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『博士の愛した数式』と生徒の愛した科目

いまシドニーの12年生(高校3年生)は、大学進学を目指してHSC(Higher School Certificate)の試験と向き合っています。

オーストラリアでは11・12学年は進学準備学年で、必修科目は英語のみで。ほかは好きな科目を選ぶことになります。大学には入学試験がなく、シドニーのあるニュー・サウス・ウェールズ州では、HSCという州統一試験が入学試験を兼ねています。11・12年生時の評価(2年間に取得した単位数と課題の成績)とHSCの結果を元に、偏差値が出されます。大学では専攻コースごとに入学基準となる入学指標UAI(Universities Admission Index)を決めていて、偏差値が基準以上なら希望コースに入学できるというわけです。

ですから日本のように、各大学がそれぞれ入学試験を実施して、試験結果の成績順に合格者が決まるということではないのです。

現在、HSCの受験科目は10科目。この教科を選択履修して、12年生が大学進学を目指して受験するわけです。

15年前と比べて、今年のHSCの科目別受験者数は、英語や古代史、宗教が増えていますが、数学がかなり減少しています。数学が嫌いで、勉強しない子が増えているようです。

数学を受験しない生徒は1995年にはわずか8.3%だったのが、2011年には24%に増加、年々、この増加傾向が続いています。学校によっては、数学を教科から外してほかの教科と取り替えるところもあるほどです。

現代史や経済学、地理も選択する生徒数が減少傾向にありますが、地理の人気のなさは世界的な傾向のようです。現代史は人気はあるのですが、古代史がもっと人気が高くて相対的に生徒数が減少しています。また、社会科学系の科目では、法律が人気が増えて経済が少なくなっています。最近の傾向は、職業訓練科目の人気が高まっていることです。また、科学系の科目が人気のようです。

科目は、あまり選択する生徒が少ないとなくなる運命にあり、15人以下の生徒数が3年続くと教科から外されます。数学もそんな運命にあるのかどうか分かりませんが、算数から数学になって、途端に興味が失せた経験から、生徒たちの気持ちがわかるというものです。

数式を見ても単なる数字と記号の羅列としか見えない私にとっては、数式の美しさを理解できるはずもなく、数学をなんだか苦手としてきましたが、でも『博士の愛した数式』(小川洋子)を読んでからというもの、フェルマーの最終定理が分からなくても、素数や友愛数、完全数など、数字の面白さを知ってしまい、現代数学の入門書を読んでいるところです。

子どもの数学離れがあったとしても、「どうりで買い物でお釣りの計算が出来ないんだ」となるわけでもなく、あまり大きな問題ではないですが、でも、数字に苦手意識をもってしまうのは問題ですね。

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