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乾燥大陸・オーストラリアを取り巻く状況について

オーストラリアは年間を通して降水量が少なく、世界の6つの大陸(ユーラシア大陸・アフリカ大陸・北アメリカ大陸・南アメリカ大陸・オーストラリア大陸・南極大陸)の中で、南極大陸を除き、最も乾燥した大陸と言われています。

特に2019年は、平均気温が過去最高、平均降水量は過去最少という乾燥化が深刻になった年となり、各地で起きた大規模な森林火災によって2000軒以上の住宅が焼失、10億匹以上の動物が犠牲になったことは記憶に新しいところです。このような状況の中、オーストラリアに住むうえで“乾燥化対策”は避けては通れない問題であると言えるでしょう。

そこで今回は、乾燥大国とよばれるオーストラリアで実際に起こっている問題、そして乾燥化を防ぐためにできることをご紹介します。

本記事は2020年8月現在の情報を元に執筆しております。情報の取り扱いには細心の注意を払っておりますが、万が一内容に誤りがあり、訂正・追加・削除の必要がある場合、当社で調査の上、速やかに対応いたします。当社の上記請求・お問い合わせ先は下記の通りとなります。
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なぜオーストラリアは乾燥しているのか?

過ごしやすい気候と言われているオーストラリア。日本と比べ湿気が少なく、空気が乾燥しているためイヤな蒸し暑さを感じることは少ないでしょう。

ではなぜオーストラリアは乾燥しているのでしょうか。

降水量が少ない

亜熱帯高圧帯(中緯度高圧帯)に位置するオーストラリアでは、ほとんど雨が降らず、年間降水量が500㎜以下(日本:約1700㎜/世界平均:約800㎜)の地域が国土の7割を占めています。特に、シドニーは年間340日が晴天と言われるほど晴れの日が多い都市として有名です。

蒸発散量が多い

亜熱帯高圧帯は天気が良く水分の蒸発が盛んな地帯であり、年間降水量の85〜95%(沿岸部:1000〜2000㎜/年、内陸部:1500〜3000㎜/年、日本:600〜900㎜/年)は蒸発・蒸散してしまいます。降水量が少なく蒸発散量が多いため、現在、NSW州にあるダムの約半数では貯水量30%以下の状態が続いているのです。

温暖化による気温上昇

気温が上昇すると水分蒸発量は上がります。また、庭の散水や給水の頻度が増えるため、水の使用量も増加します。さらには、火災や砂漠化を引き起こす原因になり、気温上昇 ⇒ 乾燥化 ⇒ 火災、砂漠化 ⇒ 乾燥化の悪化 ⇒ 火災の増加、砂漠化の進行という負の連鎖を生み出します。

乾燥化による環境への影響

「洗濯物が乾きやすい」など良い面も多くありますが、乾燥の度合いによっては環境に大きな影響を与え、人間の生活や生態系を脅かすこともあります。現実にさまざまな問題が起きているのです。

雨不足による干ばつ

干ばつとは、長期間雨が降らない、もしくは雨が少ないことによって大地が乾燥し、著しく水分が不足している状態、つまり日照りのことを指します。

オーストラリアでは、2016年に大雨が降ったあと、2017年以降は雨が少なく乾燥した日が続き、2018年の半ばには各地で大干ばつが起きました。その後も少雨と気温の上昇は進み、2019年は最も暑く雨の少ない年を迎えました。その結果、NSW州は特にひどい干ばつに襲われ、90%以上の地域が現在も深刻な水不足に直面しています。

こうした干ばつは農業にも大きな打撃を与えています。農業大国と言われるオーストラリアでは放牧が盛んですが、干上がった大地では牛や羊の餌となる牧草が育たず、十分な飼料を確保することが困難になります。そのため、食肉や乳製品、小麦など農作物の生産量は減少し、農業全体に大きな影響を与えています。

砂漠化の進行

水分は生命の活動に必要不可欠であるため、極度に乾燥した大地では草木が育たなくなります。そうして不毛となった大地はますます劣化し、砂漠化していきます。

砂漠化は、長期にわたる異常少雨や干ばつ、森林火災がもたらす極度の乾燥化・劣化によって進行します。現在、オーストラリアの約4割は、砂漠もしくは砂漠に近い気候状態にあると言われており、今後砂漠化が進行する可能性もあります

