【ACT23日】 連邦政府の諮問機関である医薬品給付諮問委員会(PBAC)は、初期のアルツハイマー病の治療薬として25年ぶりに承認されたキスンラ(ドナネマブ)について、医薬品給付制度(PBS)への登録申請を却下したことが分かった。新薬を使用する患者は補助が支給されず、年間最大8万ドルの自己負担を負うことになる。
キスンラは、脳の免疫システムを助け、アミロイド斑(記憶障害や認知機能の低下の主因)を除去する働きがある。アルツハイマー病の進行を遅らせる効果があるとして、オーストラリア治療薬登録簿(ARTG)に登録されたばかり。
キスンラの開発・製造元でオーストラリア国内での販売許可を持つイーライリリー・オーストラリア(リリー)のブラウン社長は、PBACによる決定について、「患者や家族、アルツハイマー病に関わる人、そして当社にとって非常に残念な結果だ」と述べた。
ブラウン社長はさらに、「初期のアルツハイマー病患者を治療しないという選択によって生じる損失を受け入れる覚悟があるのか」、「アルツハイマー病によって生じる医療費や高齢者ケアの負担に加え、患者がより長く自立して生活し、生活の質を保ち、経済や地域社会、家族に貢献し続けられることの価値は非常に大きい」と述べ、医薬品への投資の重要性について、全国的な議論を始める必要があると訴えた。
アルツハイマー病は記憶、思考、行動などが損なわれ、日常生活の遂行能力を低下させる進行性の脳疾患で、現代における最も大きな課題の一つとされている。ドナネマブを使った臨床試験では、初期段階の患者において認知機能の低下を約30%遅らせる効果が確認され、自立した生活を続けられる期間を延ばすことが可能とされている。
ソース:abc.net.au-New Alzheimer’s drug rejected for PBS listing, leaving patients to pay up to $80k a year