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ベジタリアンの『メリット&デメリット』を栄養学視点から紹介

前回の記事では、ベジタリアンやヴィーガンの違いについて簡単に説明しました。今回はベジタリアンの食事法として取り入れた時のメリット・デメリットについて説明していこうと思います。

前回の記事を読んでないって方は、下記のリンクよりチェックをお願いします!

ベジタリアンの歴史を解説!

ベジタリアン発祥の地はイギリス。1847年に同国の菜食主義協会によって発足されました。ベジタリアンとは、健康、倫理、宗教上の理由から動物性の食品は一切または一部摂取しない食生活を取り入れている人のことを指します。また、ベジタリアンは菜食主義の総称でもあり、ペスカトリアンもヴィーガンもベジタリアンの一種に含まれます。

動物性の食品(肉、魚介類)は一切または一部摂取しないベジタリアンは、卵、乳製品(チーズ、牛乳、バター、ヨーグルトなど)、蜂製品(ハチミツなど)は食べます。完全菜食主義を貫いている人が多いヴィーガンとは異なり、ベジタリアンの場合、宗教、倫理とは関係なく健康法として取り入れている人も多いそうです。

さまざまな理由から人々の食生活に取り入れられているベジタリアンの、メリットとデメリットを説明していきます。

(+)栄養学の視点から見た、ベジタリアン生活を取り入れるメリット

ベジタリアンは非菜食主義者に比べて、病気にかかりにくいと言われています。菜食中心の食事では飽和脂肪酸やコレステロールの摂取が少なく、ベジタリアンの食生活の方が多くの食物繊維、ミネラル、マグネシウム、カリウム、ビタミンなどを摂取できると考えられています。

本当にベジタリアンが病気にかかりにくいのか、その根拠をまとめました。

ベジタリアンのメリット①:内臓脂肪の減少

肉や卵などは特にコレステロール、カロリーを多く含んでいるため、1日の必要摂取量よりカロリーオーバーしてしまい、肥満などを招く恐れがあります。しかし、ベジタリアン生活では野菜中心の食生活となるため、野菜はカロリーが低く、食物繊維を多く含むので体内のコレステロールの蓄積を防ぐことができます。

ベジタリアンのメリット②:疲れにくくなる

肉類は消化に約12時間から24時間もかかることをご存知ですか? それに比べ、野菜の消化時間は約2時間、果物はわずか40分ほどで消化が完了すると言われています。さらに、動物性のものを摂取すると、野菜類を摂取した約3倍のエネルギーを使うと言われています。ベジタリアン生活で、お肉の摂取を減らすことで、体の疲労感の修復にエネルギーを使い、疲労感の減少などが考えられます。

ベジタリアンのメリット③:心臓病発症リスクの低下

上記のように、肉類の消化時間は長いため、たくさんのエネルギーが必要となります。そのため心臓への負担も多くなりますが、野菜や果物は肉類と比べて消化時間が短いため、ベジタリアン生活を送ることで心臓病のリスクが低下します。

ベジタリアンのメリット④:便秘の改善

腸管内、特に大腸には100種類以上の細菌が生息しています。動物性たんぱく質を取りすぎると、体内で吸収されずに残ったたんぱく質が腸内に送られますが、腸内へ送られた動物性たんぱく質は悪玉菌のエサとなり、悪玉菌が増殖してしまいます。実はこうした悪玉菌の増殖で、腸の運動が低下し便秘の原因になるのです。また、肉類は食物繊維の量が少ないため、ベジタリアン生活で野菜類を多く摂取することで腸内環境の改善が目指せます。

ベジタリアンのメリット⑤:がん(特に大腸がん)のリスクの低下

上記のように、腸内へ送られた動物性たんぱく質は、悪玉菌の増殖、腸内環境の乱れ、腸管の蠕動運動の低下につながり、結果的に大腸がんを起こすリスクが高まります。反対に、ベジタリアンは大腸がんのリスクが22%も抑えられるとデータで出ています。

