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幸せって何だっけ?不安な気持ちに寄り添う「てつがくカフェ」

現在オーストラリアでも日本でも、新型コロナウィルス(COVID19)の感染拡大の不安から特定商品の買い占めやパニック症状などが起こっています。

こうした人間の非常時に対する不安感の蔓延は合理的なもので、未知のものや制御不能に見えるものを恐れるように生来から備わる機能だそう。事実にこだわり、科学的な情報源に頼ることが、自分の気持ちを前向きに管理する最善の方法なのです。

とはいうものの…先行きの見えない不安や情報に埋もれてしまいそうな毎日が続くと、ついついネガティブになってしまったり、感謝の気持ちを忘れ、イライラしてしてしまうことも多いはず。

誰かと語り合う機会も減ってしまいがちですが、そんな時に何かについてお互いに聴き、考え、喋ることができるオープンスペースがあると、孤独になりがちな心を癒してくれるかもしれません。

今回は、そうした不安な現状にも寄り添うシドニーのオープンスペースカフェイベント「てつがくカフェ」についてご紹介します。

「てつがくカフェ」って何?

てつがくカフェ」は、街中のカフェなどの誰もが自由に出入りできるオープンスペースで、飲み物を片手に参加者同士で特定のテーマについて話し合う集いのこと。1992年にフランスのカフェで生まれて世界中に広まったボランティアベースのイベントです。

“てつがく(哲学)”と聞くと専門的なイメージを持つかもしれませんが、「てつがくカフェ」は定義があるわけではありません。共通するのは、進行役のファシリテーターがいて、何かテーマを設け、その場にいる人々が話して聞いて考えるというシンプルなつくりだけ。

何かひとつの堅苦しい結論を導き出す…といった場ではありません。それまで誰かに話せなかったような不安や疑問を率直に語り合い、他の参加者の話にも同じように耳を傾けるだけ。

議論ではなく「話す」「聞く」を丁寧に積み重ねてじっくり考える「てつがくカフェ」に、哲学や哲学史の専門知識は不要です。

「てつがくカフェ」の問いを知ることは、すれ違っているコミュニケーションや互いの主張の食い違いを、無闇に解決しなくてもいいことなのだと気付くきっかけになるかもしれませんし、自分の問いを理解してもらえること、真摯に答えてもらえること、これらのことは、他者からケアされていることだと知ることができるかもしれません。

誰でも参加できる「てつがくカフェ」のガイドライン

  1. 何を言ってもいいけれど相手の人格を否定しない
    参加者は誰でも何でも話してみましょう。反対意見は人格の否定ではありません。賛同できない意見の場合も最後まで話を聞いてから。どんどん常識や前提に疑問を呈し、自分の価値観を広げていきましょう。
  2. 難しい言葉を使わなくても自分の言葉で語ればいい
    「てつがくカフェ」に哲学の知識は必要ありません。専門用語は気にせず、むしろ自分が伝えたい内容を知っている言葉で丁寧に並べていきましょう。空気を読んで言わないという気遣いも必要ありません。
  3. 相手の肩書きは関係ない、誰もが対等な場に
    社会の不要なフィルターを通さず、普段の自分や相手の位置付けは気にしないようにしましょう。その場にいるのは皆、カフェで飲み物と語らいを楽しむ仲間です。
  4. 何かを決めなくてもプロセスを楽しんでいく
    「てつがくカフェ」は結論を出すことが最終目的ではありません。参加者全員が「そうだよね」と満足できる本質的な意味づけにチャレンジはしますが、重要なのはテーマに対する意見や語らいを楽しむこと。無理に誰かが結果をまとめることもありません。
  5. 特定の考え方や思想を強要しない
    自由に考えを広げて深める場ですから、個人の自由を尊重しましょう。また、「てつがくカフェ」中に知り得た個人情報は、安全安心スペースを維持するため、自分の心の中だけに大事にしまっておきましょう。

