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夫婦やパートナーが同時に亡くなった場合の相続について

「山本法律事務所」で遺言書作成を受任する場合、夫婦やパートナー同士で同時に作成するケースが大半です。その場合、遺産の管財人、相続人としてお互いを指名し、配偶者が亡くなってしまう場合に備え、子ども、兄弟姉妹、両親などを代理の管財人や二次相続人に指名してもらうのが一般的です。

今回は、事故などで二人が同時に亡くなった場合の相続について解説します。

夫婦やパートナーが亡くなった場合の相続

例として、共有名義の銀行口座と自宅不動産を持ち、それぞれの単独名義の銀行口座や株式などを保有している夫婦のケースを考えてみます。この夫婦には子どもはなく、夫には母親と弟が、妻には両親と姉がいるとしましょう。遺言書ではお互いを管財人、相続人として指名しています。

もし夫が病気で死亡し、妻が残された場合には、夫の単独名義の遺産は遺言により妻がすべて相続します。金額によっては裁判所による遺言検認手続きが必要になるでしょう。

夫婦の共有資産については遺言書に関係なく、生存する共有名義人である妻が夫の死亡を登記所や共有口座を持つ銀行に通知することで、自動的に妻の単独名義に変更されます。これを「Survivorship」と言います。

夫婦やパートナーが同時期に亡くなった場合の相続

しかし、夫婦がほぼ同時期に死亡した場合はどうなるでしょうか。

どちらが先に死亡したのかわからない場合、NSW州の法律上、年齢が上の人物が先に死亡したと推定するルールがあります(Presumption of survivorship: Conveyancing Act 2006 NSW section 35)。VIC州にも同様の規定が存在します(Property Law Act 1958 VIC section 184)。

また、相続法では、相続人は遺言者より30日以上長く生存しなければ遺言者よりも前に死亡したと扱われ、相続人の資格を喪失する規定が、NSW州とVIC州ともに存在します(Section 35 of the Succession Act 2006 NSW; section 39 of the Wills Act 1997 VIC)。この規定は、遺言書にも相続の条件として記載されており、相続人は死亡した人物より30日以上長く生存することで相続人の権利を有することになります。

したがって、夫が先に病死し、妻が夫の死後29日後に事故死した場合、妻は夫より先に死亡した扱いとなり相続人となることはできません。つまり、夫の財産は妻へは行かず、次の相続人である母親と弟に分配されることになります。

実際には妻は夫の後に死亡しているのですが、この規定がなければ、夫の遺産をまず妻に分配する手続きが必要になり、その後に妻の相続手続きを行うことになり、夫の遺産について二重の手続きが発生してしまいます。30日生存しなくてはならないという条件を入れることで、こうした実務上の無駄や煩雑さを回避することができます。

上述の例では、妻は夫より先に死亡したという扱いとなり相続権がなくなったため、夫の単独名義の遺産は妻の次に指定された生存相続人が相続し、妻の単独名義の遺産についても、夫の次に指定された生存相続人が遺産を受け取ることになります。これは夫婦が同時に死亡した場合も同様です。

夫婦やパートナーが同時期に亡くなった場合の共有財産

注意しなくてはならないのは、共有財産の扱いです。上述したような「Survivorship」の原則が該当しませんので、共有財産は遺言に従い分配されます。

配偶者同士が30日以内に死亡した場合、年長の人物が先に亡くなったと推定することが決められていますので、共有財産は若い方の配偶者の遺産となります。つまり、年長配偶者の生存相続人は共有財産の分配を受けることができず、若い方の配偶者の生存相続人だけが共有財産を受領することになります。年長配偶者の相続人も共有財産を相続できるようにするためには、配偶者同士が相続人を完全に同じように指定しておくことが必要です。

この夫婦の例では、それぞれの遺言書で配偶者の次の相続人として夫の母と弟、妻の両親と姉の5人全員を指名します。そうすれば、夫婦がほぼ同時に亡くなった場合、単独名義資産、共有名義資産全てが5名に分配されることになります。

遺言書は定期的に見直しを

いずれにしても、遺言書は定期的に見直し、状況の変化に合わせて書き換えを行うことが重要です。

そうでないと、予期せぬ突然の死により、相続すべき人物が相続人に含まれておらず故人の実際の遺志に反する分配が行われ、裁判をせざるを得ない状況に発展するリスクがあります。裁判費用は遺産から拠出されることになり、最終的に相続人が受け取れる遺産額が大きく目減りするような結果になってしまうことも大いにあり得ます。


なお、本記事は法律情報の提供を目的として作成されており、法律アドバイスとして利用されるためのものではありません。

Yamamoto Attorneys(山本法律事務所)

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