farmnikki
教育/留学/習い事

その26 [ファームの音楽隊]

Y子

31歳。ものごとをあんまり深く考えていないのでストレスは少ない。自分の身に危険が迫ると恐怖のあまり脳がヒートしてしまい、笑い出してしまうクセがある。以前バンジージャンプをした時、飛び降りた瞬間からケラケラ笑っていた。お化け屋敷でも笑い出すので、お化けにビックリされてしまう。19歳でメイクアップアーティストに憧れて専門門学校へ。その後ファッションショーなどの現場で働くが、給料が安すぎて、家の電気、ガス、水道を止められる。それでもコンビニのトイレや銭湯に通いながら粘り強く続けるが、毎日ツナ缶だけで生活していたため、体重が40kgを切ってしまい最後は栄養失調で倒れてしまうという経験を持つ。彼氏ができると何よりも優先してしまうため友達はほぼいないという残念なタイプ。現在セカンドWHでシドニー滞在中。

プロ並みの腕前にみんなが酔いしれた

この国に来てからずっと思っていたことがある。それはどこにいても必ずといっていいほど、音楽が聴こえてくること。私がいた場所だけなのかもしれないが、最初に滞在していたバイロンベイではヒッピーが多いせいか、道でジェンベ(手で叩く太鼓)を叩いていたり、アボリジニの象徴でもあるディジュリドゥがそこらじゅうから聴こえてきた。ゴールドコーストでも、ナイトクラブで流れる音楽が外まで漏れて聴こえてくるし、本格的な路上ライブも頻繁に行われているので街じゅう音が鳴り響いてる感じだった。ここに来てからは今までよりは静かだなと思っていたが、ブロッコリーニの作業中でも常に音楽は流れていた。音楽は、聴いているだけで陽気な気分になったり、気分を安定させてくれたり、精神にすごく影響を与えてくれる。学生の頃からよく一人でカラオケに行って歌っていた。一人で入るのは恥ずかしいので、受付には『後で連れが来ますので…』などと言っておく。出る時は携帯電話で誰かと話しているフリをしてそそくさと退散する。これが私の手口だった。とても手間がかかって面倒だが、順番を待たずに歌い続けることができる贅沢感を満喫できるし、気分によってテンションの違う曲を選曲し自分のペースで歌えるので実に気分が良い。注意しなければいけないのは、常連になると顔を覚えられてしまうため別のカラオケ屋を探さなければいけないこと。そんな面倒くさいことをしながらも自分なりに音楽とつきあってきた。ある日音楽好きの私に朗報が入ってきた。なんと、新しく入ってきた2人組みのワーカーがバンドマンだったのだ。日本にいた時は有名ミュージシャンのツアーに参加したこともあるほどの人たちで、ギターの腕前は相当なものらしい。さっそく彼らの演奏を聞こうと、家に遊びに行ってみるとそれは見事なものだった。楽器のことはよく解らないが、よくもまあそんなに指が動きますねと言わんばかりの速さで演奏している。それからはブロッコリーニの作業が終わると、彼らの家に遊びに行き演奏を聴くことが多くなった。シェアハウスの汚いバルコニーで沈みゆく夕陽を背に彼らの演奏に聴き入った。みんな節約のため安いワインを分け合って飲んだり、持ち帰った野菜で作ったおつまみをつまみながら。そういうところに集まる人というのは音楽が好きな人が多く、なかでも私と同年代の女性Hさんはかなり歌がうまかった。彼女はUAのような低くてボリュームのある声質で、聞いていて心地良く、なおかつ迫力もある。個人的に好きな声だった。2人のギターセッションとHさんの歌声によるライブに耳を傾けながら大好きな赤ワインを飲む。私にとっては最高に贅沢な時間。一度だけ2人のギターセッションに合わせて歌ったことがある。歌詞もないし、人前で歌うのは恥ずかしいという私に、何も考えずに声を出してみてと言われた。言われたとおり激しいギターの音を聴いているとホロ酔い加減も手伝って勝手に声が出てくる。曲名も何もない即興で作られていく楽曲。ギターが激しくなるに連れて腹筋に力が入り自然に声が出てくる。なんだろうこの感じ。歌うという意識ではなくて勝手に出てきた声が音程を作り音楽になっていく感じ。彼らは私の音階に合わせてくれているのだろう。お互いに次はこの音だよねと確認もしていないのに、自然に同じタイミングで私の音階に合う音を出してくれた。すごく気持ちがいい。カラオケの電子音やマイクのエコーもなく生音がそのまま耳に入ってくるのも新鮮だった。そのうち、バルコニーでは飽きたらずみんなでキャラバンパークへ行ったりもした。そこでは、ジェンベ(手で叩く太鼓)やハーモニカを持っている人もいて、みんな地べたに座り込んで演奏していた。楽器がない人はボイスパーカッションをして参加している。音楽に合わせてファイヤーダンスも行われた。いろんな国の人が奏でる音楽、なんだかこの雰囲気が好きだった。音楽に国境はないと誰かが言っていたけれど、まさにそうだと思う。音楽とは、音を楽しむと書くように、この人たちとの出会いで私も改めて音を楽しむことができたような気がする。

>> Blog Top へ戻る

この記事をシェアする

Y子のファーム日記一覧

この投稿者の記事一覧

その他の記事はこちら