オーストラリアの入ったグループDをどのように見ていますか？

私はヨーロッパ人なので、ドイツのサッカーは私にはすべてお見通し。選手全員のこと、彼らがどうやってプレーするか、彼らができないこともすべて私は把握している。ドイツは世界で最強国の一つ。初戦がとても重要なのは明らかなこと。1勝2分をねらって5点稼がなければならない。最終戦で決着が付くだろう。

ガーナはアフリカの一国だから、大会に向けていい準備をしてくるだろうし、アフリカの国としてグループリーグを突破させたいと思っているからプレッシャーがかかった状態になり、われわれを苦しめる存在になるだろう。セルビアに関してはあまり知られていないが、世界屈指のリーグでプレーするいい選手を揃えているし、ヨーロッパ予選も非常によく戦ってきている。

このグループは非常に難しいとみている。われわれはベストの状況でワールドカップに臨まなければならないし、かなり厳しい戦いを強いられるだろうが、私は乗り越えられると非常にポジティブに捉えている。

日本の入ったグループEをどのようにみているか？日本が16強入りする可能性は？

うーん、かなり厳しいと思うよ。われらオーストラリアにとってもかなり厳しいのと同じだよ。抽選においては、われわれアジアの国々は恵まれていないんだよね。オランダはドイツと同様優勝候補の一角だから難しい。日本がオランダとの親善試合で善戦したのは知っているよ。あの親善試合でオランダの動きはまぁまぁというところだったけど、ワールドカップでは素晴らしいプレーをすると思うよ。

デンマークに関しては、大物選手はいないけどタフなチームで、勝つのが難しい相手だ。でも日本がデンマークに善戦するチャンスはあると思う。

カメルーンはガーナと同じでアフリカの国だから、彼らのプレーを予測するのはやや難しい。個々の選手も非常に素晴らしいしね。アフリカの国だから、準備もきちんと行ってくるだろうし、気候やアフリカ特有の高地でのプレーにも慣れているはずだから、簡単な相手ではないだろう。

日本にとって最大の難敵はオランダです。

オランダ人で、かつ日本のサッカーを熟知するピムさんですが、もしピムさんが日本代表監督であればオランダ戦に向けてどのようなアドバイスを出しますか？

岡田監督はオランダとの戦い方を良く知っていると思うよ。オランダ─日本の親善試合をDVDで観たけど、日本は本当によく戦っていたという印象を受けた。特に前半はオランダより日本の方がいいプレーをしていたからね。つまり前半が日本にとってキーポイントということだね。既に岡田監督は心得ていると思うけどね。あの試合での日本の問題点は前半のいい動きを得点につなげられなかったということだけだ。監督としては常に、チームに得点を入れて欲しいものだからね。日本はオランダ相手に戦術的にもいいプレーをしていたよ。90分間ずっと戦術を仕掛け続けるよりも前半集中して巧みな戦術を仕掛ける、これが重要になってくるんじゃないかな。

オランダでは日本代表はどのように見られていますか？弱小国としてみているのでしょうか？

そんなことはないと思うよ。本田、中村、長谷部など4〜5人のヨーロッパ拠点の日本人選手は知られているけど残りの選手はほぼ知られていないから、ヨーロッパでは日本のサッカーがほぼ認知されていない。だから、これまでだったら「その通り」と言うかもしれないけど、オランダが日本と親善試合をしてからは見方が変わったと思う。あの親善試合については誰もが「オランダは前半ラッキーだったよ」って口にしていたよ。逆に日本にとってはちょっとアンラッキーだったけどね。オランダが日本を見下すことはないと思うよ。

南アフリカで行われたワールドカップ抽選会の際、ピムさんと岡田監督が歓談していた際に、オランダ代表ベルト・ファンマルバイク監督がやってきて加わったが、そこでファンマルバイク監督が「日本の監督は誰？」と失言する一面があったと伺っていますが、その時の状況を教えてください。

