【ACT4日】 オーストラリア統計局(ABS)が4日に発表した2025年6月期の国内総生産(GDP)は前期比0.6%増と、市場予想の0.4~0.5%を上回った。前年同月比では1.8%増、1人当たりGDPも0.2%の伸びを示しており、景気は緩やかな拡大基調を維持している。
最大の要因は家計支出の回復で、全体で0.9%増加。その中でも娯楽や外食などの裁量的支出は1.4%増と、過去3年間で最大の伸びを記録した。ABSのトム・レイ国家勘定責任者は「3月期は天候不順により0.2%増にとどまったが、6月期は反発が鮮明となった」と説明。QLD州やNSW州では、自然災害で損壊した商品の買い替え需要が販売増につながったという。
政府支出も全体の押し上げ要因となり、医療や防衛、さらに2025年連邦選挙に関連する経費の増加により1%増加した。産業別では、鉱業が2.3%拡大。特に鉄鉱石生産が6.1%増加し、観光業や外食産業も国内外からの旅行需要の回復で1.9%増となった。
一方で、懸念材料も浮かび上がった。企業収益は鉄鉱石や石炭、LNG価格の下落を背景に減少。ABSは「輸出需要の弱さと世界的な供給過剰が要因」と指摘した。民間投資は0.1%増にとどまり、建設関連ではインフラ工事が3.8%減少するなどマイナス寄与がみられた。住宅建設も伸びが鈍化し、0.4%の小幅増にとどまっている。
ジム・チャーマーズ財務相は「今回の成長率は予想を上回り、世界経済の不透明感の中でも豪州経済が持ち直していることを示した。直近では過去3年で最も速い四半期成長の一つであり、2年ぶりに高い年間成長率となった」と述べた。ただし、専門家の間では「6月期が2025年の成長のピークとなる可能性がある」との慎重な見方も出ている。
オックスフォード・エコノミクスのショーン・ラングケイク氏は「世界的な不確実性の影響は限定的だが、企業・消費者信頼感は依然として不安定で、労働市場も減速傾向にある」と指摘した。
今後の金融政策にも注目が集まる。RBA(オーストラリア準備銀行)のミシェル・ブロック総裁は、消費の伸びが続けば利下げ余地が狭まる可能性を示唆。「現時点で将来の金利動向は不透明だが、予想以上に消費が堅調であることは事実だ」と語った。金融市場では11月利下げの確率を90%と見込む声が多いが、6月期の好調なGDPが発表されたことで予測はやや後退している。
景気の底堅さと不透明感が交錯する中、オーストラリア経済は今後も利下げ期待と物価動向の綱引きが続く見通しだ。
ソース:new.com.au – Surging consumer spending could cost Aussies future rate cuts