彼がこのタイプだったら彼は非常に珍しい単純型良い人で近来稀に見る珍種である。絶対大切にしてあげて欲しい。)

普通は、「え?ホント?」とギクリとし、過去の自分の行動を考えるとそれもあり得るとすばやく計算し、

最初のギクリを悟られまいと笑顔を作って 「それは良かった」 とあなたを安心させるために嬉しいフリをする。

あなたが妊娠確認の経緯を物語ると、それにポジティブな相槌を打ちながらも、彼の頭の中は将来への不安で一杯になる。

男性にとって「父親」になるということは、殆どの場合「年貢の納め時」だからである。

それは彼にとって、次に購入するはずの夢の車がPorsche911やAudi TTではなく

ステーションワゴンもしくはSUVになることであり、シティのアパートをあきらめ郊外の「環境の良い場所」に

家を購入することを意味するかもしれない。あなたが働いている場合は出産・育児休暇中の経済的負担もカバーしなくてはならない。

そういう現実的な問題を頭の隅で考えながら、不安を押し隠して「それで体調はどうなの?」と

あなたを気遣ってくれたら、彼はあなたにとって最高のパートナーである。

けれど実際に彼の反応があなたの予想に反していたからといってがっかりしてはいけない。

ピーターパンだった彼が「大人の男=父親」になるためには少し時間が必要だ。

彼にとっては現実的な問題に対処する不安もさることながら、急激な身体の変化につれて着実に

母としての自覚を深めてていくあなたに対して、一人置いてけぼりをくらった子供のような

心もとなさを感じていることも多い。男性には身体的な変化はないのだから、女性が母親になるのと同じように、

9カ月の間に父親になるための精神的準備をするのは、人によってはそう簡単にいかない場合もあるようだ。

幸いなことに、出産準備のためのPrenatal Classはあちこちの病院などで行われており、

仕事の終わった時間帯にカップルで参加している人も多い。そこには大きなお腹を抱えて堂々としたプレ・ママたちと、

不安げな顔の「元ピーター」たちが大勢いて、お互いに同じ運命の輩と諦めの視線を交し合ったりしている。

妊婦たちが「フッフッハー」と出産時の呼吸法を練習し、それを後ろから支えつつお腹をさすったりするころには、

彼もすっかり「新米パパ」の仲間入りを果たしていることだろう。

(さかな)

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