日本の場合、ハリウッド俳優や有名サッカー選手に会いたいと思っても、長いあいだ場所をとって待ったり、イベントの抽選にでも当たらない限り、なかなかお目にかかれないものだそうですね。

昨年末の話になりますが、映画『レ・ミゼラブル』での美声や『X-MEN』シリーズのローガン役でおなじみのハリウッド俳優、ヒュー・ジャックマンについてのニュースが、11月中頃に報道されました。内容は以下のとおり。

「オーストラリア出身でハリウッド俳優のヒュー・ジャックマンさんが、新作ミュージカル映画『The Greatest Showman』のオーストラリア・プレミアで、シドニーでレッドカーペットを歩くことが決まった。ジャックマンさんは12月20日、共演者のザック・エフロンさん、ゼンデイヤさんおよびキアラ・セトルさん、マイケル・グレーシー監督と共にシドニーでレッドカーペットを歩く。」

これを知ったヒュー・ジャックマンファンの友人から「詳細は分からないけど見に行こう」と誘われて約1カ月後……。なぜかオーストラリア国内で一切そのニュースが更新されません。「キャストとレッドカーペットを歩けるプレミア試写会」への応募を辛うじて発見しましたが、応募はすでに終了。会場はどこ？　何時に開始？　そもそも一般公開する？　詳細不明のまま、とうとうプレミア（予定）前日に。友人がTwitterで検索しまくり、夕方になってようやく、シドニーのローカルらしき人物による「The Greatest Showmanのレッドカーペット行く人いる？」というツイートがヒット。リプライで「いつ？」「20日の多分6時くらい」「どこ？」「多分The Star。前もそこでプレミアやってたから」というかなり曖昧なやりとりを発見したので、私と友人も「とりあえずThe Starに4時半集合。本当にやってたらラッキー」なかたちに落ち着きました。

翌日、会場に向かっていると先に到着した友人から「場所とってるよ」とのこと。カジノと迷いながらさまよっているとレッドカーペットを発見。本当にやるんだ！と、雨でしぼんでいたテンションが持ち直しました。メインであろう屋外のレッドカーペットからエスカレーターをのぼった先、試写会ホールに続く屋内のレッドカーペット側に友人はいました。余裕で最前列に並べる、というか列すらない状態のまばらな人混み……。

聞けば、警備の人でさえ「ここ通ると思うけど、正直誰が来るのか知らない」と……。隣にいた巨漢の方に「ワクワクしてる？」と聞いても、首をひねって「トム・クルーズの時ほどじゃないかな」と返ってきます。挙句に「私の家はここから近くて、帰り道に通ってみたら人が集まってたんだけど、今日は誰が来るの？」なんて女性も。きっと人だかりの半数は「誰が来るか知らないけど何か始まるみたいだから寄った」という程度に違いない！と私たちが確信を持つくらい、スタッフを含めた誰もが非常にのんびりしていました。

しばらくするとレッドカーペットが始まった模様で、キャストやその家族が何人かエスカレーターをあがって通りすぎてゆきました。それからプレミア試写会に当選した一般の人々がぞろぞろ。その中でもひとりの老婦人は熱烈なヒュー・ジャックマンファンらしく、その日の早朝ローカルニュースで彼と話しているインタビューが放送されたそう。どうしてそんなこと知っているかというと、「あのおばあさん、今朝ニュースで見たよ」とまわりの人が言い合っていたから。脇役キャストより有名になっている老婦人なのでした。

いよいよお目当てのヒュー・ジャックマンがエスカレーターをあがってきた時には、あまりに普通すぎて気づかず。友人と一緒に叫ぶまでもなく、なんと本人から気さくに歩みよってきてくれました。そしてエスカレーター近くに並ぶファンのひとりひとりと写真を撮ってくれたのです。もちろん、私たちもここぞとばかりに写真撮影を所望。しかも「こっちに向いて、カメラこっちだから」とハリウッドスターに方向転換をさせる図々しさ。それなのに、ヒュー・ジャックマンはこの輝くばかりの笑顔！　なんて紳士だ……。

まさかこんなにあっさり写真に応じてもらえるなんて。友人は証拠写真を眺めながら「まだ信じられない」を連呼していました。夢じゃないから安心してね！　プレミアを観にロンドンやニューヨークへ行く話はよく聞くけれど、じつはシドニーも穴場かも？

ちなみにヒュー・ジャックマンが興行師P・T・バーナム氏を演じる実話を元にした『The Greatest Showman』は、先月26日から公開中。キャッチーな音楽が見どころな楽しいミュージカル映画です。

文：武田彩愛（編集部）／写真は一部友人より提供