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457ビザが変わるの?

いわゆるビジネスビザとして知られる「457ビザ」が、いま、ニュースをにぎわせています。

このビザは、会社が海外から労働者を呼び寄せて雇用するためのビザで、最長4年間の一時滞在ビザです。

毎年、家族も含めて、約10万人の人がこのビザを取得してオーストラリアにやってきます。

よく言われるのが、海外から労働者を連れてくることで、オーストラリア国内の労働者に就労の機会を与えていない、というものです。

そのため、以前は労働市場調査ということが、ビザ審査の条件になっていました。

つまり、会社が必要としているポジションに適当な人材をオーストラリア国内では求めることができません、そのため、海外から人材を雇うことにします、ということです。

いまでは、社員に対してきちんとトレーニングの機会を与えているか、オーストラリアの労働条件を確実に遵守しているか、労働市場の相場である給与を与えているか、基準以上の英語力があるか、などが条件とされています。

そんな457ビザですが、今年9月14日の連邦選挙を前にして、ギラード首相が、457ビザ制度の更なる厳格化を打ち出したものだから、一挙に、与野党挙げてのビザ論議に発展してしまいました。

要は、ギラード首相が選挙を前に、労働党の支持母体である労働組合に良い顔をするために、外国人労働者の受け入れに対して、野放しにはしないよという姿勢を見せるためのパフォーマンスということです。

特に、大量に外国人労働者がこの457ビザを取得して働いていた資源業界が、現在、縮小気味でかなりリストラや解雇が続いていて、それほど労働力が必要とされなくなっているにも関わらず、全体の457ビザ申請数が伸びているのはおかしいというものです。

選挙向けのパフォーマンスと言われても仕方のない今回の457ビザ厳格化は、一方、大企業の支援を受けている野党にしてみれば、外国人の雇用は会社にとっても都合の良いものだから、そんな大企業の思惑を背景に、懸命に与党を批判することで、こちらも選挙を前にパフォーマンスをしていることで、一挙に論議が高まったわけです。

アボット野党連合党首は、ギラード首相の事務所のスタッフにも457ビザで働く人がいるではないか、いわば外国人が、首相の事務所という国の機密事項を扱う部署で働いているわけで、セキュリティの問題はどうなっているんだ!と批判の声を上げ、なんだか泥仕合の様相を見せています。

オーストラリアの移民制度は、長い間の経験を踏まえて、かなり細かく審査条件が整えられてきました。その結果、条件さえ満たせば誰でも永住権が取得できる制度です。

457ビザは、経済状況を反映して、その時々に受け入れ人数や審査条件に変更が加えられてきました。

結局、景気が良ければイケイケどんどんで、外国からもどんどん人を受け入れて働いてもらうわけですが、一方、景気が悪くなると途端に、国内の失業対策のため、あまり海外から労働者を多数受け入れるわけにはいかなくなります。

これまでも、457ビザに限らず、ほかのビザにしても、審査条件がその時々の経済・社会状況に応じて変更されてきました。

国にとっては臨機応変に移民法の改正を通じて、より適正なビザ制度を維持していくということなのですが、申請する身にとっては、申請準備中に突然条件が変わることになり、その都度一喜一憂することとなってしまいます。

今回の457ビザの厳格化は、2013年7月1日からの申請に適用されますが、主な改正は以下のようなものです。

*会社の業務とは異なる職種を厳しくチェック

*労働市場相場の適用免除額を18万ドルから25万ドルに変更

*いくつかの職種から英語力免除の条件を削除

*スポンサー企業の労働条件遵守の厳格化

*社員研修/トレーニングの厳格化

本来、会社が必要とする人材を、国内で調達することができずにやむを得ず、海外から一時的に雇用するためのビザ制度が、現状では、ワーキングホリデーや学生によって、将来の永住ビザ取得のための便法として利用されているという実態があります。

このような実態が変わらない限り、今後も457ビザの変更は起こりえます。

ただし、雇用主による違法行為や脱法行為による457ビザ制度の悪用件数は、ここ数年、減少しています。

その意味でも、適正なビザ制度の運用と申請者にとって不利とならない審査基準が求められます。

(水越)

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