英語では発音が難しかったり、電話口で綴るのが大変だったり、特殊な意味の言葉に聞こえてしまったり、と自分の名前に関してあらゆる場面で面倒な思いをしたことがある方はきっと筆者だけではないと思います。オーストラリアでは比較的簡単に名前を変更することができます。今回は本名と異なる名前を使用することについての法律についてお伝えしたいと思います。
ニックネームをそのまま名刺に使用している人を多く見かけることと思いますが、こうした日常的に異なる名前を使用することは、詐欺目的や他人を陥れる意図がないことを前提にすれば、法律上何の問題もありません。ある日いきなりメガスターの名前を自分の通称として名乗り始めたとしても、相手のわずかな動揺をやり過ごしさえすれば、あとは新しい自分として普通に生活をすることができます。但し、残念ながら銀行では本名でしか口座を開設することはできません。
日常使用だけでは飽き足らない場合は、正式に名前を変更することも可能です。正式に名前を変更するには各州の登記所で変更登録手続きを行うことになります。州によって資格要件、必要書類、手続き費用等が異なりますが、以下に例としてNSW州の登録手続きについてまとめます。
NSW州での登録手続きは、1996年4月1日から全てthe Registry of Births, Deaths and Marriagesで行われています。変更登録申請者が以下のいずれかに該当する場合、申請資格を有することになります。
上述のいずれかに該当することを確認した上で、Registryのウェブサイトから必要フォーム(Application to register a change of name for an adult)をダウンロードし、申請書類を作成します。その際、18歳以上であること、身元確認と住居確認ができる書類、そして配当する場合には犯罪歴の提示が必要とされます。申請者がオーストラリア国外で出生した場合、NSW州に継続して居住していることを証明する必要があります。証明は住所が記載されている銀行明細書、公共料金請求書などですが、3カ月以内に発行され、さらにさかのぼって3年間分の書類が必要になります。(例 2023年に申請する場合、2022、2021、2020年のものも含めた4枚の書類が必要となります。)
変更が承認された場合はBirth Certificate(出生がNSW州である場合)、あるいはChange of Name Certificateが発行されます。あらゆる機関に対する名前変更の事実通知は発行されたCertificateをもってして行いますが、変更後速やかに通知する必要がある機関としては、銀行、クレジットカード会社、Medicare Officeやプライベート健康保険会社、そして雇用主などです。その他の機関(Electoral Commission(選挙管理局)やATO(国税局)も含めて)は関連手続き(たとえば選挙や税務申告)を行う時点で通知すれば十分であるとされています。不動産を所有している場合でも、不動産登記事項が何らかの理由(たとえば抵当権設定や売却など)で変更される場合において初めて名前変更の事実を通知すればよいとされています。
使用が禁止されている名前もあります。例えば、長すぎるもの、英語で公序良俗に反する言葉に聞こえるもの、王室との関係をイメージさせるもの、シニア、ジュニア、一世、などの称号などです。また詐欺目的であることが疑われる場合にも申請は却下されます。又、申請内容は却下された場合でも詐欺防止の観点からRegistryで保管されることになります。
さらに、過去にオーストラリア全州で3回名前を変更している場合、あるいは最後の申請が12ヶ月未満である場合には、特殊な事情があり、その事情が正当なものであると認められない限り承認されません。なお、当然のことながら、日本国籍保持者で戸籍の名前と身分証明書上の名前との整合性がなくなる方の場合は日本国内で当然の問題が生じ得ることでしょう。
なお、18歳未満の未成年者の名前変更に関しては、親や監護責任者が手続きを行いますが、対象者が12歳以上である場合は本人の承諾が必要となり、加えて出生証明書に記載されている親の承諾が必須となります。両方の親が記載されている場合は離婚別居に関わらず両方の承諾が必要とされます。但し、両方の親が記載されている場合でのいずれかが死亡している場合は存命している親の単独申請が可能となります。もし他方の親の承諾が得られない場合は家庭裁判所からの命令が必要となります。命令の申し立てを受けた場合裁判所が考慮する要素は、①子と他方の親との関わりあい、②子自身、あるいは子の周りの人物に与える影響、③名前が変わることによって子自身が受ける困惑、羞恥心、などがあり、あくまでも子供自身の利益を中心にして決定します。
婚姻によってどちらかが名前を変更することを強制する法律はありません。なお、婚姻を機に名前を変更した場合には、関係当局への通知には通常、婚姻証明書で十分とされます。また、離婚した場合、婚姻名を継続使用すること、旧姓に戻すこと、いずれも可能です。なお旧姓に戻す場合には、離婚を証明する書類が必要となります。一般に、オーストラリアで離婚した場合には家庭裁判所からの離婚命令、日本での離婚の場合は戸籍謄本になりますが、関係当局によっては異なる書類を必要とする場合もあります。
なお、本記事は法律情報の提供を目的として作成されており、法律アドバイスとして利用されるためのものではありません
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