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「じじいが名前忘れた話」にしか見えないオーストラリアの児童小説

天気が良いお出かけ日和の日曜日、日焼けを恐れた私はカフェで一日、本を読んで過ごしました。『The Unforgettable What's His Name』という、オーストラリアの児童小説家Paul Jennings(ポール・ジェニングス)による最近の作品です。「100以上のストーリーを書き、受賞歴多数」と著者紹介に書いてあったので、有名な人なのかな?と思って手に取りました。

 

ざっくり言うと、"What's His Name"というあだ名で呼ばれるくらい内気で存在感がない少年が、不思議な力でハプニングを乗り越え、友達を得て明るくなっていくお話です。“mate”や“barbie(バーベキュー)”などのオージーイングリッシュが出てくるのも興味深く、なんと1日で読了! 

 

子供向けなので内容も文章も簡単ですが、それでも200ページ強の英語の本を1日で読むだなんて、なかなかの快挙です。達成感でいっぱいの私は、「英語の本を1日で読んだ。私、すごいし、えらい」という自尊心丸出しのメッセージと共に、本の表紙の写真を家族に送りました。すると数分後、妹から返信が。

 

「じじいが名前忘れた話?」

 

もう、そういう話の表紙にしか見えなくなりました。確かにこの表紙から、少年が主人公の心温まるストーリーであることなんてまったく想像ができない。

 

よくよく考えたら、子供向けのお話なのに、表紙の絵がおじいさんであることがものすごく不思議です(たしかにこの人物は主人公と深くつながっているのですが……)。日本の出版社だったら、絶対に表紙には主人公の男の子を出したはず。少なくとも老人がピンの表紙なんてありえないと思うのです。

 

なぜ、担当編集者はこの表紙を選んだのでしょう? 達成感も読後感も吹っ飛び、ただただオーストラリアの出版社事情が気になって仕方がなくなってしまったのでした……。

 

文:天野夏海(編集部)

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