【ACT23日】 オーストラリアの自然災害および国家的緊急事態対応を統括する国家緊急事態管理庁(NEMA)のジョー・ブッフォーネ長官代行は、自然災害への初動対応に国防軍を恒常的に投入すべきではないとの認識を示した。
同氏は10月から翌年4月にかけての高リスク気象期を前に行った記者会見で、「豪州国防軍(ADF)の第一の使命はあくまで国防であり、災害対応において“第一の呼び出し先”であってはならない」と明言した。
ブッフォーネ氏によれば、ADFの役割は「重大災害」の緊急救命段階に限定されるべきであり、復旧活動に関しては原則として関与しない姿勢を取るべきだとする。「ADFは継続的な復旧支援を担う組織ではなく、規模が極めて大きく、他に手段が尽きた場合のみ支援する」と強調した。また、同氏は「国防軍は本来の役割である豪州防衛に注力すべきであり、災害時においても他の選択肢を尽くした上で初めて支援に回ることが適切だ。最初から災害対応の中心的担い手とされるべきではない」と述べた。
気象局(BOM)の最新予測では、NSW州北部・東部およびQLD州南東部を中心に洪水リスクが高まっているほか、豪州中部から東部にかけて平年を上回る降雨が予想されている。さらに北部地域では春から初夏にかけて極端な高温が見込まれており、WA州、SA州、VIC州の一部では春の山火事リスクも上昇している。夏季の公式火災見通しは11月に公表される予定だ。
国防の観点からも懸念は指摘されている。2023年の「国防戦略レビュー」では、ADFは国防任務と災害復旧を同時並行で担う体制にはなく、装備面でも十分ではないと結論づけた。また、初の「国家気候リスク評価」も、ADFへの過度な依存は「軍の負担過多」と国民に映り、信頼低下を招く恐れがあると警鐘を鳴らしている。地政学的緊張が高まる一方で、気候変動に起因するサイクロン、山火事、洪水、高潮といった自然災害リスクも増大する中、国防軍の災害対応における役割をどのように位置づけるかが、今後の大きな課題となっている。
ソース:news.com.au – NEMA chief says Defence force should not be ‘first call’ in Australia’s natural disaster response