耳で楽しむオーストラリアのカフェ

三度の飯よりコーヒーが好きとまではいきませんが、三度の飯を一度にしてでも毎日コーヒーが飲みたいほどには好きだったりします。オーストラリアはカフェ文化が盛んと聞いていたので、こちらに来てからは有名無名を問わず、できるだけ毎日違うカフェを試すようにしているのですが、そのなかで気づいたのが「オーストラリアのカフェは音が良い」ということ。

「トゥクトゥクトゥクトゥク」「ポンポン」「プシュー」「ガコン」「カン」「ガシャガシャガシャ」。大好きなアイスロングブラックができるまでの音が、私にはこう聞こえています。雑音といえば雑音。しかし、ベテランのバリスタがリズムよくコーヒーをつくる音は、どこかノスタルジックでロマンに溢れ、コーヒーを飲みたいという意欲を掻き立てられます。

日本はどちらかというと音を立てない静の美学があり、特に私が生まれ育った京都の喫茶店ではBGMや話し声も小さく、静かなひとときを優雅に楽しむために利用される人が多いように感じます。コーヒーも深炒り細挽き豆で淹れた苦味の強いドリップコーヒーが多く、カフェの雰囲気も味もオーストラリアとは反対の性質を持つ傾向があります。

そういったこともあり、こちらにやってきた当初は、オーストラリアのコーヒーはいまいちパンチがなくて飲みごたえを感じなかったのですが、いつからか近所や職場で行きつけのカフェが増え、考えることもなくコーヒーを買うようになり、気づかないうちにこちらの味にしっかり馴染んでいる自分がいました。

生活する環境によって、人の趣向や味覚は変わっていくのかもしれません。オーストラリアの暖かい気候には、味に丸みがあり繊細でスッキリと飲めるコーヒーがよく合い、私もまた自然な流れでその味を求めるようになったのでしょう。徐々にではありますが、シドニー生活に馴染み、自分自身が街の一部となっていく過程をコーヒーを飲むことで感じました。

 

文:德田 直大(編集部)

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