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「オー・ルーシー!」忽那汐里さんQ&A/日本映画祭

キャンベラ、アデレード、パース、ブリスベンに引き続きシドニーで開催された「Japanese Film Festival 2018/日本映画祭」が、11月25日(日)、クロージングフィルム『Oh Lucy!(オー・ルーシー!)』の上映をもって大盛況のうちに幕を閉じた。

シドニーで全31作品が上映された11日間の同映画祭メインプログラムでは、そのうち約半分の15セッションがソールドアウト、動員数は1万人以上にのぼった。最終日を飾った『Oh Lucy!(オー・ルーシー!)』も例に漏れず会場は超満員。本作の上演後には、節子(主演・寺島しのぶ)の姪・美花役を演じるシドニー出身の国際派女優・忽那汐里氏がスペシャルゲストとしてQ&Aセッションに登壇した。

『Oh Lucy!(オー・ルーシー!)』は、英会話教室で「ルーシー」になりきるうちに、鬱屈した日々から解き放たれ、アメリカ人講師ジョンへの恋心に暴走する43歳独身OL・節子の姿をユーモアたっぷりに描いたコメディドラマ。オフィスレディーを略したOLという日本独特の存在を体現する節子のリアルさと痛々しさと不器用さに、他人事とは思えない共感や辛さを覚える人も少なくないだろう。

本作で長編初監督にして、カンヌ国際映画祭を皮切りに国内外数々の映画祭を席巻する平柳敦子がメガホンを取り、主演の寺島しのぶのほか、南果歩、役所広司、『キャタピラー』のジョシュ・ハートネットなど日米を代表する錚々たるキャストが、ちょっぴりダメなキャラクターをそれぞれ魅力的にみせている。

その中で今回登壇した忽那汐里氏は、節子とは対照的に若さと奔放さを持ちながらも、まだ地に足のつかない姪の美花を演じる。監督には一度断られたという美花役にどうアプローチしたのか、女性監督との出会いから生まれ育った地シドニーでの思い出まで、日本映画祭Q&Aセッションの場で語った。

『オー・ルーシー!』忽那汐里さんQ&A

―本作は平柳監督の同名短編映画が基になっていますが、ご覧になって感想はいかがでしたか?

日本ではなかなか見ることがない、とてもユニークな作品だと思いました。敦子監督はもともと日本で生まれて、高校2年生のときに映像制作を勉強するためアメリカに渡った方で。彼女が日米どちらの文化にも触れていて理解があるからこそできた作品だと思います。日本とアメリカ両国で生活して、彼女にとっては自然な文化、またはちょっと変に感じることだとかをいろいろ観察しているんでしょうね。

―長編映画化されるにあたって、美花を演じるに至った経緯は?

短編はすでに見ていて、敦子監督とはミーティングルームで初めてお会いしました。私はすごく作品も面白いと思ったし、美花というキャラクターについて話し合う用意はできていたんです。でも、後々プロデューサーから私にこの役は合わないと言われて、それからオーディションを勧められました。

オーディションでは2つのシーンを実際にやって、夏の暑い日に、小さい部屋で汗をかきながら叫んでました(笑)。それから監督がそのオーディションの映像を見て印象が変わったみたいで、幸運なことに美花役のオファーをいただくことになりました。

―初めて組んだ監督とは、どのように役をつくりあげていきましたか?

敦子監督もそうですが、女性監督とご一緒すること自体が初めてでとても楽しみにしていたんです。実際に現場でお会いしたら、すごくストレートな方でしたね。どういう画が欲しいのかというのが明確にあって、とてもやりやすかったです。

この『オー・ルーシー!』は敦子さんが短編から脚本、監督をなさっているので、もちろん作品のことは完全に把握していて、演者としてはとても助けられました。

―現場の雰囲気はいかかでしたか?

敦子監督がとてもストレートな方ですし、主演の寺島しのぶさんとは年齢が近いこともあってお二人は本当の姉妹のようですごく熱心な現場でした。監督はアメリカを拠点に活動されているので、撮影の仕方でもいろいろと慣れないことがあったのが他の現場とは大きく違うことでしたね。

やっぱり日本とアメリカでは映画の作り方もかなり違って、私たちも監督のやり方に慣れようと、いろいろ挑戦してみたり。自分の殻を破るための、すごく良い経験でした。

―美花と母親の綾子は少し距離がある関係ですが、母親役の南果歩さんとの共演はいかがでしたか?

東京で撮り終えたあとにL.A.での撮影だったんですが、果歩さんとはL.A.ではじめてお会いしました。親子だとか近しい役の共演者の方とはできるだけ早くお会いして準備をしたいので、少し不安だったんですが、初めてお会いした朝にご飯とお味噌汁を持ってらっしゃる姿を見て、すごく自然で素敵で大好きになりました。

―アメリカと日本のプロダクションではどのような違いがありますか?

日本では、ハリウッドのように時間も予算もないのでカット数はできるだけ少ない方がいいんですよね。なのでスタッフも演者も自分のやるべきことにすごく集中して、1シーン1シーン進めていくんです。そういう現場でベテランの役者さんがいらっしゃる中、若手がひとりとなると「失敗できない!」ってすごく緊張してしまう。

アメリカの監督やプロデューサーは、いろいろ選択肢やテーマを考えながら基本的に18バージョン撮っていくので、キャラクターのつくり方は日本とは違いますね。その場その場でどう感じるか話し合いながらつくっていくので、どんどん変わっていくこともあるし、困惑することもあります。

なので、今回も何十カットも撮影したあとはみんなすごく疲れていました(笑)。監督が「休むときは休んで、出番まで温存して本番で100%を出して!」って言っていたのを覚えています。

―『オー・ルーシー!』の現場で印象的だったことはありますか?

