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メディアと世論調査

先月、ギラード首相が50歳の誕生日を迎えました。オーストラリアでは50歳のバースデーは人生の節目の重要なイベントで、結構、大きなパーティーが催されたりします。

ギラード首相の場合はそんなに喜ぶような雰囲気ではなかったようで、それもそのはず、ここのところの支持率の落ち込みがかなり影響しているようです。

ここ最近の世論調査では、首相の支持率は大きく落ち込み、与党労働党の支持も低迷し、野党保守連合に大きく差を付けられています。加えて、難民対策や炭素税の導入に、国民の多くが反発していて、ラッド前首相待望論が出てくる始末です。

そんな状況を示しているのが、メディアによる世論調査結果の報道なのですが、その世論調査をちょっと考えてみました。

世論調査は国民の意見を表している調査結果だと単純に信じていませんか? そうだとすると、それはちょっと危険ですよ。

よくいわれるように、統計数字には必ず数字のマジックがつきものです。

例えば世論調査で、「あなたは炭素税に賛成ですか、反対ですか」という質問には、賛成か反対か、二者択一でしか答えられません。条件付きで賛成、または反対の人は、無理矢理どちらかに答えることになります。もしくは無回答とするしかありません。

さらに、質問が「低所得者に補助金を出して出来るだけ影響を少なくした炭素税法案に、あなたは賛成ですか、反対ですか」というものなら、先ほどの質問とは異なる結果になるでしょう。

このように質問の内容次第で、世論誘導が出来てしまうのが世論調査です。典型的なのが、以前行われた共和制についての国民投票です。

事前の世論調査では国民の多くが共和制を支持していましたが、大統領を国会議員の中から選出するという点で賛否が分かれ、結局、共和制移行に賛成という結果にはなりませんでした。質問が「共和制移行に賛成ですか、反対ですか」というものなら確実に賛成が反対を上回っていたはずです。

もうひとつ注意が必要な点があります。

新聞記事に、「国民の半数以上が○○を支持」などという見出しの世論調査結果が出たとします。記事を読んでいくと、グラフの横に小さく、調査実施日と調査機関、そして調査対象数が出ています。例えば「1,000人を対象に電話調査」などとあります。ところがそこに「有効回答380」などとあると、注意が必要です。

記事全体が「国民の55%が○○を支持」としていても、確かに半数以上ということになりますが、調査対象数はわずか1,000人です。しかもそのうち有効回答はたったの380人です。そうすると55%の550人が、209人になってしまいます。

このように調査の母数と有効回答数を常にしっかりと見ていないと、記事の見出しにつられて、(国民の多くはそんな意識を持っているんだ…)と思ってしまいます。

よくこちらの新聞に出てくる世論調査は、母数が500人とか、せいぜい1,000人です。なかには250人というのもあります。そんな数字で「国民は…」などと言い切られてしまうと、「えっ!そうなの?」と、はなはだ疑問が生じてしまいます。

メディアの大げさな表現、世論を誘導するような記事、注目を得たいがためのオーバーな見出しには、注意が必要です。

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