また、森林伐採や灌漑(かんがい)農業による塩害も砂漠化進行の原因となります。森林伐採により土地の保水力が弱まると、雨水が地下まで浸透し、地下水は土中の塩分と一緒に地表まで水位を上げていきます。本来草木は根っこから水分を吸収して育ちますが、塩分の含まれた水分はむしろ根元から水分を奪ってしまうため、草木は結果的に枯れてしまいます。さらに、一度地下から上がってきた塩分は、水分が蒸発しても土中に残り続けるので、その土地は草木の育てることができない状態になってしまうのです。

同様に、水分蒸発の激しい乾燥した地域での灌漑農業は、地下深くから上がってきた水が蒸発する過程で地表近くに塩分を溜め込むため、食物の育たない不毛な土地を生み出します。

火災を誘発する

オーストラリアでは毎年のように森林火災が発生しています。特に、2019年にオーストラリア各地で起こった火災は、世界の二酸化炭素排出量を2.2%増加させるほど大規模なものでした。

こうした森林火災は、乾燥した空気に水分を奪われた枯れ草や枯れ木同士がぶつかって摩擦を起こし、その摩擦で生じた小さな火が周囲の木々に燃え移ることによって起きます。特に、オーストラリアの森林の大部分を占めるユーカリやティーツリーは「精油」を含有することでも知られています。ユーカリは引火性があり自然発火を起こしやすい「テンペル」という成分を放出し、ティーツリーの表皮は紙のように燃えやすいという特性を持っているため、火災が発生しやすく、火が広範囲に及びやすいのです。

また、強い風が吹く12月~2月にかけては火が風に煽られて瞬く間に広がり、大規模な火災を招きやすくなります。こうした火災は草木を焼き払い再生が困難な状態にしてしまうこともあるため、砂漠化にもつながります。

その他、BBQや焚火、放火、たばこの不始末など人為的要因も森林火災の原因として挙げられます。実際、森林火災のほとんどは人の不注意によって起きており、乾燥した環境下では、ほんの小さな火種から大火事に発展することも少なくないので十分に注意しましょう。

乾燥化に対するオーストラリアの取り組み

乾燥化対策としては、主に水資源確保と気温上昇抑制が重点課題として取り組まれ、その他森林火災や干ばつに対する個別事案の対応も実施されています。

水資源確保のための対策

オーストラリアでは、水資源の管理・利用を州政府が統括していますが、総合的な水対策の方針として国家水憲章(National Water Initiative)が国によって策定されています。

その具体的な達成目標には、水利権市場の拡大、水利用状況の監視・情報公開、環境に配慮した水利用計画の策定、水利権の適切な分配などが掲げられ、限られた水資源利用の効率化を焦点に、水のリサイクルや使用制限、家庭用雨水タンクへの助成に加え、節水技術の開発や水のインフラ整備が実施されています。

気温上昇を防ぐアプローチ

温暖化により気温が上昇することで乾燥化が深刻になっているため、温室効果ガスのひとつである二酸化炭素の排出量を減らす施策にも積極的に取り組んでいます。

オーストラリアは、石炭や天然ガスの埋蔵量が世界最大級の資源大国であり、国内でも電力の7〜8割が火力発電(うち石炭6割)によって供給されています。石炭を利用する火力発電は二酸化炭素排出量が多いため、全世界の排出量に対してオーストラリアが占める割合は1.3%と比較的少ないものの、国民一人当たりでみた排出量はアメリカに次いで世界第2位なのです。

そのため、現在、オーストラリアでは火力発電から再生可能エネルギーへの転換が取り組まれており、国内発電量に占める再生エネルギー発電量は、10年間で11%から23%へと増加しています。

森林火災・干ばつに対する個別的対応

政府は、干ばつや森林火災で被害を被った住民をはじめ、被災した地域コミュニティ、十分な収入が得られなくなった農家や農家ビジネスに依存する中小企業、観光業などを対象に経済支援を実施しています。また、野生動物の保護や森林の回復のための支援活動にも取り組んでいます。

