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オーストラリアの法律における『STD(性感染借金)』とは?

皆さんは『STD(Sexually Transmitted Debt)』という言葉を聞いたことがありますか? 一般的に『STD』というと「Sexually Transmitted Disease=性感染症」をイメージする人が多いと思いますが、オーストラリアの法律における『STD』は「性感染借金」といって、パートナーの借金の返済責任が自分にまわってくるという意味になります。

原則として、借金は借りた個人に帰属するもので、ローン契約に署名していなければ、パートナーや配偶者が肩代わりする必要は全くありません。しかしながら、お金を貸す側はリスクを減らすために、借主個人以外にも共同借主もしくは連帯保証人として署名を要求することがあります。

多くの場合、借主は男性で被害にあうのは女性です。よくある例としては、彼氏が車など大きな買い物をする際に、パートナーである彼女にもローン契約に署名するように頼むケースです。ここでは例として男性を借主として説明します。

最悪の場合は自分が全て返済しなくてはならない

お金を借りたい男性は上手くごまかしたり、説得したり、または強要したりして、女性に署名するよう仕向けます。女性にとっては、相手を愛している、信頼しているからこそ、拒否するのが難しいのは当然です。

しかしここで重要なことは、あなたは単に立会人として署名しているわけでも、形式的に署名しているわけでもなく、共同で返済責任を負うことに同意していることになるのです。これで相手が何らかの理由(失職や病気など)で返済ができなくなった場合、あるいは借金を踏み倒してしまった場合、貸し手はあなたに返済を要求してきます。

それもあなたの責任は半分ではなく全額です。相手がどんなに甘い言葉で署名をお願いしてきたとしても、最悪の場合は自分が全て返済しなくてはならないという覚悟を持てないのであれば、絶対に契約書に署名してはいけません。

ただし、共同借主や連帯保証人としての署名がなされたものであっても、場合によっては無効と主張することが可能な場合もあります。例えば署名を強要されたり、説明を受けないまま署名をした場合などです。しかし、こうした法的手段を講じて成功することは稀であると考えるべきで、まずは自己防御に万全を期すことが得策であるといえるでしょう。

あなたとの共有資産にその回収の手が及ぶ可能性も

自分やパートナーには当てはまらないと考える人もいるでしょう。しかしながら、同棲を始めるなどして共有口座を作ったり、共有資産を持つようになると問題は更に複雑になります。ローン契約に署名していなくても、返済が滞った場合には貸し手は相手の資産から回収するとして、あなたとの共有資産にその回収の手が及ぶ可能性もあります。

カップルの間で喧嘩になる一番の理由はお金に関することです。お金について話し合うのには勇気が要りますし、話題にするのも難しいかもしれません。しかしどんなに好きな相手でも、金銭感覚の合わない相手との付き合いには慎重になるべきで、借金がある相手と知らずに結婚してしまい、後で後悔しても遅いのです。

真剣な付き合いをする際には、お互いが財政状況についてオープンに話し合うことがとても重要です。どんなに見た目が良く、高級な服や時計、車を所有していて、羽振りがよさそうに見えても、蓋を開けてみたら借金だらけの場合もあるのです。

但し、借金にも良いものと悪いものがあるので、その目的を精査する必要はあるでしょう。例えば大学の学費など、将来のキャリアを作るために必要な借金もあります。悪いものとしては、クレジットカードの未払金やギャンブルなどが挙げられます。

財政状況の透明性を維持すること、お互いがリスクについて理解しておくことが大切

また、お互いの財政状況について常に透明性を維持するよう努めることも大切です。大きな買い物をする際には、返済できるのか、担保になるものについてもお互いがそのリスクについて理解しておく必要があります。たとえ借金の借り手があなたではなくても、担保に入っているものがあなたとの共有財産であれば、それを失う可能性もあるということです。

金の切れ目が縁の切れ目、とならないよう、真剣なお付き合いであればあるほど、慎重な対応が必要なのは言うまでもありません。

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