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日系コミュニティ

ビジネスインタビュー①「シドニー日本商工会議所会頭に聞く」

 卯滝 勝  Masaru Utaki        豪州三井物産 シドニー支店長

1959年生まれ、大阪府出身、早稲田大学卒

1982年 三井物産入社(化学品部門)

1985年 英国修業生(Oxford大学)

1986年 三井物産ダブリン事務所勤務

1994年 シンガポール駐在

2002年 三井電子薄膜(香港)有限公司社長

2013年 豪州三井物産シドニー支店長

2015年 シドニー日本商工会議所会頭に就任

 

日豪両国首脳の緊密ぶりが同盟関係のより一層の強化を示し、EPAの施行やTPPの大筋合意など、今後も経済関係を中心に日豪の密接で特別な関係が継続していくことが予想される。オーストラリアにおける日系企業のビジネス展開など、今後の見通しをシドニー日本商工会議所会頭の卯滝 勝・豪州三井物産シドニー支店長に聞いた。

 

商工会議所会員企業に見る最近のオーストラリア経済

現在、会員企業数は160社余りです。資源・エネルギー関係の会社数は頭打ちで、最近の傾向としては内需型・サービス産業の会社が増える傾向にあります。これまでの資源輸出国一辺倒という見方から、高所得者が多いというメリットを活かした「国内内需」を見込んでの産業、業種にスポットライトが当たって来ているのだと思います。

 

資源ブームの終息と今後

資源一辺倒のビジネスモデルから多様化して広がりが出てきているというのはむしろ歓迎すべき流れです。資源ブームに涌く中、精査されない非効率な投資が多数成されて来た感が否めませんが、今後は投資基準が厳しくなる中で日本企業が生産性向上のためのビジネスであるとか、省エネや環境に対応したビジネスモデルの提案を通じてオーストラリア経済に貢献していく余地はかなりあるものと思われます。

「資源の次は何だ」という議論は常に行なわれています。教育、医療、観光なども大いに注目されていますが、ニュー・サウス・ウェールズ州では特にインフラ関連の投資が増えることが予想され、今後日本企業もこのチャンスを取り込んでいく企業が増えるのではないかと考えています。

豪ドル安についてもむしろ歓迎すべきで、輸出産業にとっては競争力が増しますし、観光業では外国からのIn-Bound観光客が増えます。教育産業では留学生が増え、いずれも外貨の獲得にはプラスに働きます。資源価格の低迷が続く中で、あまり注目されていませんが、この「豪ドル安」はオーストラリア経済を維持・牽引している大きな要因のひとつではないでしょうか。

EPAの施行とTPP大筋合意

日豪のEPA(経済連携協定)が施行されて、関税については、即時撤廃されたもの、段階的に削減されるもの、と色々ありますが、特に関税が即時撤廃となった品目については一部既に効果が顕著に現れてきているものもあります。最近の貿易統計を分析するとオーストラリアから日本への輸出品目では、バルクワインが即時撤廃になりましたので、今年の上半期は前年同期比で287%に達しています。牛肉は段階的な削減ですが、それでも昨年同期比で約50%増加しています。即時撤廃の品目の中では更に砂糖、チーズ、サーモンなどが前年比で2桁増となっているようです。

逆に日本からオーストラリアへの輸出品目では、宝石・貴石類やゲーム機、更に細かなところでは嗜好品であるゴルフクラブセット、釣り用のリールなども増えています。今後徐々に効果が出てくる品目が増えるものと思われます。

TPP(環太平洋経済連携協定)の大筋合意に関しても日豪の経済界では歓迎しています。今後ある程度の低成長が予想されるオーストラリア経済に与える好影響もかなり大きいと思われます。ただし、発効までにはまだ紆余曲折があるかもしれません。が、日豪のEPAが先行して施行されているので、これが旗頭として果たす役割が大きいのではないかと思います。その意味で、日豪両国がこのTPP締結、更にはその先のRCEP(東アジア地域包括的経済連携)の合意をリードできる、そういう立場にあるので

