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オーストラリアでの遺言書作成時によくある質問③

今回は、シドニーの「山本法律事務所」に寄せられるご質問の中でも、遺言書作成時にお問い合せの多い内容について取り上げて解説します。

オーストラリアでの遺言書作成時によくある質問③

今回はスーパーアニュエーションの扱いについて解説します。

スーパーアニュエーションの扱い

勘違いされている場合も多いのですが、遺言書で分配を決める資産の中に特別に記載がない限り、原則としてスーパーアニュエーションは遺言書でカバーされる遺産には含まれません

スーパーアニュエーションにはTrusteeがいますので、故人の死亡時の残高や生命保険についてはTrusteeが分配先を決定する裁量権を持っています。一般的には、”扶養家族”とされる、配偶者や子供、また故人に扶養されていた人物が受取人の資格を持ちます。

皆さんがご自身のファンドのウェブサイトにアクセスし、簡易的に相続人を指名することはできますが、こういった方法は「non-binding nomination」と言い、Trusteeを拘束することはできません。つまり、Trusteeの判断で故人が任命した人とは別の人物に支払いを行うこともあり得ます。

一方、「binding nomination」を行うと、Trusteeはその任命に従わなくてはなりませんが、誰でも受取人に指名できるのではなく、扶養家族の定義を満たすカテゴリーの人に限定されます。そのため、配偶者や子どもがいない場合、指名できる人物がいないためEstateを指名することになります。そうすることで、スーパーアニュエーションの資産が遺言書で任命された管財人の管理下に入ることになり、遺言書に従った分配が行われることになります。

実際にあった判例

最近の判例では、母親のスーパーアニュエーションが全額再婚した夫に支払われ、前夫との間の息子に支払われなかったことに対し、息子が裁判を起こしたものの裁判所は息子の訴えを却下した、というニュースがありました。このケースでは、死亡した母親はスーパーアニュエーションに対し、再婚した夫を相続人に任命しており、電話を含めて2度その意思を示していました。

この任命は上述したTrusteeを拘束する「binding nomination」ではありませんでしたが、Trusteeが相続人を決める際に重要な判断要因となったと説明しました。裁判所はまた、訴えを起こした子どもは経済的に母親に依存しておらず、スーパーアニュエーションが貰えなかったことで困窮しているわけでもないことも今回裁判所が息子の訴えを却下した理由に挙げています。

息子はさらに、母親と再婚相手の夫は互いを相続人とする遺言書を作成していましたが、母親の死後、夫がすぐに遺言書を書き換えて夫の子ども達を相続人としたため、母親の残した遺産も含め全てが夫の前妻との子どもにわたることになり、あまりにも不公平であると訴えました。息子の主張は確かに心情的に理解できますが、残念ながらこの夫の行動には法律上全く問題はありません。

まとめ

子どものいる再婚同士のカップルにはこういった問題が起きるリスクがありますので、自分の希望する人物に必ず財産がわたるようにするには、遺言トラストなどを準備する、生前に財産を渡しておくなども検討すべきでしょう。

もし確実に自分の希望する人物にスーパーアニュエーションを遺したいのであれば、「Binding Nomination」をしておくことです。ファンドによっては「Binding Nomination」は3年ごとの更新が必要なタイプと無期限のタイプがあります。ご自身のファンドがどちらのタイプなのかを確認し、ご自身の希望が確実に叶うよう準備しておくことを忘れないようにしましょう。

遺言書は自身の財産をどう分配して欲しいかという意思を表明できる唯一の書類です。

100%思った通りに遺産が分配されることを担保できるかどうかは、状況により異なりますので、専門家への相談をお勧めいたします。


なお、本記事は法律情報の提供を目的として作成されており、法律アドバイスとして利用されるためのものではありません。

Yamamoto Attorneys(山本法律事務所)

「山本法律事務所」は、2007年にシドニーCBDにオフィスを設立し、ビクトリア州の顧客ニーズにも応えるべく2017年よりメルボルン・オフィスを開設しました。

オーストラリアで25年以上にわたり豊富な経験を持つ山本弁護士を筆頭に、数々の経験、実績を積んだ弁護士が在籍し、積み重ねてきたノウハウにより、当事務所は誇りを持ってお客様への思いやりと文化に配慮したアプローチを実現します。英語と日本語の両言語において、最高の法的解決策をお客様にアドバイスできるブティック・ファームとして、各法律に精通した弁護士が対応します。

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