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二人の関係を証明する

先月、米国のオバマ大統領が、同性結婚を容認する発言をしました。なんだか唐突な発表だったと感じた方も多いでしょうね。キリスト教文化のアメリカ社会で、特に政治家にとってタブーとされているものがいくつかあります。ユダヤ(イスラエル)や、銃の規制、そして同性愛についてです。これらのタブーについてはっきりとした発言をすることは、多くの有権者の反発を招いてきました。

同性愛を容認する発言は、まさにこのタブーに触れてしまったということです。

もちろんオバマ大統領の発言は計算されたものでしょうし、背景には11月の大統領選挙での勝利戦略があります。つまり、この発言でオバマ大統領は、一定の保守層の切り捨てを行い、そしてまだ態度をはっきりとしていない中間層の獲得を狙ったということです。

よく言われるのが、保守層約3割、リベラル層約3割、そして態度保留の中間層4割という比率で、どのみち保守層の切り崩しは難しいのだから、見切りをつけて、世論調査では割に高い支持を得ている同性結婚の容認により、この中間層の支持拡大を狙う戦略に出たということです。

はたしてこの戦略が吉と出るのか凶と出るのか、11月にはっきりしますが、気になるのはオーストラリアです。

ギラード首相は相変わらず同性結婚には反対の立場を表明していますが、世論調査では約7割の人が賛成しています。さらに、正式な結婚ができないなら、せめて同性同士であっても事実婚状態にあることを公式に認めてもらおうと、各州政府に働きかけた結果、今日では州政府や連邦政府の、特に社会保障関係機関で同性同士の関係を公的に認めています。

つまり、「結婚」ということで公的な「結婚証明書」は取得できないけれど、それと同等の証明書を州政府の機関が発行するというものです。この州政府機関は、結婚登録を管轄する同じ機関で、現在は、ニュー・サウス・ウェールズ州、ビクトリア州、クイーンズランド州、南オーストラリア州、首都特別地域(キャンベラ)が、このような登録制度を持っています。

この登録制度を利用して「Relationship Registration Certificate」や、「Civil Partnership Certificate」を取得すれば、その証明書が二人の関係を公的に証明することになります。

この制度のユークなところは、登録には性別を問わない点です。つまり、なにも同性同士でなくても構わないということで、異性同士でも、結婚をせずに事実婚(デ・ファクト)状態でいるカップルも、この登録制度により、二人の関係を認める証明書を得ることができるのです。

例えば、ビザの申請で、デ・ファクトカップルの場合は、結婚証明書がありませんから、さまざまな書類を提出することで、二人の関係を証明しようとしますが、このRelationship Registration Certificateの提出は、かなり重要な提出書類となります。

というのも、移民局では、デ・ファクト関係の場合は、12カ月以上の同居の事実を証明することが必要ですが、このRelationship Registration Certificateを提出することで、「12カ月以上の同居」ということを免除されるからです。

しかも、例えばニュー・サウス・ウェールズ州政府の場合、Relationship Registrationの登録には「同居の事実」がなくても登録ができてしまうんです。パートナーとしてお互いが認めていれば、たとえ一緒に暮らしていなくても、証明書が発行され、そしてこの証明書によって、移民局の「12カ月以上の同居」の免除を受けることができるという、何とも不可解な(ずさんな?)ことが可能となるわけです。

これまでビザ申請には、デ・ファクトの場合は12カ月以上の同居が必要だとされていたのが、この証明書の取得により、簡単に申請できることになったわけですね。もちろん、ビザ申請にはこの他に、二人の関係を証明する書類の提出が必要ですが、同居期間を満たしていない人には嬉しいものです。

ニュー・サウス・ウェールズ州議会ではタスマニア州や首都特別地域に続き、同性結婚を容認する動きがありますが、連邦議会にもその動きが出ています。

はたしてオーストラリアでは、1950年代の、アボリジニの男性が白人女性と結婚することを禁止していた状況から、同性結婚の容認へと大きく政策転換をすることができるのでしょうか。

(水越)

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