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失敗は成功の母?

1月19日に、コダック(イーストマン・コダック社)が破産申請をしました。つまり経営が思わしくなく、倒産したというわけです。事業再編と債務整理をして新たに経営を立て直すつもりのようですが、はたして昔日のごとく復活なるのでしょうか。

コダックといえば、世界で初めてロールフィルムやカラーフィルムを発売したメーカーです。あの黄色いパッケージのフィルムは皆さんご存知だと思います。それに、世界で初めてデジタルカメラを開発したメーカーでもあります。

ところがフィルムメーカーとして世界に強固な地盤を築き上げていたコダックにとって、フィルムのいらないデジタルカメラは必要ないということで、商品開発を止めてしまいます。フィルムメーカーの悲しい性ですね。決断すべきときにいままでの成長神話(フィルム)にこだわってしまったわけです。

その点富士フィルムは、フィルムに偏らずに多角化を進めて、デジタルカメラやレントゲンのフィルム、コピー機などのほか、化粧品や健康食品まで製造・販売しています。そんな経営方針が明暗を分けた形になりました。

ちなみにアカデミー賞の授賞式会場は、「コダック・シアター」というのですが、今回の破産申請のため、来年から会場変更されるようです。

そんなコダックもいまではデジタルカメラを扱っていますが、遅きに失した感が否めません。

ところでそのデジタルカメラですが、1975年に、イーストマン・コダックが世界初のデジタルカメラを発明しました。(写真)

画像サイズは100×100の1万ピクセルで、撮影した映像をテレビに映すこともできたそうです。かなり大きいもので、いまでは考えられない代物ですね。

その後、一般向けのデジタルカメラとして普及した初めての製品が、1995年発売のカシオ「QV-10」です。(写真)

 CASIO Digital camera QV-10 ©Noische

96枚撮影ができて、折からのWindows 95ブームで普及し始めたパソコンに画像を取り込むことができました。これを境にデジタルカメラが大きく広まっていきます。

実はカシオはその前に「電子カメラ」(1987年)を発売していました。ところがまだまだ画質が悪かったり、大きかったり、そもそもテレビで画像を見る方式のため、手軽な写真というわけにはいきませんでした。それにちょうどその頃、同じ価格帯で8ミリカメラが登場したため、同じ値段なのに動画が撮れないカメラに手を出す人もなく、大失敗します。

このカメラの開発者によると、当時、2万台を販売しましたが全く売れず、最後はワゴンセールで投げ売り状態だったそうです。それでも売れなかったといます。で、開発チームは解散し、二度と「カメラ」などという言葉は使えないほど、会社の信頼をなくしてしまいます。

しかし、どうしても心残りの技術者は、なんとか汚名挽回と日の目が再びくることを夢見て、ひそかにカメラの開発を進めます。なんだか「プロジェクトX」のような展開ですが、はたして7年後に、ついに「QV-10」を発表するわけです。

この開発の裏話が面白いのですが、当時開発したものはビデオデッキほどの大きさで、重くて、熱を出してしまうものでした。温度が上がって3分もすると機能しなくなったそうです。そこで熱を冷ますためにファンをつけて、ファインダーの穴から熱を逃がしました。つまりカメラのファインダーから熱が出てくるというわけです。

そのためファインダーが使えなくなったので、代わりに液晶テレビの開発チームから液晶画面を借りてきて、それをカメラに取り付けて画像を確認することにしたわけです。

現在のデジタルカメラの液晶画面がこうして誕生したわけです。まさに失敗は成功の母ですね。偶然の出来事が発明につながったわけですが、これは偶然ではないんですね。不断の努力があればこそ、何か起きたときでもそれを生かす道が開かれるわけで、結果として新製品を生み出すわけです。

このQV-10の成功によって他社もデジタルカメラを発表し、ついにフィルムカメラとデジタルカメラの販売台数が逆転し、一眼レフカメラも含めて、いまやデジタルカメラの時代となりました。

いまでは当たり前に、デジタルカメラや携帯カメラを使って写真を撮っていますが、開発の裏にはさまざまなドラマがあるんですね。

このQV-10を開発した技術者は、いま、直径1ミリ以下の胃カメラを開発中です。それも自身が健康診断で初めて胃カメラを飲んで、そのつらさの体験から、もっと飲みやすいものを開発しようと考えたそうです。まさに必要は発明の母ですね。近いうちに細くて飲みやすい胃カメラが登場しそうです。

(水越)

 

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