寝てばかりだった赤ちゃんがだんだん起きている時間が長くなり、少しずつ筋肉もついて首がすわり、「お座り」ができるようになってくるころ、
そろそろ母乳以外の何かを与えたくなってくる。
育児書を読むと少しずつ果汁を薄めたものなどを飲ませてもいいことになっているので、好奇心一杯の母は早速試してみたくなる。
りんごのすりおろしなどの果汁に水を加えて薄め、スプーンで赤ちゃんの口にもっていく。
スプーンで液体を口に入れられた赤ちゃんはちょっと不思議そうな顔をしている。くちびるを動かし、味わっている様子。
恐る恐る2さじ目を近づけると、顔を横に向けて、「いや」という意思表示。
OK。今日のところはやめておきましょう。また明日、別の何かで試してみよう。
こんな風に、離乳食の導入は少しずつ始まっていく。赤ちゃんによって、離乳食をいともあっさり受けいれる子と、
なかなか受けいれなくて母親がありとあらゆる食べ物を使って孤軍奮戦するケースとがある。
私の子供たちはどちらかと言えば、後者だった。二人とも母乳が大好きで、母乳以外のものは殆ど受け入れてくれない。
普通は、1歳前後には母乳やミルクから殆ど離乳食主体の食事に切り替わるはずが、
二人とも完全に離乳するのに2歳近くまでかかってしまった!
それでもいずれは、「普通に食べ物を食べる日」がやってくる。初めての子供だと、育児書などに、
「この頃の赤ちゃんは・・・〇〇が出来るようになる」などと書いてあって、自分の子がそうでないと不安になることもあるが、
育児書にある時期はあくまで「目安」で、少々遅いとか早いとかいう個人差は大したことではない。
最初は何とか「離乳」させようと、果物をすったりつぶしたり、野菜を軟らかく煮て裏ごししたり、やわらかいおかゆを
作って小分けにして冷凍したりする離乳食作りに余念なく頑張った私は、頑張った甲斐もなく
赤ちゃんがほとんど離乳食を受け付けてくれないので、最後は文字通り、さじを投げ出した。
そして、さじを投げた後、もう頑張ってあれこれと離乳食を作るような特別な努力はやめて、夫婦で食べる食事の中から、
赤ちゃんが食べられそうなものを選んで、その場でつぶしたりして少し食べさせてみる、という程度にした。
肝心なのは、赤ちゃん一人をベビーチェアに座られて特別な離乳食を与えるのではなく、
家族で食卓を囲み、親が食べているものの中から与えてみることだと思う。例えば、野菜の煮物からやわらかい
にんじんやお芋をつぶして食べさせてみる。みそしるのうわずみを少し飲ませてみる、などである。
おかゆだけはいつも作り置きしていたが、その他は親の食事の中から適当に、というやり方が功を奏したのか、
それとも「親と同じもの」を食べることに興味を示してくれたからか・・・。
頑固な母乳主義者だった私の子も、やがて普通に、野菜も肉も魚も好き嫌いなく食べる子供に育っていった。
(さかな)