【ACT18日】 オーストラリア政府は、2050年のネットゼロ達成に向けて、2035年までに温室効果ガス排出量を2005年比で62〜70%削減する目標を掲げると発表した。アンソニー・アルバニージー首相は、Climate Change Authority(CCA)の助言を受け入れたと述べ、「環境を守り、経済や雇用を発展させ、国益と将来世代の利益のために必要な目標だ」と強調した。
ジム・チャーマーズ財務大臣によると、政府の試算では2035年に65%削減を達成した場合、2050年の実質賃金は2.5%高く、国民1人当たりの実質GDPは2,100豪ドル増加する見通し。逆に移行が混乱すれば、賃金低下や電力価格の上昇につながると警告した。オーストラリアの排出量は2005年以降、すでに約27%減少しており、従来の予測では2035年までに51%減とされていた。
今回の新目標により大幅な取り組み強化が求められる。政府は同時に「ネットゼロ基金」として50億豪ドルを新設し、産業部門の脱炭素化や再エネ拡大を支援。さらに、クリーンエネルギー金融公社(CEFC)に20億豪ドルを追加拠出する方針を明らかにした。
CCAは、62%削減の実現には風力発電を4倍、大規模太陽光を3倍、屋根置き太陽光を2倍に拡大する必要があると指摘。加えて、原生林伐採の停止や2035年までに販売される車の半数をEVにすることも不可欠だとした。クリス・ボーウェン気候変動相は「エネルギー転換は経済的チャンスでもある。政府はその機会をつかむ決断をした」と述べた。
一方、環境団体は「70%を最低ラインにすべきだ」と不満を表明。オーストラリア産業グループ(AIG)のイネス・ウィロックス代表は「実現は容易ではないが可能な範囲」とし、10年間の目標論争ではなく実行に移すべきだと呼びかけた。この新目標は来週の国連会合に提出され、各国首脳が更新目標を示す予定。だが、環境団体の一部は「1.5度目標」を達成するには70%削減が最低条件だとしており、今回の表明は失望を招く可能性がある。
ソース:ABC News – Australia vows to cut emissions 62 to 70 per cent by 2035