オーストラリアでも哲学する!シドニーの「てつがくカフェ」

シドニーでも日本語による「てつがくカフェ」が定期的に開催されています。CBDのHaymarketにあるスターバックス(ジョージ・ストリートとキャンベル・ストリートの角)にて、毎月第4水曜の午前10時30分から、サイコロジストのやのしおりさんがファシリテーターを務めています。毎回ワーホリや学生の方から仕事をリタイアした老後の方まで年齢層も性別もさまざま、幅広い層のオーストラリア滞在者が気軽に参加。

シドニーの「てつがくカフェ」の話題はさまざまですが、以前は「デスカフェ」として、晩年や終活のこと、健康寿命の充実、グリーフなどの「死」に関するテーマについて、オープンなカフェでおいしい紅茶やコーヒーを飲みながら自由に語り合う場でした。

「てつがくカフェ」に名前は変わっても、リラックスした雰囲気は同じまま。

  • 一人ひとりが自由に自分の考えを表現できるようにすること
  • 特定の結論を出そうとしないようにすること
  • カウンセリングやお悩み相談になりすぎないようにすること
  • おいしいカフェのドリンクなどを楽しむこと

オーストラリアに住む日本人としての共通した思いを持つ、在豪歴もさまざまな参加者同士が語り合う場はシドニーの「てつがくカフェ」ならではでしょう。

シドニー「てつがくカフェ」前回開催の内容をご紹介

誰もが何らかの仕方で追い求めている「幸せ」。しかし、誰がその姿を明確に知っているでしょうか。どんな人にとっても共通して「幸せ」な状態はあるのでしょうか。

前回開催された「てつがくカフェ」のテーマは「幸せ」。1杯のコーヒーを飲めるような気持ちから、社会における自己実現のようなものまで、その中身はさまざまでした。

  • 感じるもの。現実として「ある」ものでなくどう捉えるかによる「認知」のもの。
  • 相対的・比較的なもの。自己の人生の大変な時期やもっと大変な他者との比較により評価しやすくなる面もある。
  • 人生の中にある達成感と関連がある。または達成したと思えるようになること。
  • 何が起きてもポジティブな意味を見出していこうとする意志や姿勢で、幸福感は増す。
  • 自然に触れたり体を動かしたりすることで、幸福感は増す。
  • 贅沢や見栄では幸せになれない。自分らしい生活や自分のやりたいことができている中に見出せる。
  • どんな小さなものにも幸福感を見出せるような意識やモチベーションを持つことで、同じ生活でも幸福感を増して生きて行くことができる。

自分にとっての「幸せ」と、誰もが目指すべきとされる幸福、幸福な人生のモデルとは一致しないでしょう。はたまた「こうすれば幸せ」という考え方も、長い人生のうちに変化していくものなのかもしれません。「幸せ」を求めたい、「幸せ」を感じたい、誰かの「幸せ」になりたいといった願いを、その時々に対話しながら考えていくことが大切なのでしょう。

※過去の「てつがくカフェ」開催記録はこちら

シドニー「てつがくカフェ」の次回のテーマと開催日

次回シドニーの「てつがくカフェ」のテーマは「人はどこから来てどこに行くのか」。人は生まれる前はどこにいて、そして死んだ後はどこに行くのでしょうか?

人生の命題とも言えるテーマを、日々の生活の実感や思索の中から紐解きつつ、参加者全員でコーヒーやケーキを楽しみながら話し合いましょう。

開催日時:2020年3月25日(水)10:30(毎月第4水曜日の午前10時半から定期的に開催)
会場:Starbucks Capitol Square Sydney
住所:Capitol Square, g01/730-742 George Street, Haymarket
参加ご予約:0416-006-835(やのしおり宛にメッセージをお送りください)
入場:無料(カフェの飲食物は各自お支払い)
WEB:www.jams.tv/author/jdcafes
Facebook:www.facebook.com/deathcafejasyd

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