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開いててよかった?それとも閉まっていても平気?

オーストラリアでは、お休みの日に働くのは良くないこと、という雰囲気があります。休息の日は大事で、家族一緒にお休みを楽しむという考えです。

そのため、週末に営業するお店などで働く従業員は、週末勤務の手当が給料に上乗せされます。雇用法では、週末勤務の場合の時給金額が平日の場合より高めに設定されています。これは「penalty rates」というように、“みながお休みする日に働かされるのは大変だ。罰則として雇用主は従業員に賃金を多く払いなさい”ということです。

働く側はお金が多くもらえるということで喜ぶ人もいますし、それでもお休みが大事だとばかりに週末勤務をしない人もいます。雇用主は人件費のことを考えるとやってられないというところでしょう。

ところでオーストラリア人にとって祝日は大事なお休みです。キリスト教の考えから日曜日は安息日として、家族でお休みを楽しもうという考え方が一般的です。当然、週末や祝日、夕方5時過ぎには商店は営業してはならぬという法律がありました。

オーストラリアに来た当初、そんなこととはつゆ知らず、金曜日に特に買い物もしないで迎えた土・日、何も買い置きがなく、お店も閉まっていて、非常に慌てふためいた覚えがあります。

そんな古き良き時代も去ってしまい、いまや世界的な消費社会に私たちは生きています。お休みだろうが、なんだろうが、お店は営業して少しでも売り上げを伸ばそうとし、私たちも、「いつでも、どこでも、なんでも手に入る」社会を求めています。

ですから休日に営業を禁止するような法律はどんどん改正されてきたのですが、シドニーのあるニュー・サウス・ウェールズ州では、クリスマスの翌日の祝日「ボクシング・デー」は、いまだに商店がオープンすることを禁じています。(実際には個人商店の小さなコーナーショップが開いていて、それほど困ることはないのですが…)

他州では法改正で緩和しているこの規制を、先月、ニュー・サウス・ウェールズ州政府も法改正すると発表しました。すでに州議会の下院では改正案が可決されました。来月1日から始まる州議会で引き続き討議される予定です。

下院では労働党とグリーンズが反対し、過半数を握る自由党・国民党の保守連合が賛成しました。ただし上院では、全42議席のうち、労働党とグリーンズが19議席で、保守連合も19議席、賛否同数です。そうなると2議席ずつ持つキリスト教民主党と漁師・釣り師党の動向が鍵を握っています。そしてキリスト教民主党は、本来のキリスト教的な考え方から、休日に働くことを認めるような法改正には反対の立場を示し、漁師・釣り師党と連携して反対する動きを見せています。

「家族の福利」を優先するのか、それとも「生活の利便性」を優先するのか、はたまた働く者の「休日出勤手当」を優先するのか…、オーストラリア人にとっては大問題です。

古き良き伝統も、社会の発展、変遷とともにその変化を受け入れて、次第に変わってきているのが現実です。昔の生活スピードでは、いまの社会の生活に合わなくなっています。その分、いきおい、無理な生活を強いられているのではないでしょうか。「多様化」した社会では「多様な生き方」はできないのでしょうか。

自分自身で選択した多様な生き方ならまだしも、社会に強いられた生き方には無理があります。「利便性」を求める社会は人々に受け入れられやすいのですが、利便性に振り回されることのないようにしたいですね。

(水越)

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