【ACT17日】 オーストラリアの退職者が行う無償労働は、年間約32万1000人分のフルタイム雇用に相当し、その貢献額は年間総額165億ドルに上ると、新たな調査で明らかになった。
ユニスーパーの「目的を持って生きる退職生活」調査によると、退職者は無償のケア、ボランティア活動、地域社会でのリーダーシップ、メンタリングなどを通じて、年間平均386.3時間を貢献している。一方、調査対象となったオーストラリア人の84%は、退職者のスキルや経験が十分に生かされていないと考えている。今後10年間では、さらに250万人が退職を迎えると見込まれている。
ユニスーパーの調査では、オーストラリア全土の退職者による同様の無償の貢献について、その経済的価値を試算した。最も大きな割合を占めたのは、子どもや大人への無償のケアで、年間106億豪ドル相当と推定された。退職者の約38%が無償のケアを行っており、孫や高齢の親族、障害のある人などの世話をしている。ボランティアや地域活動は年間38億豪ドル、地域社会でのリーダーシップは14億ドル、メンタリング、コーチング、スキルの共有は7億豪ドル相当と評価された。
この試算では「代替費用法」が用いられ、それぞれの活動に推定時給を設定したうえで、オーストラリア国内の推定240万人の退職者全体に当てはめて算出した。無償のケアとボランティア活動は1時間あたり50豪ドル、メンタリングやスキルの共有は75豪ドル、地域社会でのリーダーシップは100豪ドルとして評価された。なお、退職者が行う有給の仕事は今回の試算には含まれていない。
試算によると、退職者は年間平均で、無償のケアに224.9時間、ボランティアや地域活動に95.5時間、地域社会でのリーダーシップに37.9時間、メンタリングやスキルの共有に28.1時間を費やしている。
クイーンズランド大学で臨床老年心理学を専門とするナンシー・パチャナ教授は、退職後に生きる意味や目的を持つことは、より良い心身の状態と強く関連していると指摘した。「退職後に生きる意味や目的を持つことで、幸福度が高まるだけでなく、身体的・精神的な健康や認知機能にも良い影響がある」と話した。
一方でパチャナ教授は、オーストラリアの高齢者が持つスキルや経験、人とのつながりなどが、依然として十分に活用されていないと指摘する。「50歳を超える多くの人が仕事を見つけることに苦労しており、本来なら貢献できるはずの価値が経済から失われている。これは年齢によって価値を判断し、スキルや生産性の可能性を評価しないエイジズム(年齢差別)に起因している可能性がある」
調査では、82%のオーストラリア人が、退職者の経済的な貢献は十分に評価されていないと回答。また、退職者の26%は、適切な機会が不足していることが、より多く貢献することを妨げていると答えた。貢献するうえで何らかの障壁を感じている退職者のうち、37%は金銭的なインセンティブがあれば、さらに活動できると回答。35%は健康やウェルビーイングへの支援、同じく35%は地域での活動機会へのアクセス改善を求めた。また、4人に1人は、自分の貢献や経験、能力をより評価してもらえることが、さらなる活動への意欲につながると回答した。
パチャナ教授は、従来の「退職」のイメージは、現在の多くの高齢者の生活をもはや反映していないと指摘する。「退職したらロッキングチェアに座ってゆっくり過ごすという考え方は、非常に時代遅れ」と話した。現在の退職者たちは、無償の活動だけでなく、有給の仕事や起業などを通じても社会に貢献し続けているという。また調査では、専門家から資産・家計に関するファイナンシャルアドバイスを受けたことがある退職者は、週平均8.3時間を何らかの活動に費やしていたのに対し、アドバイスを受けたことがない人では6.3時間だった。
ただし、この結果はファイナンシャルアドバイスを受けたことと活動時間の長さに関連性があることを示すものであり、ファイナンシャルアドバイスが活動への参加を増やす原因となっていることを示すものではない。パチャナ教授は、早めに計画を立てることで、退職後の選択肢をより幅広く検討できるとした。
ソース:news.com.au – Australian retirees contribute $16.5bn in unpaid work each year, research reveals