子どもを持つ親にとって、教育は非常に大事なことです。
オーストラリアの教育について、知っておくべきこと、注意しなければならないことを、数回にわたって解説します。
いよいよ大学入学に向けて、州統一の卒業認定試験であるHigher School Certificate Examinationを受験します。このHSCが成績証明・中等教育修了証になります。
希望する大学や競争率の高い大学に入学するには、内申点とHSCの得点で高得点を得る必要があります。
日本人の場合は、語学の科目で日本語を履修すれば、自ずと高得点が得られるから、HSCの受験科目に日本語を入れようと考えがちですが、語学の科目にはほかの科目とは別に、特別な履修条件があります。
※語学科目の履修コース
Beginners/Continuers/Extension/Backgroundの4つに分かれていますが、新たにHeritageが加わり、日本語のコースは以下の5つになります。
(1) Japanese Beginners
(2) Japanese Continuers
(3) Japanese Extension
(4) Heritage Japanese
(5) Japanese Background
英語や数学など、語学以外の教科は単一のコースか、English 1、English 2のように難易度に応じてコースが分かれています。しかし語学の場合は、それもアジア4言語(日本語・中国語・韓国語・インドネシア語)に限って、上記のコースに分かれています。
その履修基準もアジア4言語には独特の基準が課せられています。つまり、生徒の生い立ちや家庭での使用言語などが考慮されて、履修資格が判断されることになります。
語学の場合は、移民社会のオーストラリアですから、ひとつの試験を実施するだけでは当該言語を母語とする生徒には有利に働くことになるというのが大きな理由です。
たしかに、中学まで日本で育った生徒が、移住してきて高校生活をはじめ、HSCの日本語の試験を受験すると、当然高得点を得ることでしょう。そのため、初級日本語のテストではなく、中級以上のテストを受けさせないと、高校で初めて日本語を学んだオーストラリア人と比較して公平ではないとの考え方です。
(Heritageコースの実際のテスト見本)
一見、もっともな理由なのですが、教育委員会による履修基準をよく検討すると、現実的には矛盾があるのが実態です。
現行の履修基準は以下のようになっています。
(1) Beginners 教室における100時間の授業のみを学習経験とする生徒
(2) Continuers 教室における200時間から400時間の授業を受けた生徒
(3) Extension (Continuersコースのオプションとしての位置づけ)
(4) Heritage 当該言語を指導言語とする学校で、10歳以降に正式な教育を受けていないこと
(5) Background 履修資格基準なし(日本の中学3年以上の国語力が必要)
アジア4言語には上記の履修資格基準があります。なぜアジア4言語のみに、家庭でその言語を使用しているか、また、過去に母国で勉強したことがあるか、ということが問われるかというと、「アジア4言語は他の言語よりも、その言語を母国語と しない生徒にとって習得が困難だから」という理由です。
結局これは、欧米語を基準にしたアジア言語の差別ではないかと指摘される由縁です。背景には、英語話者がイタリア語やフランス語、ドイツ語を学ぶより、日本語などアジアの言葉を学ぶのに4倍の時間がかかるという統計があります。(確かに漢字の習得は困難でしょうね。)
日本人にとって問題なのは、生徒が家庭で常時日本語を話したり、日本の小学校で1年間以上勉強した場合は、Continuersコースが選択できないことです。
片親または両親とも日本人の元で生まれた生徒の場合、家庭では多少日本語を話すことが多いですが、会話は何とかなったとしても、読み・書きは別です。高校生として日本語を学んでいても、家庭での会話(日本語)は、小学校2、3年のレベルというのが実態です。
このように、完璧な制度がなく、できるだけ公正な試験を実施することを目指す教育委員会にとっては、現行のアジア4言語対策は多くの教師から支持を得ているシステムだとしています。しかし履修基準に基づき校長が判断する現状では、親が日本人かどうか、家庭で少しでも日本語で話しているか、これまで日本の学校に少しでも通ったことがあるか、などの情報で恣意的に判断されるケースが多いのが実態です。
そのため、それほど日本語力のない生徒が、難しいコースを選択せざるを得ず、あきらめて最初から日本語コースを履修しない生徒も多くいます。
HSCの日本語コースの履修を考えている場合は、Year 10からでは遅すぎますので、Year 6からしっかりと日本語対策を考える必要があります。
なお、このようなHSCの日本語コースの問題を考え、教育委員会に対して提言活動を行っているHSC日本語対策委員会があります。同委員会のサイトにはこれらの情報が掲載されていますので参考にしてください。サイトは、こちら
HSCの日本語各コースの詳細は、こちら
2013年のHSC日本語各コースの試験内容は、こちら
次回は、継承日本語についてです。(来週につづく)
※なお、このシドニー生活情報で取り上げてもらいたいトピックスがありましたら、お知らせください。
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