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豪で性感染症が急増 梅毒は「流行」状態に

【NSW15日】   シドニー大学ニューサウスウェールズ校(UNSW)のカービー研究所は、オーストラリア国内で過去10年間に性感染症(STI)が大幅に増加していると警告した。梅毒や淋病の診断件数は10年前の約2倍に増え、同研究所は国内が「梅毒流行(epidemic)」の状況にあると報告している。

2024年には全国で梅毒の診断件数が5,866件に達し、10年前の2倍となった。淋病も同様に増加し、4万4210件が報告された。また、クラミジアの診断件数は10万1742件で、そのうち約半数は20~29歳の若年層だった。

ただし、実際にはこれらの感染症はさらに多く見過ごされている可能性があるという。調査によると、16~49歳のオーストラリア人のうち性感染症の検査を受けたことがある人はわずか16%にとどまり、医療従事者と性的健康について話し合ったことがある人も2人に1人に過ぎなかった。

カービー研究所の疫学者スカイ・マクレガー博士は、「クラミジア、淋病、梅毒はいずれも抗生物質で容易に治療・治癒できる。しかし放置すれば骨盤内感染症や不妊など深刻な健康被害につながり、妊娠中の感染は胎児に深刻な影響を与える恐れがある」と警鐘を鳴らした。過去10年間で先天梅毒による乳児の死亡は34件報告され、その半数以上が先住民の子どもだったという。

調査では、先住民コミュニティにおける性感染症の感染率が他の層より著しく高いことも明らかになった。先住民は非先住民と比べてクラミジアで2倍以上、淋病で約4倍、梅毒では5倍以上の診断率となっている。特に地方や遠隔地では格差が一層顕著だ。カービー研究所の先住民健康研究プログラム責任者のロバート・モナガン氏は「文化的に安全で地域主導の健康啓発や検査、治療への投資が必要だ」と訴えた。

マクレガー博士は、性感染症予防の基本は「パートナーとの対話、安全な性行為、定期的な検査」だと強調。コンドームの使用は多くの性感染症の感染リスクを減らすとし、特にゲイやバイセクシュアル男性には、性交後72時間以内に抗生物質ドキシサイクリンを服用する「ドキシPEP」によって梅毒やクラミジアの感染を抑える方法もあると紹介した。

一方で、HIVについては過去10年間で27%減少し、2024年の新規診断件数は757件にとどまった。

ソース:news.com.au –

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