個人で取り組めること

乾燥化の問題に対処するためには、オーストラリアに住むひとりひとりが問題意識を持ち、行動することが大切です。

節水

オーストラリアでは水はとても貴重な資源です。そのため水道料金も高めなのです。「シャワーは5分」といった話を聞いたことがあるかもしれませんが、実際多くのオーストラリア人が徹底して節水に取り組んでいます。

  • 洗濯物はなるべく溜まってから一気に洗う
  • 手洗いではなく食洗機を使用(食洗機がない場合は、シンクにお湯を溜めて食器を洗う)
  • 使ってないときはこまめに水を止める
  • 雨水を溜めておき、ガーデニングなどに利用

意識してみると想像より水を使っていることに気づくかもしれません。水道代の節約にも繋がるので、身近にできる節水から意識して始めてみましょう。

ボランティアへの参加

困った人がいたら助けるという文化が根づいているオーストラリアでは、ボランティア活動が盛んです。環境保護だけでも、消防隊員のサポートや環境保全の手伝い、草木を植える活動など多岐にわたっており、ボランティアをしながら現地の方との交流ができるのもポイントです。

自治体や保護団体のサイトから直接応募するか、ボランティアの求人サイトを利用して探す方法が一般的です。経験やスキルの必要なものから初心者でも気軽に参加できるものまで色々あるので、気になるものがあれば参加してみてください。

<ボランティア>
Conservation Volunteers (環境保護団体)
動物保護や森林保全などに取り組む自然環境保護団体
Seek Volunteer
ボランティア求人サイト(環境保護に限らず幅広い種類のボランティア情報が閲覧可)

<募金>
NSW Wildlife Information Rescue and Education Service
オーストラリア最大の野生動物救護団体への支援
NSW Rural Fire Service 
消防ボランティアへの支援

乾燥化による人への影響

日本にいると冬場に肌の乾燥が気になるところですが、オーストラリアでは季節を問わず常に乾燥しているため、絶えず肌の乾燥に気を配る必要があります。

成人の場合、体重の約65%は水分が占めており、そのうち15%は皮膚に集中していると言われています。この貯水タンクのような役割を果たす皮膚は、外部と水分をやり取りし、体を健康に保つ働きを担っています。また、外部と水分をやり取りする際には、角質を覆う皮脂膜がバリアの役割を果たし、過剰な蒸散を防ぎ、アレルゲンや外部刺激から肌を守ってくれるのです。

しかし、乾燥した空気にさらされ続けると、このバリア機能が低下し、加速度的に水分が蒸発、結果として水分不足による乾燥肌を引き起こします。乾燥肌は、ふけや小じわなどの原因となり、放置しておくと赤みや湿疹、皮が剥けてカサカサになってしまう場合もあります。

肌の乾燥を防ぐには

日差しも強く空気も乾燥しているオーストラリアでは日ごろから肌の乾燥対策をしておくことが肝心です。

保湿

肌の乾燥を防ぐためには、適切なスキンケアが一番です。一年中乾燥しているオーストラリアでは肌の乾燥対策は常識です。薬局に行けばずらりとスキンケア用品が並んでいるので、自分の肌に合ったものを探して使ってみましょう。

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水分補給

皮膚は体内水分量の約15%を保有しているので、体内に水分が足りていなければ当然肌もカサカサになります。肌の乾燥が気になる人は、ローションや化粧水などの保湿に加えて水分をこまめに補給することを心がけてみてください。

オーストラリアの乾燥化にまつわる問題まとめ

もともとオーストラリアは環境問題に対する関心が高い国です。それでも自然にまつわる問題はさけられません。オーストラリアの乾燥化は、干ばつや大規模な森林火災などを引き起こし、近年ますます悪化傾向にあります。この状況を改善し、美しい自然やユニークな生態系を守っていくためには、オーストラリアがどのような問題に直面しているかをより多くの人が理解し、意識することが問題解決の第一歩になるでしょう。

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