ベジタリアンのメリット⑥:動脈硬化や高血圧の予防

動物性脂質は(特に哺乳類の肉)は、主に飽和脂肪酸を含み、人間の体内で消化しきれず、コレステロールとして蓄積されます。血管内にコレステロールが蓄積すると、動脈硬化などの危険性が高まります。反対に、植物性脂質は主に不飽和脂肪酸を含んでいるため、体内に蓄積しづらく、結果的にベジタリアン生活を送ることで、高血圧や動脈硬化などのリスクを低くするとされています。

ベジタリアンのメリット⑦:気持ちが穏やかになる

近年の肉に含まれる抗生物質やホルモン剤の摂取量が、肉を摂取しないことで少なくなり、人体のホルモンバランスの乱れが防げると考えられており、ベジタリアン生活で肉類の摂取をしなくなると、気持ちが穏やかになります。

(ー)栄養学の視点から見た、ベジタリアン生活を取り入れるデメリット

「ベジタリアンは動物性のものを摂取しないから体にいい」というわけではありません。ベジタリアンの食生活を続けることで、もちろんデメリットも出てきます。

ベジタリアンの食生活において注意すべきことや、知っておくべきデメリットをまとめてみました。

ベジタリアンのデメリット①:タンパク質・必須アミノ酸不足による筋力や集中力の低下

タンパク質は、炭水化物・脂質と合わせて人間の体に必要な三大栄養素と呼ばれ、筋肉や臓器など体内を調節するためのホルモンの材料、エネルギー源に必要な栄養素です。

動物性食品の場合、牛肉の赤身肉100gあたりに約25gの動物性タンパク質が含まれています。鳥のささみ肉だと100gあたりに約30g以上、サーモンだと100gあたりに約22g。

植物性食品の場合、大豆100gあたりに約35g、アーモンド100gあたりに約21gの植物性タンパク質が含まれています。

このように、植物性食品でも必要量を摂取すれば、タンパク質が不足することはありませんが、動物性タンパク質に比べて植物性のタンパク質には必須アミノ酸(経口摂取したタンパク質を分解し、その後人体用にタンパク質を再構築する栄養素)の、リジンという成分が不足しています。

この必須アミノ酸が減少すると、筋肉量の低下、熱量の低下、肌や髪の毛のトラブル、集中力・思考力の低下が考えられます。ですので、ベジタリアン生活を送る場合には、かならず必要なタンパク質とリジンを一緒に摂取するように注意が必要です。

  • タンパク質を多く含む食品:大豆(黄な粉、豆乳、納豆、豆腐など)、ゴマ、のり、カシューナッツ、アーモンドなどのナッツ類
  • リジンを多く含む食品:鰹節、イワシ、タラなどの魚介類、卵白、大豆、黒豆、チーズ、湯葉、油揚げなど

ベジタリアンのデメリット②:亜鉛不足による免疫力の低下

亜鉛は体中で免疫力を高める働きをしています。亜鉛が多く含まれる食べ物は、牛肉と羊肉なので、ベジタリアンの食生活の中で亜鉛不足になると、疲労感が出やすかったり、味覚障害を起こすケースもあります

  • 亜鉛を多く含む植物性食品:ヒマワリの種やア―モンドなど

ベジタリアンのデメリット③:ビタミンD不足による骨粗しょう症のリスク

ビタミンDが不足すると体内のカルシウムの吸収が低下し、骨密度の低下につながり、やがて骨粗しょう症のリスクが高まります。ビタミンDは動物性食品に多く含まれているのですが、食物性食品ではキノコ類にも含まれているので、ベジタリアンにとってキノコ類の摂取は必須です。

また、ベジタリアン生活ではカルシウムも少なくなりがちですが、こちらは海藻類を食べることで、1日の必要量を摂取できると考えられています。

  • カルシウムを多く含む食品:ブロッコリー、白菜、穀物、チアシードなど
  • ビタミンDを多く含む食品:しいたけ、しめじなどのキノコ類

ベジタリアンのデメリット④:ビタミンB12不足による貧血

魚介類やレバーなどに多く含まれるビタミンB12。そのビタミンB12の摂取量が減ると、貧血になる可能性があります。

また、ビタミンB12は体内の葉酸と協力して赤血球中のヘモグロビンの生成を助けるので、脳からの指令を伝える神系を性状に保つ働きを担っていますが、ヘモグロビンが欠如することで記憶力や思考力の低下などのリスクも高まります。