はないかと思います。

アジア市場とオーストラリア

世界経済、特にオーストラリア経済は中国及び成長するアジア抜きには語れません。が、最近のPwCの調査によると、全オーストラリア企業のうち、アジアにプレゼンスを持っている企業は僅かに9%と非常に小さく、またオーストラリア企業の経営者の3分の2が、近い将来において今後もアジアに進出する考えは無いとされています。このような状況下、アジア諸国に大きなプレゼンスを有し、価値観を共有する日本企業がこれらオーストラリア企業と組むことで、積極的にアジアに進出していくべきだとの提言がされているのですが、まさにその通りだと思います。今後日豪の企業が一緒にアジアに進出するケースが増えてくると、これは日豪関係の新たな展開にも繋がります。日豪の関係は「特別な関係に入った」との発言が両国首脳により成されましたが、今後このような重層的な関係構築が益々重要になるものと考えます。

商工会議所の活動について

最後に商工会議所の活動について宣伝させてください。シドニー日本商工会議所は、①会員相互の親睦、②共通の利益の増進、そして③日豪間の友好親善および経済・文化関係の進展、を3つの目的として活動を行っています。これら目的を達成するため、講演会やセミナーの開催をはじめ、特に他都市の商工会議所にはない「部会活動」に力を入れていて、部会別に興味の対象を絞った勉強会、視察会等を行なっています。会頭就任にあたっての所信表明においても、今年はこの「部会活動」を更に活発化し、商工会議所の活動を盛り上げていきたいとのお話をさせて戴きました。現在、自動車、電子機器、金融・投資、機械・建設、資源・エネルギー、観光・運輸・通信・生活産業の6つの部会がありますが、これら6部会の部会長とも面談を重ね、更なる充実した活動を提言していければと考えていますので、会員企業の皆様には是非これを最大限に活用し、各社の企業経営に活かして戴ければと考えております。

 

 


Level 2, 37 Bligh Street, Sydney NSW 2000

Phone: (02) 9223-7982

Fax: (02) 9223-5382

Email: info@jcci.org.au

www.jcci.org.au

会員数:162社・団体(2015年11月現在)

シドニー日本商工会議所は1958年7月、会員相互の親睦および共通の利益の増進を図り、併せて日豪経済関係の発展に資することを目的に、「シドニー日本商業会議所」として設立されました。

設立当初の会員は25社(大半は商社)でしたが、日豪経済関係の進展に伴い会員の業種・数が徐々に拡大してきたことから、1974年7月、名称を現在の「シドニー日本商工会議所」に変更しました。

1987年4月には、社会的信用性の向上・確保を図るため「協会法人化法1984」に基づく認可法人となりました。また、1990年7月には、会則の目的の条項の中に「文化関係の進展に資する」ことを追加し、さらに1993年7月には、オーストラリア企業にも加入の門戸を開くなど、日豪関係や企業活動の幅の広がり等に対応して、その組織・運営のあり方を変化させてきました。

主な活動として、役員会、業種ごとの6つの部会、3つの委員会等で、①意見・提言活動、②各種勉強会、セミナー、講演会、視察会、懇談会、③情報提供・広報活動などを実施しています。これらの活動を通じて会員間の親睦を深め、共通の利益の増進を図ることはもとより、日豪間の友好親善および経済・文化関係の発展・強化に向けて貢献を続けています。

(1)普通会員

シドニーおよびその周辺地域に事務所を有する、(a)日本の法的組織、(b)日本の法的組織の子会社である豪州の法的組織、(c)代表者が日本人である豪州の法的組織

(2)特別会員

日本国の特別法に基づいて設立された法人で、シドニーおよびその周辺に事務所を有する組織

(3)準会員

シドニーおよびその周辺地域に事務所を有し、日本に関連する経済活動を営む豪州の法的組織


 

 

 

 

 

 

 

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