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根回しなんかしてる時じゃないでしょ。

クイーンズランドの洪水被害に対して、各方面から支援や義援金が集まり、これから本格的な復興に向けて動き出しています。オーストラリアの大手企業も百万ドル単位で義援金を提供したり、多くの国民が寄付を寄せたりボランティア活動に参加しましたね。

日本人社会でも、商工会議所や日本人会、日本クラブなどの各日系団体が寄付を出したり、会員に義援金を呼びかけたり、あるいはチャリティーイベントを後援したりと、オーストラリア社会に貢献をしています。先日、シドニーで行なわれたチャリティーイベントにも、多くの日本人が集まって、義援金が集まったということです。また、2月19日には、シドニーのチャッツウッドで日本人の有志によるHelp! Queensland Concertが催されます。(18:00 – , The Chatswood Club, 11 Help Street, Chatswood  $5.00)

これまでもオーストラリアでは、山火事や洪水などの大きな自然災害に、多くの国民が支援の手を差し伸べてきましたが、今回の日本人社会でのチャリティーイベントの動きは、これまでにないものだと感じます。それだけオーストラリア社会にとけ込む日本人が増えて来た証左なのかなという気がします。

さて、ギラード政府は、その災害復興のために、特別税を徴収しようとしています。もともと2012/13年度には財政の黒字化を目指していた政府ですが、今回の思わぬ自然災害の発生で、復興に多額のお金を支出すると、黒字化どころか、大きな赤字になるのは必至ということで、年収5万ドル以上の人を対象に災害復興の特別税を徴収しようというものです。(2011/12年度のみ)

まあ、国民の60%は所得が5万ドル以下ということですし、0.5%(10万ドル以上は1%)の税金は、週に1、2杯のコーヒー分だったりということで、それほど過度な負担ではないだろうということです。ハワード政権時も一時的な追加特別税の徴収が何度か行なわれ、ミルクやガソリンの値段が上がってきましたが、いつの間にか慣れっこになってしまった感があります。

今回の災害復興特別税も、国民には受け入れられるのでしょうが、問題は、税金の徴収だけでは、60億ドル以上と言われる復興費がまかないきれず、いくつかの目玉政策の予算を削減したり、実施を遅らせたり、政策自体取り止めたりという措置を講じたことです。主に環境政策が対象になった今回のギラード首相の発表には、批判もありますが、まあ、国家的な緊急対応ですから、それも致し方なしというところでしょうか。

ところで、今回の政府の対応を見て気づくのは、その対応の仕方、政策決定の素早さです。ギラード政権は昨年の連邦選挙で、与野党が過半数を取れず、グリーンズや無所属議員の協力でかろうじて政権運営を行なっています。一歩方針を間違えるとたちまち野党の反発を受けて政権運営が立ち止まってしまう状況になります。それでも一応なんとかやってきています。

翻って日本の政治はというと、いわゆるねじれ国会で、政府の方針がほとんど前に進まない状況ですし、ことごとく野党の批判の前に立ち往生しているような無様さが目立ちます。

先日、米国で、オバマ大統領の一般教書演説があり、日本と同様にねじれ議会となっている状況に、与野党を超えて国民のために協力してもらいたいと訴えていました。大統領のそんな発言に与野党議員は拍手で応えていたのが印象的でした。

一方、日本の国会では野次の応酬です。この違いは何でしょうか? もちろん大統領制の米国と議院内閣制の日本の政治制度の違いがあるかもしれませんが、それにしても危機的な経済状況や、高い失業率の社会的閉塞感には同じものがあります。やはり強いリーダーシップで素早い決定、というのが大きな違いですね。

今回の洪水でも、アナ・ブライ=クイーンズランド州首相の水害現場でのテキパキとした動きや指示に、国民の多くが感動し、ギラード連邦首相を上回る人気の高まりが見られました。負けずにギラード首相が素早く特別税の導入を決定したわけではないでしょうが、国家的な危機には与野党超えた対応が必要だということが、長年の二大政党政治の中で培われてきた背景があります。

その点、経済危機の状況にあるにもかかわらず、いつまでたっても、言葉尻をとらえて批判の応酬をし合う日本の国会は、まるで子ども同士の口喧嘩のような有様で、なんだか情けないですね。

日本社会にしっかりと根付いている、根回し稟議連帯責任などの慣習が、いざというときにいかに足かせとなっているかということを、今回の洪水対策で知らされたような気がします。

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