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シドニー日本商工会議所生活産業部会「リベリナ地区農業施設・視察会」を開催

生活産業部会「リベリナ地区農業施設・視察会」を開催

 -日本人が開拓した土地に根付く農業スピリッツ-


 シドニー日本商工会議所生活産業部会(部会長=木嶋亨・オーストラリア伊藤ハムフーズ社長)は2006年11月24日、NSW州のリベリナ地区にある農業施設の視察会を開催、12人が参加した。

 今回の視察会は、豪州の第一次産業の現状を把握するために行ったもので、同地区内にあるPacific Fresh社、Sunrice Centre、Rockdale Beef社の3社を訪問した。

▼「日本に売れるものを作る」ことが成功の秘訣

近氏からパッキング工場の品質・グレードチェックについて話を聞く 最初の訪問先となったPacific Fresh社は、10人の地元栽培農家と日本人・近正廣氏の計11人の共同出資により1993年に設立したオレンジのパッキング工場。国内はもとより日本や欧米、アジアへと輸出を伸ばしている。

 同社の強みは、農薬・農園管理から、グレード・品質管理、パッキング管理、輸送管理、マーケティングまでを一貫して行っているところにある。従来、各栽培農家でやっていたパッキング作業を同社が引き受けることで、量的、品質にばらつきがあった地元栽培農家の弱みの解決につなげた。消費者のニーズを生産者に伝えることで、栽培農家をオレンジの生産・質の向上に集中させ、同社が各農家から購入するオレンジを何段階ものグレードチェック・品質チェックにより、等級別にパッキングして国内向けや日本を含む世界各国に輸出している。現在の売上の4割が国内、2割が日本への輸出、残りの4割が欧米等への輸出となっている。

最後のチェックは女性の目で 同社取締役の近氏は、「日本に売れる規格を目指している。日本に売れれば、どこにでも売ることができるため、必然と在庫やゴミがなくなるんです」と話す。食の安全性が求められている昨今、同氏はどこよりも早くトレーサビリティーの仕組みづくりを完成させたいとしている。「トレーサビリティーは、どこのものが、どこにどうやって売れているのか、というだけでなく、クレームに対しても原因追究することができる。これは、マーケティングにもつながるし、生産者の品質向上・意識改革にもつなげていけることができる」と語る。

 また、今後の事業展開については、「日豪では、季節が反対。そして、日本の農業技術は高度である。この日本の技術を豪州で活かせば、両国で1年中おいしいフルーツを食べ続けることができる」と、日本の果物の生産に意欲的だ。

▼日本のパイオニアによって生まれた豪州の米作

サンライスのお米を試食 次に、豪州の米作の現状を把握するために、Sunrice Centre訪問。Sunrice社の豪州米作に関するオリジナルビデオを見ながら、豪州の米づくりの歴史を学んだ。

 豪州で米作が始まったのは、1906年に遡る。愛媛県出身の高須賀穣氏が豪州に移民し、かつては乾燥した荒野が広がっていたこの土地に灌漑システムを完成させ、約5年の時を経て、1911年、日本から輸入した25種類のモミのうち、3種類の収穫を実現させた。その後、NSW州立ヤンコー農業試験場で米の交配種が進められ、1924~25年、米の商業生産に成功し、以降、豪州の米作りの基盤が整っていった。こうした日本人のチャレンジにより、この地域のコメ生産が飛躍的に伸びていったという背景に、日本と豪州との農業のつながりの大きさに参加者から驚きの声も出た。

▼新たな牛肉づくりへの挑戦

ロックデール・ビーフ社の宮城氏から同社の戦略をヒアリング 視察先の最後となったのが、Rockdale Beef社。同社は、伊藤ハムフーズが1988年、日本などの輸出用牛肉の肥育から解体、輸出までを行うことを目的に設立した現地法人。広大な土地に肥育施設、牛の餌を作る農場、さらには、牛の解体を行う施設までが併設されている。肥育施設・解体施設が一体となった牧場は、豪州でも2つしかなく、最大5万3,000頭の肥育が可能な日本では想像のつかない規模の施設だ。具体的な事業内容は、豪州国内の牧場から買い付けた牛を肥育・解体し、日本などの輸出用、国内向けに分けて販売するもので、国内用、海外用に肥育の期間を分け、生産が行われている。

牛の解体工場を見学 現在、豪州は世界第2位の牛肉輸出国で、生産量のうち60%が輸出市場になっている。その約45%が日本向けに輸出されており、豪州は日本にとって資源だけでなく、牛肉においても重要な貿易相手国となっている。

 同社の宮城昌弘氏は「豪州の牛肉はグラスフェッドが主体だったため、日本人が好む、やわらかい肉、霜降り肉、といった脂ののった牛肉の生産が難しかった。しかし、輸出用の牛肉生産の仕組み・ノウハウが蓄積されていること、安全性が高いことなどから、豪州事業者に作れないのなら自分たちで、との意気込みで牛肉輸出の拠点を豪州に置き、日本向けのグレインフェッド(穀物肥育牛肉)を飼育することにした」と同社設立の背景を話す。周りが農業地域のリベリナ地区を進出先に選んだのも、餌の供給しやすい土地柄にあった。また、農業地域への進出は、地元の住民にとって兼業を可能にし、地域にあった雇用体制(3勤4休)にすることで、従業員の定着率は高く、安定雇用につながった。

リベリナ地区農業施設視察会の参加者 今後の事業展開については、「現在、日本国内における牛肉消費の52%がオージービーフ。それだけ、安全性の面で他国よりもオージービーフは支持を得ている。狂牛病などで牛肉離れの進んでいる日本で、コストに見合ったおいしい牛肉をどうやって提供していくかが鍵」と話す宮城氏。施設内に農場を作り、牛の餌の安定供給に努めるなど、同社の新たな挑戦を始まっている。

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