美花が崖から飛び降りた後のシーンですね。海の中にいるのは実際に私なんです。このシーンは1カットで終わらせたいと言われていたんですが、敦子監督は満足する画が撮れるまで続ける方なので、冬のL.A.の海に50分近くは入っていました。崖の上から飛び降りて海の中の美花を撮った後、監督から「ちょっと不自然だから、もうちょっと顔を突っ込んで動かないでいて」と言われて。

でも波もあるし、動かないでいるのは無理があるじゃないですか。それで海の中に本当にすごく長い海藻を見つけて、動かないように2つの海藻を握りながら体を固定していました(笑)。そのシーンのときは「あと30分もここにいるのか……」と苦痛に思ってましたが、面白い体験でしたね。

―美花はメイドカフェの店員でもありますが、実際にやってみていかがでしたか?

1日中あの格好でいて、敦子監督は「にゃんにゃん」みたいな手の動きもつけ足してくるし、すごく恥ずかしかったです(笑)。でもあのシーン実は難しくて、寺島しのぶさん演じる叔母ちゃんに向けてやっているんですが、叔母ちゃんは特に喋ることもなくリアクションしているだけなので、自分が頑張ってペースをつくっていかなくてはならなくて大変でした。

―寺島しのぶさんとのご共演はいかがでしたか?

作品や脚本を大切にする素晴らしい女優さんで、今回のような低予算のインディペンデント映画の経験も豊富。現場では大変な日もあって、監督が毎回100%でやらなくて良いよとおっしゃっていたんですが、しのぶさんはずっと全力でやってらっしゃいました。こんな熱心でプロフェッショナルな女優さんは他にいないので、とても尊敬しています。

―本作では日本の文化や異文化コミュニケーションも描かれていますね。

東京は素敵な場所ですが、すごく忙しくてみんな何かに追われて自分を失っているような気がします。節子は独身で子供もいない、何も失うものが無いような人ですが、偶然出会った誰かによって生きる意味を見出していく。この映画を見た人も、日々うまくいかないことがあるかもしれませんが、節子のように日本を飛び出してもいいんじゃないかと感じてくれたらいいな、と思いますね。

―シドニーで生まれ育って、何か思い出はありますか?

シドニーでの学生生活はすごく懐かしいです。日本ではあんまり言えないですが、シドニーで育ってその後日本に行くことになったときは少し落ち込んでいました。シドニーで育ったことがいかに恵まれていたか、気づきましたね。

東京はあんまり自然もなく、高いビルに囲まれているような感じなので、シドニーのビーチや自然もすごく恋しいです。

Q&Aセッション後、シドニー在住の友人から花束が贈呈された

―いままでで一番難しかった役はなんですか?

李相日監督とご一緒した『許されざる者(Unforgiven)』(13年)のなつめ役ですね。1992年のクリント・イーストウッド監督の『Unforgiven』を、北海道を舞台にリメイクした作品で。

私は心にも顔にも大きな傷を負っている遊女の役だったんですが、会話はほとんどなくて、言葉や動きではないもので全てを表現しなくてはならなかったんです。共演者もみなさん素晴らしい方々で、ついていかなくちゃとすごいプレッシャーを感じていました。いままで演じた中でも特に難しい役でしたね。

―次回作は?

アダム・サンドラーやジェニファー・アニストンと共演したNetflixオリジナル映画*の撮影が終わって、来年公開されます。来年もまた別の作品の撮影に入る予定です。まだ詳しくは言えませんが、みなさんにお伝えできるのを楽しみにしています。

*『マーダー・ミステリー』:カイル・ニューアチェックが監督、ジェームズ・ヴァンダービルトが製作・脚本を担当した。Netflixで2019年に全世界同時配信予定。

忽那汐里

1992年、オーストラリア・シドニー出身。2006年、第11回全日本国民的美少女コンテストで審査員特別賞を受賞し、翌年TVドラマ「3年B組金八先生 第8シリーズ」で女優としての活動を始める。佐藤祐市監督作「守護天使」(09)で映画デビューを果たし、「許されざる者」「つやのよる ある愛に関わった、女たちの物語」(13)で、14年・第37回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞した。候孝賢監督「黒衣の刺客」、ウェイン・ワン監督ビートたけし共演「女が眠る時」などアジアの巨匠作品出演を経て「アウトサイダー」(17)「デッドプール2」(18)とハリウッド作品への出演も続く。18年公開の最新作「オー・ルーシー!」は、第70回カンヌ国際映画祭批評家週間に正式出品された。

Oh Lucy!(オー・ルーシー!)

英会話教室で「ルーシー」になりきるうちに、冴えない日々から解き放たれてアメリカ人講師ジョンへの恋心に暴走する43歳独身OL・節子の姿をユーモアたっぷりに描いたコメディドラマ。「キャタピラー」の寺島しのぶ、「パール・ハーバー」などで知られるハリウッド俳優ジョシュ・ハートネットら日米を代表する豪華キャストを迎え、カンヌ国際映画祭を皮切りに、国内外数々の映画祭を席巻する平柳敦子初監督作品。

 

取材:村上紗英・岩瀬まさみ 写真・文:村上紗英

Japanese Film Festival 2018/日本映画祭

「Japanese Film Festival 2018/日本映画祭」は、11月22日(木)から12月2日(日)までの12日間シドニーに引き続き、メルボルンの市内各地の映画館で開催中。

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Japanese Film Festival 2018/日本映画祭

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