  • ビタミンB12を多く含む食品:海苔などの海草類

いきなり食習慣をがらっと変えて、菜食中心のベジタリアンの食生活にするのは大変。ストレスを感じたり、体調不良をきたしながら、ベジタリアン生活を続ける必要はありません。

もちろん個人の体質や生活リズム、1日の消費エネルギーによっても、ベジタリアン生活を送ったことで現れるメリットやデメリットの出方は違います。ゆっくり身体と相談をしながら、食生活のベストスポットを見つけましょう。

ベジタリアン生活でも、一般的な食生活でも、大切なことは特定の食材に偏りすぎず、バランスよく栄養素を摂取することですよ♪

ベジタリアン生活初心者に! 週5ペスカトリアン生活はいかが?

「今日からベジタリアン」と宣言して、いきなり食事法を変えると体調の不具合が出てくることが多く、結果的に続けるとこがストレスになってしまいます。

「健康番組で紹介されたから」、「モデルさんが取り入れているから」と自分でもベジタリアンや炭水化物抜きダイエットを取り入れてみたものの、逆に「体がだるくなってしまった」、「肌荒れするようになってしまった」という人も少なくないのでは?

個人個人の体質はそれぞれ違うので、自分にとっての向き・不向きがありますよね。

日本では友達との外食時に選択肢が狭まったり、変な目で見られたりすることもあるかもしれませんし、まずは徐々に自分の食生活に野菜を増やしていくことをおすすめします。

▶︎「ペスカトリアン」ってなに?と疑問に思った方はこちらから

ベジタリアンの『メリットvsデメリット』のまとめ

今回の記事は、決してベジタリアンを推奨するものではなく、食事に野菜をもっと取り入れるきっかけになってくれればという思いから、ベジタリアンについても記載しています。

ベジタリアンの知識があるとないでは、食への関心も大きく変わるかと思うので、今後も情報共有のために記事を書いていけたらと思います。

「TED」というTALK番組は皆さんもご存じかと思いますが、この番組でグレアム・ヒルというスピーカーが、「ウィークデイベジタリアン」という議題でベジタリアンについて講演したものがあります。4分程度の短い動画なので、通勤時間にぜひ視聴してみてください!

その動画から私が教訓を受けた一説があるので、この場を借りてご紹介したいと思います。

ーー『毎日ハンバーガーを1個食べることで、死の危険が30%増加することも知っていました。動物の虐待については、毎年肉のために100億頭の動物が殺されることも知っていました。環境の視点から言うと生産で生じる温暖化ガスの量は、あらゆる交通手段からの温暖化ガスの量よりも多いのです。牛肉の生産工場牛肉の生産工場は野菜の生産より100倍以上の水を必要とします。』

ーー『ベジタリアンになる理由はたくさんありました。なぜ私は実行できなかったのか? そこには菜食主義か肉食手技の二者一択しかなかったからです。私の良心と善意の考えが私の味覚と異なっていたのです。そこで考えました。第三の選択があるだろうと。それが、ウィークリーベジタリアンです。』

ーー『次のレベルを考えるならば、環境と健康によくない赤身肉と加工肉を、環境にやさしい魚を食べればいいのです。週5日、肉を食べないことは、肉の摂取を約70%減らすことになります。平日の菜食主義は、環境負荷の低下、環境汚染の抑止、動物への罪悪感の減少、コスト節約、健康の面での利点があります。』(一部抜粋)。

 

JAMS.TV公式ブロガー:Yui
日本では大学病院で看護師として消化器外科に勤務。学生時代より興味があった栄養学・予防医学をより深く知るため、その分野において先進的なオーストラリアに渡る。現在はシドニーでアシスタントナースとして働く傍ら、スーパーマーケットやカフェを巡り、オーストラリアの食文化を探求中。オーストラリアの大学で栄養学を学ぶため、日々英語に仕事に栄養学にと奮闘中!

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