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ハンタウイルス感染隔離に新型コロナの教訓活かす

【WA17日】   オーストラリアのパンデミック対応力は、新型コロナウイルス以来初めての大きな試練に直面している。致死性のウイルス株にさらされたクルーズ船の乗客が隔離されたためだ。クルーズ船内で致命的なハンタウイルスの流行が発生したとのニュースが流れると、世界は固唾をのんで見守った。

アルゼンチンを4月に出港したクルーズ船「MVホンディウス号」で、げっ歯類を媒介とするこの病気が乗客の間で広がる中、人々の頭にはロックダウンや国境閉鎖、ソーシャルディスタンスに象徴される長年のコロナ禍の苦しみがよみがえっていた。乗客と乗員146人のうち11人がハンタウイルス感染に関連し、3人が死亡、1人が集中治療を受ける事態となった。しかし、感染は一部の乗客に限定され、世界的な公衆衛生危機に発展する懸念は後退した。

カナリア諸島のテネリフェに寄港後、オーストラリア人5人、永住者1人、ニュージーランド人1人が政府のチャーター便で帰国し、15日にパースへ到着した。全員に症状は出ていないが、最低3週間、パース北43kmのブルズブルックにある専用施設で隔離され、厳重な監視を受ける。マーク・バトラー保健相は「世界でも最も厳格な隔離措置が取られる」と述べた。

メルボルンのバーネット研究所の准教授であり、感染症対応の責任者でもあるスマン・マジュムダー氏は、コロナ禍の経験により感染症への迅速な対応と封じ込めの重要性についての認識が高まったと指摘する。

この出来事は、多くのオーストラリア人にとって、パンデミック初期に大規模感染が発生したクルーズ船「ルビー・プリンセス号」を思い起こさせた。同船は約2700人を乗せてシドニーに入港し、一部に風邪やインフルエンザのような症状が見られたにもかかわらず、乗客は検査なしで下船を許された。その後数週間で663人以上が感染し、28人が死亡した。2023年、連邦裁判所は運航会社カーニバル・オーストラリアに過失と誤解を招く説明があったと認定した。

ハンタウイルスはコロナほど感染力は高くないものの、当局による迅速かつ透明性のある対応は、国民の受け止め方に大きな影響を与えたとマジュムダー氏は述べる。「コロナからの教訓は、分かっていることと分かっていないことを明確に伝える透明性のあるコミュニケーションが必要だということだ。感染の全容はまだ不明だが、隔離や監視といった厳格な対応は適切であり、大きな前進だ」また、新設されたオーストラリア疾病対策センターの役割も重要だと強調した。

当局は、感染者の一人がアルゼンチンで乗船前に感染した可能性が高いとみている。同地域ではアンデス型ウイルスが常在している。このウイルスはネズミなどの尿や唾液、排せつ物を介して感染し、最大40日間の潜伏期間がある。

サンシャインコースト大学のエリン・プライス准教授は、今後数週間から数か月で局所的な流行リスクは高まる可能性があるとしつつ、オーストラリアには有利な点があると述べた。「オーストラリアは地理的に孤立しているため、国内での流行リスクは非常に低い。このウイルスを広げるげっ歯類が存在しないため、主なリスクは海外からの持ち込みだ」

ニューサウスウェールズ大学のサイフル・イスラム博士は、今回の事例は「ワンヘルス(統合的)アプローチ」の重要性を示していると述べた。迅速な感染確認と対策の実施は拡大防止に寄与したが、潜伏期間中も隔離や症状監視などの予防措置を継続する必要があると指摘する。また、国内に存在しないウイルスであるため、環境汚染の防止や廃棄物管理も重要だという。

マジュムダー氏は、政府は今後も迅速な対応と同時に将来への備えを進める必要があると述べた。

ソース:news.com.au – What dealing with Covid-19 taught us about Hantavirus outbreak

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