【ACT30日】 性犯罪の被害を警察へ届け出る人は増えている一方、多くの事件は裁判に至る前に打ち切られている。
NSW州では、警察に届け出られた性的暴行事件のうち、実刑判決に至るのはわずか5%にとどまっており、同様の傾向はオーストラリア全体でも見られる。実際には、警察へ届け出られた性的暴行事件の大半は裁判まで進まず、被害者や警察、検察が訴えや起訴を取り下げるケースが多い。
NSW州犯罪統計・調査局は、2018年に警察へ届け出られた性的暴行事件を対象に、その後の刑事司法手続きを追跡した。その結果、警察に届け出られた5,869件のうち、法的手続きへ進んだのは約16%だった。969人の容疑者に対し3,369件の罪状が適用されたものの、有罪判決につながったのは全体の1割未満だった。
また、多くの事件は警察の捜査段階で終了しており、検察も被告の5人に2人について、すべての起訴を取り下げていた。裁判まで進んだ事件でも、性的犯罪の成立が認められた被告は41%にとどまった。
専門家は、性犯罪の届け出は増えているものの、犯罪の性質上、有罪率が大きく上昇する可能性は低いと指摘している。メルボルン大学ロースクールのジェレミー・ガンズ教授は、性的暴行事件で最も大きな課題は証拠の立証だと説明する。
同教授によると、性的行為は通常、当事者2人だけの密室で行われるため、同意があったのかどうかを判断するのが非常に難しい。一方で、ほかの犯罪では目撃者やケガの痕跡、盗まれた物品など、客観的な証拠が残ることが多いという。性的暴行事件では、被害者の証言が主要な証拠となるケースが多く、刑事裁判で求められる「合理的な疑いを超える立証」を満たすことが難しいと指摘した。
ガンズ教授は、「最終的には、裁判は二人の言い分の対立になる」と述べた。また、被害者にとっては実際に起きた犯罪であるにもかかわらず、法廷ではその証言が厳しく争われることになると説明した。被告側は、被害者について「うそをついている」「勘違いしている」「記憶違いだ」「出来事の時系列を誤っている」などと主張することがあるという。ガンズ教授は、「犯罪被害者であるにもかかわらず、そのような状況で自分自身が攻撃されることは非常につらいことだ」と話した。
一方で統計からは、有罪率が低い中でも、性的暴行を警察へ届け出る人が増えていることも分かった。ガンズ教授は、以前は証拠が非常に強い事件しか裁判まで進まなかったが、現在では証拠が必ずしも十分でないケースでも被害者が声を上げるようになっていると指摘した。また、「立証を難しくするさまざまな思い込みがある。しかし、そのような考え方は以前より減っており、陪審員の判断にも変化が表れている」と述べた。
WA州弁護士会のジュディ・マクリーン会長も、性的暴行事件は最も立証が難しい事件の一つだと説明する。多くの事件では「同意があったかどうか」が最大の争点となり、裁判所は当事者双方の異なる証言を比較しながら判断しなければならないという。
DNA鑑定によって性的接触があったことは証明できても、それが同意のある行為だったかどうかまでは判断できないと指摘した。さらに、「被害者はこう行動するはずだ」といった思い込みや、外傷の有無に対する誤解も、事件の受け止め方を複雑にしていると述べた。
マクリーン会長は、「そのため、こうした事件では証人の証言と、その信頼性について裁判所がどう評価するかに大きく依存する」と説明した。また、「目に見えるケガや複数の目撃者がいる事件とは異なり、性的暴行事件では重大な事件であっても外部の証拠が限られることがある」と述べた。
マクリーン会長は、性的暴行事件の裁判は被害者にとって非常に大きな精神的負担になると指摘した。被害者は安堵感だけでなく、いら立ちや失望など、さまざまな感情を抱えることが多いという。また、手続きについて十分な説明がない場合や、警察・検察との連絡が不十分な場合には、不安がさらに強まる可能性があるとした。
さらに、法廷で証言し、厳しい反対尋問を受けることへの恐怖や不安を感じる被害者も少なくないという。一方で、裁判所では不適切な反対尋問を防ぐための制度が整えられており、被害者支援機関や児童証人支援サービスも、裁判手続きの説明や精神的なサポートを提供しているとしている。
ソース:news.com.au – What’s behind Australia’s low rate of sexual assault convictions