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オーストラリアの「妊婦さん」から考える男女平等化

オーストラリアに来て驚いたことのひとつに「妊婦さんが多い」ということがあります。私が少子化・過疎化の進む田舎出身で、急に人口が多く都会なシドニーに来たからかもしれませんが、来豪して5年経った今でもかなり多いと感じます。しかも見かけるのは通勤・通学中の時が多く、みんなオフィス・カジュアルな服装。ということは、オーストラリアでは妊娠中でも出産ギリギリまで男性と同じように働ける環境があるということを象徴しているのではないでしょうか。またオーストラリアでは産休・育休を取る人も多く見られます。さらに産休・育休後に同じポジションに復帰する人がほとんどで、長期休暇後の仕事も保証されている様子が伺えます。私が通っていた高校の先生も現在通っている大学のスタッフも、お腹がかなり大きくなるまで働き、産後半年ぐらいで元のポジションで働く人がほとんどでした。

このような傾向が目に見えて分かるということは、オーストラリアでは女性同士だけではなく国や男性からも出産・育児に対しての理解がかなりあるということ。企業によって産休・育休のシステムが異なる日本とは違い、オーストラリアでは一定の基準を満たせば、休暇中でも給料が支払われると法律で定められています。またオーストラリア統計局(ABS)によると、およそ53%の女性が産休・育休後に職場復帰しており、またそのうちの26%は自分の意志、または職場からの希望によって復帰していることから見ても、ブランクがあっても男性と同じように働きやすい環境が整っている、そして男性からも同僚として必要とされているということが分かります。つまり、私が感じていたオーストラリアでの「妊婦さん」の多さは、そのような状況でも働けるという男女格差の少ない環境があるという証明なのではないでしょうか。

昨年(2017年)11月に発行された世界経済フォーラムのレポートによると、労働面・教育面・健康面・政治面からみた男女格差の総合ランキングで、オーストラリアは144カ国中35位。それに対し日本は144カ国中114位と、オーストラリアだけではなく他の先進国や新興国よりも低くなっていて、男女格差がかなりあるということがわかります。さらに日本は2014年発行の同レポートからランクを落としていて、世界の水準に取り残されている状況。

厚生労働省によると、日本でも2001年の32%から2010年には46%まで産後職場復帰の割合が増加していますが、それに伴った形でマタニティーハラスメントの相談件数も18%増加していると報告しています。また職場復帰する際に必要となる子供を預けられる保育所の不足や待機児童も深刻な問題になっているため、これらのような様々な要因が重なって、世界的に見たときに他国と比べて日本での男女間の格差が大きく見えてしまうような気がします。

[画像出典] https://www.weforum.org/reports/the-global-gender-gap-report-2017

しかし、オーストラリアでも日本でも通ずる問題がマタニティーハラスメント
(マタハラ)です。オーストラリア統計局によると5人に1人の女性が、妊娠したことによって嫌がらせを受けたと報告していて、日本でも近年話題になっているマタハラは万国共通の問題となっていると言えます。「マタハラ」とは妊娠・出産・育児をきっかけに職場で精神的・肉体的な嫌がらせを受けたり、解雇や自主退職を強要されたり、昇進やボーナスが制限されるなどの不当な扱いを受けることです。またマタハラは男性から受けるものだけではなく、女性からのものも多くあり、女性の社会進出を推進させるためには、男女間だけではなく、同性間でも理解を深める必要がありそうです。

3月8日は国際女性デー(International Women’s Day、以下IWD)。このキャンペーンは女性の社会的・経済的・文化的・政治的な活躍を祝い、また性別による格差を無くすための活動を促すために1900年代初めに始まった歴史的なキャンペーンです。また同キャンペーンは男女の共存も目指していて、ステレオタイプにとらわれない生き方を推奨しています。今年2018年のIWDのテーマは「#PressforProgress」。世界経済フォーラムのレポートによると完全な男女平等化は200年後と言われている現代で、さらなる男女平等化(Progress)を促そう(Press)というテーマになっています。

当日はシドニーでも様々なイベントが開催されたりIWDをサポートする募金などもあるので、これを機にテーマカラーである紫色を身につけ、男女格差に関する問題に改めて目を向けてみてはいかがでしょうか。

オーストラリアでも日本でも、性別にとらわれずに生きられるだけではなく、多様性が認められ、弱者に優しい社会になって欲しいと願います。

国際女性デーについて↓
https://www.internationalwomensday.com

文:浜登 夏海

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