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法律/ビザ

オーストラリアでの不動産売買/手続きの流れと確認すべき点

一般消費財を買う場合とは異なり、不動産を購入する際には書面による契約が必須です。一般に売主側が作成する契約書に基づいて売主と買主が不動産売買を完結させる一連の業務がConveyancingです。

※Conveyancing:不動産所有権を移転するという意味の法律用語

一般に契約書は売主側が作成し、買主側は精査する側となります。買主は精査業務を弁護士に依頼することが一般的で、買主の依頼を受けた弁護士は、買主が購入するか否かの決定を行うために必要な情報を全て得るべく行動します。言いかえれば、弁護士の役割は「買おうとしている家が買主の期待する状態であるか」という買主の質問に答えるということなのです。

近年まで売主は物件の状態について保証する法的義務はなく、従って物件に関する情報を買主に開示する義務はありませんでした。この原則はラテン語の「caveat emptor」という言葉で表されるもので、英語では「Let the buyer beware」、つまり購入する物件の状態を精査確認するのは買主の責任であるとしたものです。

現在は売主の情報開示が一部法律で義務付けられてはいますが、それでも契約締結後に見つかった物件の欠陥については、たとえ買主が申し立てやそれらを根拠に契約を破棄する法的権利を持っていたとしても、それらを行使することは現実には非常に困難であるといえます。そのために可能な限り契約締結以前に調査レポートなどを関連機関より入手し、十分に精査することが肝要です。

契約締結の概念とクーリングオフ

契約書の精査や必要情報収集が終了し買主が購入することを決めたらいよいよ買うことを確約し、同時に売主はその買主に売ることを確約します。これが契約締結です。契約締結は、売主と買主がそれぞれ同じ契約書に署名し、買主が売主に通常契約価格の10%を頭金をとして支払った時点で成立します。契約書に文書で示されていない限り契約締結前の約束事は何の拘束力も待ちません。

逆に、契約締結以降は、購入を取りやめることは当然できませんし、売主側の同意が得られないと契約事項の変更等を行うことも一切できません。したがって、契約締結以前に、(1)必要なレポート(調査書類)を全て入手、(2)ローン申請が承認されていることを確認、(3)契約書の内容説明を弁護士から受け、条件についての交渉を全て完了、しておくことが必要となってきます。不動産取引業者(エージェント)が「sold(売約済み)」の看板を物件に掲げるのはこの時点です。

しかしながら、同じ物件に興味をもっている他の人々との競争などさまざまな理由で購入を即決する必要があり精査に十分な時間を割くことができない場合も多々あるのが現実です。そうした場合、少なくともクーリングオフ権が与えられていることの確認が重要となります。クーリングオフ権利期間内であれば契約締結後も購入を取りやめることができます。

ただし、契約金額の0.25%ほど(パーセンテージは州によって異なる)の支払い義務が発生するので、この期間に弁護士の助言を求め、必要調査やローン手続きの調整などを行うことができます。

注意すべきことは、オークションでの購入の場合にはクーリングオフが対象外となることです。つまり上述の3点はオークション前に完了しておく必要があると言うことです。

決済までの流れ

契約締結後、買主は物件の購入価格にしたがって印紙税を収める義務があり、同印紙税は州によって支払い期限がさまざまです。またオーストラリアで初めての不動産購入者で永住者または市民権保持者に限り印紙税の減額や免除などの特典が州政府から得られる場合もあります。こうした特典申請を締結後に弁護士が依頼を受けて行うことも多々あります。

決済とは売買契約が完了する時点のプロセスのことで、この時点で売主は売却価格を受取り、同時に買主は所有権を手にします。通常契約時に決済日が指定されますが、実際にはさまざまな理由で指定の日に決済が行われないことも珍しくありません。しかし、決済が遅れることで買主のみが不利な状況に立たされることのないように売主側と締結前に交渉しておくことが大切です。

決済には、売主、買主それぞれの代理として弁護士が臨みます。売主側の抵当権が設定されている場合、そして買主が融資を受けるとした場合はそれぞれの関係者も決済に立ち会います。買主が融資を受ける場合は、新たな権利書が発行される為に必要な売主からの書類一式は全て買主のローン提供者に渡されます。新しい権利書は買主の名義で発行されますが、ローンが完済されるまでローン提供者が抵当権設定者として保管することになります。

決済が終了したら鍵は通常決済後売主のエージェントから入手します。また、支払った頭金は通常売主側のエージェントのコミッションが差し引かれて、決済後売主に支払われることになります。

決済を機にカウンシルなどへの家主変更通知が行われることになりますが、こうした手続きもConveyancingの一環として決済に立ち会う関係者によって行われることになります。

近年Conveyancingの電子化が進んでおり、こうした決済手続きはオンラインで行われるようになりました。オンライン決済は許認可を与えられた弁護士などが行えるシステムとなっており、因みに現在VICやNSW、QLDなどの州でオンライン決済が義務付けられています。

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