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木の実幼稚園インターナショナルがSTEM保育の実績で銘板授与

シドニーのウィロビーにある「木の実幼稚園インターナショナル(Konomi Kindergarten International)」が、オーストラリア政府教育訓練省*より認可されている非営利団体「Little Scientists(リトル・サイエンティスツ)」から、幼児期STEM教育を取り入れた保育の研修と活用の功績を認められたとして、その「Little Scientists House銘板授与式」が、8月14日(火)、同幼稚園にてウィロビー市長同席のもと執り行われた。

「STEM」とは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)の頭文字をとった教育方針のこと。

オーストラリア政府教育訓練省は、国家イノベーション・科学アジェンダ政策**の一貫として「Little Scientists」が提供する「幼児期STEM教育者育成プログラム(Early-STEM Professional Development Program)」をサポートしており、同団体はオーストラリア全土の保育者や教育者を対象に、さまざまなワークショップを実施。子どもたち(主に3〜6歳児)の興味関心を広げ、科学の原理原則を楽しみながら学ばせることで、想像力や創造力・論理的思考能力・空間把握能力などを養う者を育成している。

今回、ウィロビー市長から銘板を授与された「木の実幼稚園インターナショナル」は、日本の学校法人今川学園によって1990年8月に創設された、シドニー初のインターナショナル幼稚園***。子ども、家族、保育者のすべてを大切に、家族との協力やふれあいを尊重することを保育理念に掲げ、日本人スタッフとオーストラリア人スタッフが協力し合い、両国の理念や価値観、伝統を活かし合いながら、さまざまなバックグラウンドを持つシドニーの子どもたちの豊かな育ちを願って日々取り組んでいる。

「幼児期STEM教育者育成プログラム」はその一貫として、日渡和枝園長とファーリー・ジャファリ(Fary Jafari)園長を中心として数年前から参加。「水・空気・工学・光学・数学・人体」と大きく6つのカテゴリーに分かれた質の高いワークショップで研修を積み重ね、保育者としての技量を磨き、10年以上の保育の経験を持つスタッフ、アン・フォスター(Ann Foster)さんが、プログラム実施実績に関する論文をまとめた。


(写真左奥が木の実幼稚園スタッフのフォスターさん、写真中央がLittle Scientistsコーディネーターのベイツさん)

銘板授与式では、「Little Scientists」コーディネーターのヘイリー・ベイツ(Hayley Bates)さんが、身近な紙コップとバネ状のオモチャのスリンキーを使い、園庭に集まった園児たちとともにSTEMのアクティビティを実演してみせた。園児たちは目を輝かせながら音の鳴る仕組みを知りたがり、積極的に質問や体験をする様子が見られた。

伝統的な正装に身を包んだウィロビー市長は、子どもたちに囲まれると笑顔をこぼしながら質問や銘板を手にしての記念撮影に応じ、その後ジャファリ園長の案内を受け、園内をじっくりと見学、園児たちの声にも快く応じていた

園児たちは引き続き、園庭でSTEMを取り入れたさまざまなアクティビティを、ベイツさんや保護者とともに満喫。遊びをベースにしたSTEMの保育は、ハンズオン(体験学習)が中心だ。視覚、感覚に訴えるアクティビティが充実しているのもならではだろう。


(写真向かって左から日渡園長、ウィロビー市長、ジャファリ園長)

「私たちは、幼児期教育の先駆団体であるドイツの『Haus der kleinen Forscher』を母体としています。ドイツ国内では児童教育の約46%の現場において、このプログラムが取り入れられています。私の子ども時代ですと、田舎で生まれ育つ限り、科学や数学といったSTEMの分野と触れ合える機会は限られていました。オーストラリアでは都市にも田舎にもプールが多くあって、オーストラリア国民は世界の中でも水泳に関心が高いですよね。私たちは、オーストラリア全土の子どもたちに泳ぎを楽しむようにSTEMの分野にも興味を持ち、何より楽しみながら学び、彼らの将来に役立ててもらえたら、と願っているんです」とベイツさんは語る。

「木の実幼稚園インターナショナル」のスタッフは、園児たちが自発的に考える力、解決する力を養うにはどうしたら良いだろうかと日々プログラムに取り組み、子どもたちが自分の力で仕組みや原理を考えながら、遊びという体験を通して思考力が育つようにケアしている。

例えば、園児から「どうしてなの?」と問われた場合でも、安易に答えを教えるのではなく一緒に考える姿勢を見せて子ども自身の思考をサポートする。日渡園長によると、過去には「幼稚園でペットを飼いたい」とアイデアを出した園児たちを「ペットを飼うためにはどうすればいいか」というプロセスに導くことで、園児たちは動物を飼う際に必要なものや費用、それらを捻出するための方法などを考えるまでにいたり、最終的には「園児たちでマフィンを作って来園した保護者を対象に販売する。その上で園長先生にもリクエストする」という行動を自主的に起こせたという。

そんな同園は、昨年2018年に「Better Business Awards 2018」を受賞幼児教育ケア部門においてのサステナビリティが認められた他、ソーラーシステムやウォータープラント、プラスチックフリーといった自然に優しい環境と生き方をすべての園児たちに提供している。

オーストラリアと日本の両国の文化・言語環境はもちろんのこと、環境保護やSTEMプログラムに取り組むその独自の保育によって子どもたちの発育と学習意識を高めている「木の実幼稚園インターナショナル」は、保護者からの期待も高く、今後もシドニーで暮らす日本人親子の未来をさらに豊かに育てていくことだろう。


(保育室の様子。2~3歳児、3~4歳児、4~5歳児の合計3クラスあり、園庭やプレイルーム、キッチンなどを含めて広々としてよく整えられた環境)

*Australian Government Department of Education and Training
保育から幼児教育、学校教育、高等教育、職業訓練教育、国際教育・研究にかかわる施策とプログラムを所管するオーストラリア政府の機関。

**National Innovation and Science Agenda
オーストラリア経済の主軸を鉱産物資源からイノベーションに移すべく、ターンブル政権発足直後の2015年12月に発表された政策。起業の促進や産官学連携の強化を通じて研究成果の商業化と生産性の向上を図り、経済を活性化させるのがねらい。

***木の実幼稚園
日本においては、社会福祉法人の今川福祉会による保育所、青い鳥学園(1967年創設、大阪府松原市)および学校法人の今川学園木の実幼稚園(1971年創設、大阪府松原市)を運営している。

木の実幼稚園インターナショナル(Konomi Kindergarten International)
所在地:2-4 Penkivil Street, Willoughby, NSW 2068
Tel:02-9967-2207
Web:http://www.konomi.com.au

Little Scientists
https://littlescientists.org.au

(取材・文:武田彩愛)

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