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今週の為替相場見通しby Joe Tsuda(津田 穣)8 August 2022

8 August 2022

◎<主なイベント>
8日(月)日本景気ウォッチャー調査(7月)、サンダース英中銀委員任期満了
9
日(火)米中間選挙予備選(コネチカット州、ミネソタ州、バーモント州、ウィスコンシン州)
10
日(水)日本国内企業物価指数(7月)、中国消費者物価指数・生産者物価指数(7月)、米消費者物価指数(7月)、ロシア消費者物価指数(7月)、シカゴ連銀総裁講演、ミネアポリス連銀総裁、講演
11
日(木)山の日祝日のため東京市場は休場、生産者物価指数(7月)、メキシコ中銀政策金利、サンフランシスコ連銀総裁講演、OPEC月報
12
日(金)台湾GDP(第2四半期)、英国GDP速報値(第2四半期)、ロシアGDP(第2四半期)、米ミシガン大学消費者信頼感(8月)
13
日(土)米中間選挙予備選(ハワイ州)


◎<マーケットの焦点>―ドル円は再び上昇トレンドに戻ったか?

先週はペロシ下院議長の台湾訪問を巡る米中間の緊張の高まりが相場センチメントを悪化させ、ウクライナ戦争に加えてFar Eastにおける地政学的懸念も意識された。
ただその割には米国はじめ主要国の株価は前週から続伸とは行かなかったが高原状態を維持した。
一方為替市場は神経質な展開。前週のFOMCにおけるパウエル議長からの「ある時点における金融引き締め緩和示唆」や米Q2GDP-0.9%となり米国がテクニカルな“リセッション”に陥った状況から、週初はドル続落となり、ドル円の安値130円台前半、ユーロ高値1.02台後半、ポンド高値1.22台半ばを示現。
伊政局では「イタリアの同胞」主導で連立政権がまとまる期待が広がり伊債券利回りは低下した。
予想通りにRBA50bpBOE50bpの利上げを実施した。
しかしRBAは「今後の利上げについてはデータ次第」と方向を変更、一方BOEも従来のフォワードガイダンスを破棄して、「今後の政策に予め決まった軌道はない」と述べた。各国中銀共にインフレ対応の利上げと景気後退懸念という二律背反に直面している状況を匂わせた。
豪ドルもポンドも50bp利上げによる恩恵よりはむしろ発表後に反落。
米中間の緊張の高まりや、米景気減速懸念からドルの天井も重くなる中、金曜日の米雇用統計を迎えた。
結果はサプライズのnfpr+52.8万人(予想+25万人)、失業率3.5%(予想3.6%)、平均時給+5.2%(予想+5.0%)。特にnfprは予想の倍となり、各部門共に“満額回答”を得て米10年債利回りは2.867%まで上昇しドルは急進。
特にドル円は週初の130円台から雇用発表前既に134円台にリバウンドしていたが、一気に今回の半値戻しとも言える135円台を回復した。
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月のFOMCにおける利上げ幅予想も、再び75bp65.5%50bp34.5%を抜いた形となっている。
係る就業者数や失業率はいわば“遅行系列”に属する指標であり、足元の米景況を反映しているとは言い難い。しかしnfprが予想値の2倍以上増とは、収集されたサンプルにバラツキがあるとは言え、「予測が命」であるはずのエコノミストの予測力に疑問を持たざるを得ない。
まあ、指標で動くのは相場の常であり、“敗者の弁”、“負け犬の遠吠え”ではあるが、次回に大幅下方修正でもあれば、さらに無力感が増すだろう。
いずれにしても米経済はFRB当局者の言う通りに“リセッションに陥っているわけではなく”、しかも足元の景気減速はいわば“計算づく”であり、今後ソフトランディングに向かうのか?
そうであるならば、筆者の長期ビュー通りに、ドル円は130円台で完全に底入れして再び上昇トレンドに回帰したのか?
しかし東アジアの緊張からドル円がリスクオフで130円台まで下落した過程は、まさに消えかけていた“安全通貨円”神話の復活であり、それ自体を否定する筆者も、市場のリスクオフ円買いに便乗する形でドル円ショートに走った。
ただその後の135円台への急反発を見るにつけ、従来から指摘しているように「投機的円買いが地下深く流れる“実需の円売り”というマグマに触れて、急激に売り戻された」という印象を強めた。
ただ、足元135円台まで回復したドル円であるが、依然「旧リスクオフ円買い派」の反撃も予想され、簡単に140円に向かうとも思えない。しかし前回6月の135円台→131円台→136円台、今回の139円台→130円台→135円台のリバウンドを見るにつけ、ドル円の底流は依然として“上昇トレンド”との思いを強くしている。

 

◎<豪ドル相場>

依然として70セント台、95円台が足元の天井圏

先週の相場レンジ―AUDUSD 0.6869-0.7047  AUDYEN  90.52-93.80
今週の予想レンジ―AUDUSD 0.6750-0.7050  AUDYEN  91.00-95.00

先週のRBA理事会では予想通りに政策金利を1.35%から1.85%に50bp引き上げ、声明では引き続き「インフレ対応を最優先事項としている」と述べた。
また、金曜日に発表されたRBAの四半期金融政策報告書(SOMP)でも「
インフレ率が30年ぶりの高水準に向かっているため追加利上げが必要だ」と述べた。
しかし、同時にRBA理事会声明では「今後の利上げの規模、タイミングはデータと理事会の物価及び労働市場の見通しによる」とのべ、SOMPではインフレ見通しを大幅に引き上げる一方、経済成長率見通しを下方修正し、最終的に失業率が上昇することも予想した。つまりRBAは足元インフレ抑制を最大課題とすると同時に、将来的な景気減速をも既に視野に入れているわけで、市場では早くも来年以降の“利下げ”を先取りする予想も出始めている。
係る中、先週は中国7月PMIの悪化や、米中間の緊張がネガティブ材料とされ、豪ドル上値は70セント台、95円台でキャップされた。
今週も引き続きドル相場自体不安定な動きが予想され、ドル下落局面では「豪ドルは米ドルの受け皿」として反発しようが、ウクライナ情勢に加えて東アジアの地政学的懸念から世界経済を巡る不透明感が増加しており、豪ドルが上値抵抗70セント台、95円台を上抜けするのはまだ先と言わざるを得ない。

 

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Joe Tsuda のプロフィール

東京銀行(現 東京三菱UFJ)のバーレーン支店で為替・資金ディーラーとしてスタート。ロンドン支店為替チーフディーラー、本店オプションデスク勤務後、1990年外資系銀行(米系、スイス系)に移り為替・資金業務に携わる。

1995年に来豪し第一勧業銀行(現 みずほコーポレート銀行)の為替ヘッドとして2007年まで活躍。

現在 AT FUND PTY LTD, Sydneyのダイレクターを務める傍ら、日本の投資家に日々市場メッセージを発信している。豪州金融市場に友人も多い。為替歴30年。趣味:ゴルフ、テニス、ワイン賞味、ネコと遊ぶ


☆FXトレーディングにはFXマガジン「侍ディーラーが相場を切る」をお勧めします。
詳しくはhttps://foomii.com/00130をご参照ください。

☆現在セントラル短資FXブログに執筆中!(毎週木曜日担当、ヤフーファイナンスに同時掲載)
http://www.central-tanshifx.com/

☆日経新聞月刊誌”日経マネー”に定期寄稿
ご注意!本レポートは著者の作成時点における見解により作成されており、内容等の正確性を期しますが、それを保証するものではありません。投資等のご判断は皆様ご自身でなされるようお願い申し上げます。

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