（苦笑いしながら）私は両監督の中を取り持って互いに紹介してあげたんだけど、ファンマルバイクがすぐに岡田監督が誰かを思い出せなかったんだ。ワールドカップの抽選会だし、その夜は非常にたくさんの人が集まっていたから、ファンマルバイクがなぜ思い出せなかったかは理解できるよ。彼もその夜に何が起きるかなんて想像もしていなかっただろうしね。でも、彼はすぐに岡田監督のことを思い出して、「ああ、われわれは対戦したよね。会っていたよね」って言っていたよ。思い出すまでにかかった時間はたったの2秒。そう2秒だけだよ（笑）。私は、このことが日本でどう報じられたかは知っているよ。でもこれは起こりうることだし、もちろんファンマルバイクも申し訳なさそうにしていたよ。

私がその時、びっくりしたかって？あの夜には数千人が出席していたんだ、その全員が誰かを思い出すなんてできないし、なぜ彼が思い出せなかったかは分かるから、驚いたりすることはなかったよ。

ワールドカップ後の去就について、何かプランはお持ちですか？

クラブフットボールに戻ることも考えていますか？

まだ分からないよ。今は何も考えていない。オーストラリアでの仕事を楽しんでいるからね。いいメンタリティーを持ち合わせた素晴らしいプレーヤーを指導しているし、オーストラリアサッカー協会も非常によく働いている。優秀なスタッフを擁するとてもプロフェッショナルな組織だし、私もいいスタッフに囲まれているから、万事順調なんだ。しかし、監督は時として新たな挑戦も必要。自分が新たなことに挑戦したいかどうか確認するのはワールドカップ（が終わる）まで待とうと思っている。2年半監督を務めた後に、「新たな挑戦がいいかも」と思うかもしれない。新しい選手、新しい国、新しいリーグ…今は分からないね。まだ5カ月も先のことだし。

私はオーストラリアという素晴らしい国のために素晴らしい仕事をしている。「この国から去りたい」とか「十分だ」とかそういった気持ちはまったくない。でももしワールドカップ後にこの仕事から去ることになったとしても、それは「何か別のことをする必要があった」ということだ。韓国代表監督の仕事を07年インドネシアで行われたアジア・カップの後に終えたときも同じだった。韓国には2年半いたし、あの時も「何か別のことに挑戦する時期だ」と思ったんだ。新しい挑戦をする「かも」しれないね。

Jリーグに再挑戦するかって？「タ・ブ・ン」ね。私がJリーグや日本のサッカーにものすごく興味を持っているということは周知のことだ。だから「ノー」なんて決して言わないよ。でもまだ監督として10年ぐらいのキャリアが待っているから、いつというのは分からない。10年の間に日本に戻ることはあると思うよ。

シドニーでの生活はいかがですか？オフの日にすることなどはありますか？

シドニーは私が見てきた中で最も美しい街。だからシドニーに住んでいるということはファンタスティックなこと。海もあるし、山もあるし、人々はとてもフレンドリーだし、生活自体もとてもリラックスしている。現地メディアは、韓国やヨーロッパ、日本のものに比べたらとても小さいし、私のライフも楽でゆったりしたものだよ。私のシドニーで最も景色の素晴らしいサバーブのひとつに住んでいるので、散歩にもよく出かけている

旅行にもたくさん出かけた。ブリスベン、ハミルトン島、ポート・ダグラス、メルボルン、パース…ウルルにも行ったよ。エアーズロックは暑すぎて登山できなかったから、周りを歩いただけだったけど。ある国に居住している時はできる限りその国を観て回ろうと努めている。そうすることで、人々や文化をより理解できると思っているからね。オーストラリアはとっても大きな国だ。数日オフがあると、いつも何か新しいものを見に行こうとしているかな。

ピムさんがオーストラリアで気に入っていることは何ですか？

ここの気候がとても気に入っている。寒い気候が好きじゃないんだ。私はオランダ出身なんだけど、寒い気候は苦手。それからここの自然が好きです。緑豊かだし、これもオーストラリアで気に入っていることの一つかな