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AUとNZの2カ国間で揺れるポッサムのイマ

仕事帰りに通ったシドニーの公園で1匹のポッサムを見つけてつい立ち止まりました。ポッサムはリスを太らせたような丸っこくて可愛らしい木登りが上手な動物で、もともと田舎の方に生息していましたが最近はシドニー周辺で増加しているそうです。急激な増加によって被害が発生しても、ポッサムは在来種なのでコアラやカンガルー同様法律で保護され殺処分されることはないそうです。ネット上ではオーストラリアと同種のポッサムはニューギニア島とスラウェシ島のみに生息しているとされていますが、実はお隣の国ニュージーランドにも数千匹以上生息しています。

オーストラリアでは保護され伸び伸びと生きているポッサムですが、ニュージーランドではポッサムによる環境破壊が問題視され、政府は2050年までに国内に生息するポッサムを全て排除しようとしています。以前ニュージーランドでハイキングをしていたときにポッサム用と書かれた鉄の小さな檻が目に入りました。この政府の政策を知らなかった私は何故可愛いポッサムを捕獲するのだろうと怒りを覚えました。

この話を現地の人達に話すと「あいつらはよそ者で美しい自然を壊している」と口を揃えて言われ、そこで初めてこの国ではポッサムはただの外来種であり在来種に危険を及ぼす害獣だということを知りました。正直なところオーストラリアとニュージーランドは距離が近いため生息している動物も大差ないと思っていたので2カ国間で認識が全く違うことに驚きました。

そもそも外来種であるポッサムがどのように島国のニュージーランドに渡ってきたのかというと、ポッサムの毛は特殊で暖かく寒い気候に適していると目をつけた毛皮業者の手によって意図的に連れて来られたそうです。その後毛皮事業は成功しましたが、繁殖しすぎたポッサムが在来種の鳥や自然を破壊し始めたため害獣扱いになってしまったわけです。今でこそ被害が拡大し大変だと人間は騒いでいますが、元はといえば人間達がこの外来種問題を引き起こし生態系をも壊す原因を作っていたのでした。

オーストラリアとニュージーランドに入国するさいの検疫検査は厳しいと言われています。動植物などの持ち込みが厳しく取り締まわれている他、泥のついた靴も空港できれいに洗わなければ持ち込めません。これも全て崩れてきている生態系をこれ以上悪化させないための予防策です。実は日本でも許可されていない動植物の輸入が後を絶たず絶滅の危機にさらされている在来種も多く深刻な状況にあります。

今私達が抱えている外来種問題は故意でも無意識でも輸出入してきた私達人間にあり、このまま状況が悪化すると生態系が崩れ農林業や漁業への影響や本来存在しないはずの感染症が発症するなど様々な弊害が起こりえます。ポッサムのように罪のない動物たちがこれ以上被害を受けないためにも、目先の利益だけではなく個人レベルで意識を変えていかなければいけないのだと改めて考えさせられました。

 

文:岩瀬まさみ

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